恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第11弾。
まず、2月15日に掲載された「サラ川の男たち」と題されたコラム。
「サラリーマン川柳っておもしろいですか? みんながいうほど私にはおもしろくない。だってオヤジ目線なんだもん。
サラ川は毎年五月に投票結果を反映した上位十選が発表になる。2016年の1位は「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」、2位は「じいちゃんが 建てても孫は ばあちゃんち」だった。
サラ川サラリーマンの性格を一言でいえば『自虐的な恐妻家』だ。十選中約半分は毎年このタイプが占める。直近十年の一位だけ拾っても『うちの嫁 後ろ姿は フナッシー』(14年)、『仕分け人 妻に比べりゃ まだ甘い』(10年)、『しゅうち心 なくした妻は ポーニョポニョ』(09年)など、流行語を取り入れながら妻を恐怖や揶揄(やゆ)の対象にした句が人気を集める。
13日、今年も上位十選のもとになる入選作百選が発表になった。
『ゆとりでしょ? そう言うあなたは バブルでしょ?』『落ちたのは 女子力、体力、保育園』など世代差を笑う句や女子目線の句も増えたが、『使途不明 共働きの 妻の金』『妻は言う 手抜きじゃないの ヘルシーよ』『こづかいも マイナス金利と 妻が言う』など恐妻モノもまだ健在だ。それが笑いのネタになる以上『俺たちが望んだ夫婦はこれじゃねえ』ってことかしら。
ふと思いつきました。サラ川の男の意識はまだ昭和。」
さらに、2月22日に掲載された「モデル校の開設」と題されたコラム。
「政権をゆるがすほどの大スキャンダルなのに、なぜ多くのメディアは徹底追及しないのだろう。大阪府の学校法人『森友学園』の件である。
8日の朝日新聞がスクープし、国会でも追及され、18日の本紙特報面が詳細を報じ、一部の週刊誌が取り上げてはいるものの、テレビのニュース番組はほぼ見て見ぬふり。金正男氏殺害事件の続報とトランプ政権問題に明け暮れている。これって自分ちの火事を放置して、人んちの火事見物に駆けつける無責任なやじ馬に似てません?
もちろん北朝鮮や米国の心配も重要である。しかし民主主義の危機という点でいえば、森友学園の件はかなり重大だ。
1、 同学園が4月開校予定の小学校用地として国有地を近隣国有地の価格の約1割で買い取っていること。
2、小学校用地すら決まっていない段階で文科省の承認が下りていること。
3、同小学校の名誉校長が首相夫人の安倍昭恵氏であること。
4、同学校の教育方針が『教育勅語』の唱和を含む極右的なものであること。
重要なのは1、2で、3,4は『さもありなむ』と思われるかもしれない。が、同学校の教育は『一私立校の勝手でしょ』ですむ話なのか。私には自民党が今国会に提出予定の『家庭教育支援法案』を先取りした学園に見える。いわば同党のモデル校。頑張れメディア。手をこまねいている場合ではない。」
さらに、3月1日に掲載された「大学生の貧困」と題されたコラム。
「今日から3月。卒業と旅立ちの季節である。でも、ご存じだろうか。アルバイトをしながらやっと大学を出たのに、出たと同時に数百万円の借金を背負わされる。そんなマイナスからのスタートを強いられる若者たちが急増していることを。
Aさんは片道3時間以上かけて通学している。部屋を借りる経済的なゆとりがないためだ。サークルは断念したが、毎日バイトもしているので帰りは終電近くになる。
自宅外から国立大学に通うBさんは日本学生支援機構の奨学金を月に12万円借りている。利子を加えると返済額は600万円超。国立の学費が安かったのは過去の話で、それがなければ授業料も生活費も払えない。
Cさんは大学院への進学を希望していたが、月に5万円の奨学金を借りており、返済額は利子を含めて250万円超。これ以上の奨学金の返済は不可能だと判断し、進学はあきらめた。
以上、大内裕和『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)に出ていた例の一部である。いまや大学生の奨学金利用者は全体の50%を超え、使い道も授業料、教科書代、交通費といった基礎的な出費である。ブラックバイトがはびこる理由もそれ。高卒で働けばいい? いやいや、高卒の求人自体が激減しているのよ。
急激に進む大学生の貧困。だいたい奨学金に利子がつくっておかしいでしょ。」
御説ごもっともなものばかりで、大変勉強になりました。これからも美奈子さんのコラム、楽しく読んでいきたいと思っています。
まず、2月15日に掲載された「サラ川の男たち」と題されたコラム。
「サラリーマン川柳っておもしろいですか? みんながいうほど私にはおもしろくない。だってオヤジ目線なんだもん。
サラ川は毎年五月に投票結果を反映した上位十選が発表になる。2016年の1位は「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」、2位は「じいちゃんが 建てても孫は ばあちゃんち」だった。
サラ川サラリーマンの性格を一言でいえば『自虐的な恐妻家』だ。十選中約半分は毎年このタイプが占める。直近十年の一位だけ拾っても『うちの嫁 後ろ姿は フナッシー』(14年)、『仕分け人 妻に比べりゃ まだ甘い』(10年)、『しゅうち心 なくした妻は ポーニョポニョ』(09年)など、流行語を取り入れながら妻を恐怖や揶揄(やゆ)の対象にした句が人気を集める。
13日、今年も上位十選のもとになる入選作百選が発表になった。
『ゆとりでしょ? そう言うあなたは バブルでしょ?』『落ちたのは 女子力、体力、保育園』など世代差を笑う句や女子目線の句も増えたが、『使途不明 共働きの 妻の金』『妻は言う 手抜きじゃないの ヘルシーよ』『こづかいも マイナス金利と 妻が言う』など恐妻モノもまだ健在だ。それが笑いのネタになる以上『俺たちが望んだ夫婦はこれじゃねえ』ってことかしら。
ふと思いつきました。サラ川の男の意識はまだ昭和。」
さらに、2月22日に掲載された「モデル校の開設」と題されたコラム。
「政権をゆるがすほどの大スキャンダルなのに、なぜ多くのメディアは徹底追及しないのだろう。大阪府の学校法人『森友学園』の件である。
8日の朝日新聞がスクープし、国会でも追及され、18日の本紙特報面が詳細を報じ、一部の週刊誌が取り上げてはいるものの、テレビのニュース番組はほぼ見て見ぬふり。金正男氏殺害事件の続報とトランプ政権問題に明け暮れている。これって自分ちの火事を放置して、人んちの火事見物に駆けつける無責任なやじ馬に似てません?
もちろん北朝鮮や米国の心配も重要である。しかし民主主義の危機という点でいえば、森友学園の件はかなり重大だ。
1、 同学園が4月開校予定の小学校用地として国有地を近隣国有地の価格の約1割で買い取っていること。
2、小学校用地すら決まっていない段階で文科省の承認が下りていること。
3、同小学校の名誉校長が首相夫人の安倍昭恵氏であること。
4、同学校の教育方針が『教育勅語』の唱和を含む極右的なものであること。
重要なのは1、2で、3,4は『さもありなむ』と思われるかもしれない。が、同学校の教育は『一私立校の勝手でしょ』ですむ話なのか。私には自民党が今国会に提出予定の『家庭教育支援法案』を先取りした学園に見える。いわば同党のモデル校。頑張れメディア。手をこまねいている場合ではない。」
さらに、3月1日に掲載された「大学生の貧困」と題されたコラム。
「今日から3月。卒業と旅立ちの季節である。でも、ご存じだろうか。アルバイトをしながらやっと大学を出たのに、出たと同時に数百万円の借金を背負わされる。そんなマイナスからのスタートを強いられる若者たちが急増していることを。
Aさんは片道3時間以上かけて通学している。部屋を借りる経済的なゆとりがないためだ。サークルは断念したが、毎日バイトもしているので帰りは終電近くになる。
自宅外から国立大学に通うBさんは日本学生支援機構の奨学金を月に12万円借りている。利子を加えると返済額は600万円超。国立の学費が安かったのは過去の話で、それがなければ授業料も生活費も払えない。
Cさんは大学院への進学を希望していたが、月に5万円の奨学金を借りており、返済額は利子を含めて250万円超。これ以上の奨学金の返済は不可能だと判断し、進学はあきらめた。
以上、大内裕和『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)に出ていた例の一部である。いまや大学生の奨学金利用者は全体の50%を超え、使い道も授業料、教科書代、交通費といった基礎的な出費である。ブラックバイトがはびこる理由もそれ。高卒で働けばいい? いやいや、高卒の求人自体が激減しているのよ。
急激に進む大学生の貧困。だいたい奨学金に利子がつくっておかしいでしょ。」
御説ごもっともなものばかりで、大変勉強になりました。これからも美奈子さんのコラム、楽しく読んでいきたいと思っています。