また昨日の続きです。
（中略）エルコレ・ベネッリが入口に現われた。
「たったいま……妙なことがわかりました。（中略）」
「何だ？（ケ・コーザ）」
「警部のご指示のとおり、証拠物件を保管室に預けにいきました。（中略）ところが、保管室の管理官は、ステファンやシャーロットの事件の記録はないと言うんです。証拠物件を預かった記録がないと」（中略）「コンポーザー事件の証拠が━━一つ残らず消えました」
（エルコレは前回保管室に証拠物件を預けたとき、受領証をもらわなければならないことを知らなかった。エルコレはその責任を取り、森林警備隊に戻ることになった。）
スピロは一瞬、ロッシを見つめてから言った。「証拠がなくてはシニョリーナ・マッケンジーとステファンを起訴できない。釈放するしかないだろう」（中略）
「私たちを信じないのね」
シャーロット・マッケンジーは国家警察ナポリ本部前でリンカーン・ライムとアメリア・サックスに言った。ステファンもマッケンジーの隣にいた。（中略）ライムは、ＡＩＳの工作チームが国家警察ナポリ本部（クエストウーラ）の証拠物件保管室に忍びこみ、証拠物件を盗み出して処分したのだろうと考えていた。（中略）シャーロット・マッケンジーは劇場型スパイ活動の世界に帰り、ステファンは新しい病院に行く。（中略）
（中略）
スピロが今夜の話し合いの場に指定したのは、（中略）郊外の素朴なレストランだった。
（ライムは言った。）「爆薬の密輸に限定して（ヒルとジャンニを）起訴するのが得策だろう」（中略）
その方針は、コンポーザーの今後の運命とも一致する。“匿名の情報筋（シャーロット・マッケンジーやＡＩＳ”の同僚）の話として、連続殺人犯はイタリアから出国し、それきり行方知れずになったとの報道がまもなくなされるだろう。（中略）
そのとき、（中略）意外なことに、エルコレ・ベネッリが入ってきた。（中略）
（スピロが言った。）「きみに、そしてこちらのアメリカからきた客人に、こんなことを言わなくてはならないのは残念だが、証拠を持ち出して処分させたのはマッシモ・ロッシだからだ」（中略）
「指紋が個人に固有のものであるのと同じくらい確かなことだね」（中略）
「一般には知られていないが、ロッシ警部はＮＮの党員なのだよ」
ライムは記憶をたどった━━新国家主義党（ヌオーヴォ・ナショナリスモ）だ。難民受け入れに反対の立場を取っている右派政党。（中略）そして、捜査チームが初め、偽のテロ攻撃をでっち上げた首謀者として疑った集団。（中略）
ロッシ警部は━━連続誘拐犯は難民をターゲットにしているのかもしれないと気づいた瞬間から━━犯人は正しいことをしていると考えた。（中略）
エルコレがスピロに言った。「ロッシ警部は、何としてもアリ・マジーク事件の捜査権を得ようとしましたよね。（中略）」（スピロが言った。）「（中略）マッシモ・ロッシがきみを捜査チームに誘った理由はただ一つ、スケープゴートに仕立てるためだ。（中略）ともかく（アッローラ）。（中略）貸しのある人物に相談して、きみのカラビニエリへの異動を認めてもらったよ。（中略）きみはずっとそれを━━カラビニエリ入隊を目標にしていると聞いた」（中略）
「第八部 トンボとガーゴイル 9月28日 火曜日」
「おっと。いやな予感がします」
トムは前を向いたままライムとサックスに言った。バリアフリー仕様のバンのフロントガラス越しに先を注視している。（中略）黒いＳＵＶが前に割りこんでバンの行く手を邪魔しようとしていた。（中略）しかし（中略）不吉なＳＵＶのナンバープレートを見ると、アメリカの外交官車両だった。（中略）
三十秒後、ＳＵＶの助手席側のドアが開いて、意外な人物が降りてきた。（中略）サックスは（中略）言った。「ダリル・マルブリー。領事館の」（中略）
ライムが言った。「（中略）きみはシャーロット・マッケンジーの同僚の一人だ」
「同僚というよりボスです。私はＡＩＳの長官を務めています」（中略）
「一つ質問がある」ライムは言った。（中略）
「（中略）イブラヒムとは何者だ？」
「（中略）傭兵です。（中略）」
「その男はいまどこにいる？」（中略）
「難しい質問だな。イブラヒムは地上から消えてしまったようで。（中略）うちじゃありませんよ。最後に確認された情報では、イブラヒムは魅惑的な美女二人と一緒でした。偶然にも、イタリアの対諜報機関の職員だという噂ですがね。（中略）」
サックスは笑った。（中略）
「ライム、これってたぶん私たちを雇いたいって話よ」（中略）
（また明日へ続きます……）
（中略）エルコレ・ベネッリが入口に現われた。
「たったいま……妙なことがわかりました。（中略）」
「何だ？（ケ・コーザ）」
「警部のご指示のとおり、証拠物件を保管室に預けにいきました。（中略）ところが、保管室の管理官は、ステファンやシャーロットの事件の記録はないと言うんです。証拠物件を預かった記録がないと」（中略）「コンポーザー事件の証拠が━━一つ残らず消えました」
（エルコレは前回保管室に証拠物件を預けたとき、受領証をもらわなければならないことを知らなかった。エルコレはその責任を取り、森林警備隊に戻ることになった。）
スピロは一瞬、ロッシを見つめてから言った。「証拠がなくてはシニョリーナ・マッケンジーとステファンを起訴できない。釈放するしかないだろう」（中略）
「私たちを信じないのね」
シャーロット・マッケンジーは国家警察ナポリ本部前でリンカーン・ライムとアメリア・サックスに言った。ステファンもマッケンジーの隣にいた。（中略）ライムは、ＡＩＳの工作チームが国家警察ナポリ本部（クエストウーラ）の証拠物件保管室に忍びこみ、証拠物件を盗み出して処分したのだろうと考えていた。（中略）シャーロット・マッケンジーは劇場型スパイ活動の世界に帰り、ステファンは新しい病院に行く。（中略）
（中略）
スピロが今夜の話し合いの場に指定したのは、（中略）郊外の素朴なレストランだった。
（ライムは言った。）「爆薬の密輸に限定して（ヒルとジャンニを）起訴するのが得策だろう」（中略）
その方針は、コンポーザーの今後の運命とも一致する。“匿名の情報筋（シャーロット・マッケンジーやＡＩＳ”の同僚）の話として、連続殺人犯はイタリアから出国し、それきり行方知れずになったとの報道がまもなくなされるだろう。（中略）
そのとき、（中略）意外なことに、エルコレ・ベネッリが入ってきた。（中略）
（スピロが言った。）「きみに、そしてこちらのアメリカからきた客人に、こんなことを言わなくてはならないのは残念だが、証拠を持ち出して処分させたのはマッシモ・ロッシだからだ」（中略）
「指紋が個人に固有のものであるのと同じくらい確かなことだね」（中略）
「一般には知られていないが、ロッシ警部はＮＮの党員なのだよ」
ライムは記憶をたどった━━新国家主義党（ヌオーヴォ・ナショナリスモ）だ。難民受け入れに反対の立場を取っている右派政党。（中略）そして、捜査チームが初め、偽のテロ攻撃をでっち上げた首謀者として疑った集団。（中略）
ロッシ警部は━━連続誘拐犯は難民をターゲットにしているのかもしれないと気づいた瞬間から━━犯人は正しいことをしていると考えた。（中略）
エルコレがスピロに言った。「ロッシ警部は、何としてもアリ・マジーク事件の捜査権を得ようとしましたよね。（中略）」（スピロが言った。）「（中略）マッシモ・ロッシがきみを捜査チームに誘った理由はただ一つ、スケープゴートに仕立てるためだ。（中略）ともかく（アッローラ）。（中略）貸しのある人物に相談して、きみのカラビニエリへの異動を認めてもらったよ。（中略）きみはずっとそれを━━カラビニエリ入隊を目標にしていると聞いた」（中略）
「第八部 トンボとガーゴイル 9月28日 火曜日」
「おっと。いやな予感がします」
トムは前を向いたままライムとサックスに言った。バリアフリー仕様のバンのフロントガラス越しに先を注視している。（中略）黒いＳＵＶが前に割りこんでバンの行く手を邪魔しようとしていた。（中略）しかし（中略）不吉なＳＵＶのナンバープレートを見ると、アメリカの外交官車両だった。（中略）
三十秒後、ＳＵＶの助手席側のドアが開いて、意外な人物が降りてきた。（中略）サックスは（中略）言った。「ダリル・マルブリー。領事館の」（中略）
ライムが言った。「（中略）きみはシャーロット・マッケンジーの同僚の一人だ」
「同僚というよりボスです。私はＡＩＳの長官を務めています」（中略）
「一つ質問がある」ライムは言った。（中略）
「（中略）イブラヒムとは何者だ？」
「（中略）傭兵です。（中略）」
「その男はいまどこにいる？」（中略）
「難しい質問だな。イブラヒムは地上から消えてしまったようで。（中略）うちじゃありませんよ。最後に確認された情報では、イブラヒムは魅惑的な美女二人と一緒でした。偶然にも、イタリアの対諜報機関の職員だという噂ですがね。（中略）」
サックスは笑った。（中略）
「ライム、これってたぶん私たちを雇いたいって話よ」（中略）
（また明日へ続きます……）