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ジェフリー・ディーヴァー『ブラック・スクリーム』その7

2021-12-01 11:09:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

 動物の毛はネズミのものだ。抜け落ちたのは、かきむしったからだろう。つまり、皮膚病にかかっている。バルトネラ菌が原因だ。このエリザベサエという株は、通常ネズミに感染する。ネズミと下水道の組み合わせは、まあ、どこにでもあるだろうが、小さな町より都会に多い。つまり監禁場所は都市部だ」(中略)
「鉄の削りかすは、コンポーザーはその場所に侵入するのに錠前か鎖を切断したことを示している。いまどき、鉄はあまり使わない。錠前のほとんどはスチール製だ。つまり、古いものだろうということになる。片面だけが錆びていることから━━そこの写真を見ればわかる━━切断されたのは最近だ」
 ロッシが言った。「過去には出入りができた場所だとおっしゃいましたね」
「言った。その根拠はゴムだ」
「ゴム?」(中略)
「ほかに加硫処置するものがあるかね? 半透明で、変質しかけた切れ端。加硫処理されたゴム」
 うなずいたのはベアトリーチェだった。「古いコンドーム。そうですね」。
「そのとおりだ。(中略)」
「とりあえず足がかりになりそうなものを探してきてくれないか、エルコレ。時間がない」
「何件か見つかりました。可能性のありそうな地下通路、古い建造物、穀物貯蔵庫。洞窟も」(中略)
 ライムは次の指示をした。「そこに公共建造物を加えてくれ。下水道だ。ただし古いものだけ、古地図に載っているものだけだ。見つかった人糞は古びていたからね。埋め込み型の水路ははずしてくれ。開放型の水路だけでいい。コンポーザーは微細証拠を“踏mにつけて”いる」(中略)」
「よし、今度は旅行者向けツアーのルートを除外しよう」ライムは言った。(中略)」
 ロッシは言った。「街娼がいたエリア。そうおっしゃっていましたね」(中略)「アメリカの警察で言えば風俗取締班(ヴァイス・スクワッド)にいたころ、街頭で商売をしてる男女が多い地域をパトロールしたことがあります。(中略)」
 ライムは言った。「最初に列挙した界隈に印をつけてもらえないか」(中略)
 候補の地下通路や地下空間は二十数か所まで絞りこまれた。
「もともと何に使われてたのかしら」サックスが尋ねた。
 ロッシが答えた。「ローマ時代の道路や路地、歩道ですね。(中略)あとは、混雑した通りを避けて商品を流通させるためのトンネル。貯水池や送水路。穀物倉庫」
「送水路?」
「そうです。(中略)」
それを聞いて、ライムは大きな声で言った。「ベアトリーチェ。石灰岩と鉛が見つかっていたね?」(中略)エルコレが通訳した。
「シ.はい、見つけました。そこ。そこにあります」
「ローマ時代の送水路は石灰岩で造られていたかな」
「ええ、石灰岩でした。そして、お考えを推測するにパイプ……水を送る管(中略)は、鉛でできていました。(中略)」
「エルコレ。ローマ時代の水道配管図を探してくれ」(中略)」
「そうか。そういうことか」ライムはささやくような声で言った。(中略)」ライムは顔をしかめた。(中略)
「壁から落ちてくる砂や小石だ」
 サックスとエルコレが同時に叫んだ。サックスが━━「地下鉄(サブウェイ)!」。エルコレは━━「レーテ・メトロポリターナ!」(中略)
「そこだ!」ロッシが大きな声で言った。「そこの貯水槽。小さなやつ」(中略)
「このクエストゥーラからなら、二キロか三キロ」
「私が行くわ」サックスがきっぱりと言った。(中略)

 五メートル先に被害者の男性がいた。いまにも壊れそうな椅子にテープで縛りつけられ、首吊り縄に引っ張られて、首を限界まで上に伸ばしている。コンポーザーが作った仕掛けの全体像が初めて見えた━━おぞましいウッドベースの弦は、男性の頭上の壁の割れ目に差した木の棒に延び、そこからまた別の棒を経由して、水がしたたり落ちるバケツにつながっている。バケツの重量が増すに従って首吊り縄が絞まり、やがて男性は窒息する。(中略)

(中略)
 ロッシが言った。「とりあえず保護拘置します。まだ(中略)混乱した精神状態にあるようです。誰かの目が光っていたほうが安全だ(中略)」
「身元はわかりましたか」サックスが尋ねた。
「リビアからの難民です。大勢いるなかの一人ですよ。乗っていた船が“ぶつかって”きた」(中略)エルコレが英語で言った。
「漂着した、ですね」(中略)
「(中略)マジークは、人と食事をする約束があって
ダブルッツォまでバスで行く予定だと話していたらしいんですな。ダブルッツォというのは、ナポリ近郊の小さな町です」
 サックスが言った。「食事をした相手を探して話を聞いたほうがよさそうね。その人物がコンポーザーなのかもしれないし、マジークを尾行していたということも考えられる」

(また明日へ続きます……)