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ジェフリー・ディーヴァー『ブラック・スクリーム』その13

2021-12-07 11:20:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

 流血の時が来た。
 ミラノのフィリッポ・アルジェラティ通り20━32番地を占めるグイダ兄弟会社の倉庫裏の路地にいたアルベルト・アレッグロ・プロンティは、影の奥からそっと足を踏み出した。(中略)
 筋肉質のたくましい体をした五十八歳のプロンティは、ワインを飲んでいたテーブルに武器を取りに戻った。長さ一メートル弱の鉄の棒だ。先端にねじ山が切られていて、四角いナットがねじこんである。ナットは錆びて、鉄の棒と完全に一体化している。(中略)プロンティは両手で鉄の棒をしっかりと握って隠れ場所から出ると、忍び足で倉庫の奥へ向かった。ターゲットは裏のドアから出ようとしているのだろう。それならそれでいい。そいつが裏口を開けようとしたところで……プロンティが背後から脳天をかち割る。(中略)
 背後から、命令調の大きな声が聞こえた。
 その命令、こともあろうに女の口から発せられた命令は、英語だった。プロンティは英語がほとんどわからない。それでも、その意味を推測するのはそう難しいことではなかった。プロンティは迷わず鉄の棒を放り出すと、両手を高々と挙げた。

 アメリア・サックスは銃をしまった。(中略)プレスコットは男のポケットからカードを引き出した。それが男の身分を証明した。(中略)「共産党員なの?」(中略)「
 プレスコットが言った。「イタリア共産党なら、1991年に解党された」
「ノー!」プロンティが吠えた。(中略)
 どうやらホームレスらしい。ここから半ブロック先の路地裏で暮らしている。
「どうして私を襲おうとしたのかしら」(中略)「数週間前までこの倉庫に住んでいたそうです。(中略)彼を脅した男は……不愉快なやつだった」(中略)
「今日は、誰かの声が聞こえたから、その男がまた来たんだろうと思ったそうです。仕返しをしてやりたかった」
「私より前に誰か来なかった?」サックスは路上のガラス片のことを話した。
 プレスコットの通訳によれば、作業員が何人か来て、荷物を置いていったが、運び出すかした。「二時間くらい前だそうです。寝ていたので、ちゃんとは見てはいない。そのあと、あなたの気配を聞きつけた」(中略)
 となると、あのポストイットは、亡命が認められて仕事を捜す段になったら役に立ちそうな情報として、難民キャンプの誰かがダディに渡したものと考えるしかなさそうだ。(中略)

(中略)
 まだミラノにいるサックスから、有益な情報は得られてなかったとの報告だった。(中略)
 (エルコレは強姦現場と喫煙エリアで得られた微細証拠を持ち帰っていた。)
「喫煙エリアの物質━━たとえば酢酸とアセトン、アンモニア、ベンゼン、ブタン、カドミウムは、言うまでもなく、煙草に含まれていたものだ」
「でも、毒ばかりじゃないですか」(中略)
 ライムは興味を惹かれた。「つまり犯人は、左側の窓から侵入したわけだな。ガリーの部屋の窓だったか」
「はい。犯人はそこから室内にドラッグをまいたあと、プランターの土を使って窓を隠したんです」
「だが、鑑識は室内でガラスの破片も土も採取していないな」
「そこです」エルコレは言った。「犯人は抜け目ない人物です。ガラス切りを使ったんです。これを見てください」エルコレは紙ばさみからレターサイズくらいの光沢紙に印刷した写真を取り出してライムの前に並べた。「ベアトリーチェに印刷してもらいました」
 ほぼ長方形をした、直線的な切れ目がガラスに入っていた。
 エルコレが説明を続けた。「犯行のあと、犯人は庭にあった段ボールを使ってガラスにあいた穴をふさぎ、そこに土を盛って侵入の痕跡を隠したんです。(中略)ほかに、“押し込み侵入者”のものと思われる靴痕も見つけました。(中略)」

(ライムはスピロに言った。)「一覧表と捜査資料を見ていて気づいた。喫煙エリアで押収されたワインボトルの分析を依頼したい」(中略)

「第六章 ネズミの家 9月26日 日曜日」

 G6ジェットはナポリ空港の滑走路に向けて高度を落としていく。(中略)
 今日の乗客はアメリア・サックス一人きりで、フライトアテンダントはかいがいしく世話を焼いてくれた。(中略)

(また明日へ続きます……)