gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督『珈琲時光』その3

2017-02-12 04:46:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 台所で料理をするハジメ。カップラーメンを食べるヨウコ。ヨウコ「何描いてんの?」パソコンを開いているハジメ。「きれい! 電車がたくさんある。わっ、すごい。これもっと近くなる? 電車の胎内なんだ。何か胎児の目がさみしい。何かないとハジメちゃん、可哀そうね。周りは陰? 電車の窓はいろんな色。この列車の長さの違うのは?」「なんとなく」「音を聞いて集めてるのは、電車に戻ってるからかな?」「毎回違う。事件が起きたら、役に立つ」「でもすごくきれい。駅の名前もちゃんと書いているんだ。中心に行くほど暗い」「俺の血が濃いのかな?」。
 喫茶店でヨウコ「こんにちは。ホットミルクください」。携帯電話を取り出し、留守電に入れる。「どこに今いるのかな。折り返し電話ください」。
 神保町の天ぷらの“いもや”でハジメの行方を聞くヨウコ。知人のカン(萩原聖人)は「JRに乗りに行ったみたい」と教えてくれる。
 お茶の水の丸ノ内線と中央線の立体交差を俯瞰で。
 ホーム。電車から降りて来るヨウコ。秋葉原口へ。
 写真を見るヨウコ。隣に上品な老婦人。「これが例の菅平のスキー場の開場の時のよ。これが紅文也。自分はパンジーで、私はスイートピーだと言ってた」。写真を次々に見るヨウコ。
 外に出て、歩くヨウコ。“洗足池駅”。
 運転席。発車。立っているヨウコ。「次は秋葉原」の車内放送。向かいの車両にハジメがいるが、ヨウコは気が付かない。
 踏切。ヨウコの父。路面電車。ヨウコに「お帰り」「ただいま。お母さんは?」「鬼子母神に行ってる。ちょっと待とう」と2人でホームのベンチに座る。
 ツクツクボウシの鳴き声。3人、帰宅。
 鍵を机に放り投げ、荷物を置いて、カーテンを開けるヨウコ。「暑いでしょ?」母、冷蔵庫の中を見て「何も入ってないじゃない」。「よいしょっと」と言って座る父。「お父さん、お水飲む?」「うん」母「あたしはお茶にしよう」。テレビの音。水をコップに注ぐヨウコ。「ねえ、お母さん、お茶ないからお水でいい?」。
 「ねえ、お父さん、お葬式って誰が亡くなったの?」「会社の上司だ。とてもよくしてくれた」「明日?」「そう」母「脳溢血だって」ヨウコ「箸はこの瓶の中に」。洗濯物をたたみ、網戸を閉めるヨウコ。「いただきます、おいしい」母「今日はうまくできたんだ」「おいしいなあ、はは、お父さん、おいしいよ。食べてみない?」「うん」「自分で作るとこういう味にならないんだよね」「うまいか?」。母、箸を見つける。父も食べる。母「お夕飯前だから少しね」父「ヨウコ、好きだったろ? おじゃが。これ」とジャガイモをひとつ自分の皿からヨウコの皿に移す。黙々と食べる2人。
 隣のチャイムを押すヨウコ。母も一緒。「向かいの井上です」母「ヨウコの母です。つまらないものですけど」と菓子折りを隣に渡す。ヨウコ「あのー、父がわがままを言うので、お酒を貸していただけませんか。グラスも」母「グラスまでなんて、お母さん、恥ずかしい」「どうもすいません」「ごめんください」ドア、閉まる。「やーだ。恥ずかしい。お母さん」。
 母「何カ月?」ヨウコ「3ヶ月」「病院行ったの?」「うん。心配しないでいい。でも結婚はしない。だってすごいマザコンなんだもん。傘作りの会社の息子で、結婚したら手伝わせられそうで。今アモイでお姉さんと工場の管理をしてる。時々電話してきて『タイに来い』って」。黙々と飲んで食べる父。父「タイか……」。チャイム。「~ですが」「お母さんが出る」「上にぎり3人前です」。
 ヨウコ、街頭。開店前のすし屋に樽を返し、その足で路面電車の駅へ。
 やって来た路面電車に乗るヨウコ。
 車内のヨウコ。
 降りるヨウコ。
 電車の座席で眠るヨウコ。目黒。ハジメ、機材を持って録音しているが、やがてヨウコに気づき、正面に立って、ヨウコを見つめる。
 ヨウコとハジメ、電車を降りる。録音を続けるハジメ。
 お茶の水の丸ノ内線と中央線の立体交差を俯瞰で。
 ゆっくりとフェイドアウトして、映画は終わる。

 淡々とした日常が描かれていて、確かに小津を思わせる映画でした。蓮實重彦先生がワンカットだけゲスト出演しているようなので、それを見つけるのも楽しいかもしれません。