恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。
まず12月11日に掲載された「国民を洗脳する国家」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「岸田政権は五年間で43兆円をつぎ込むという大軍拡に乗り出した。そのためには大増税も厭(いと)わない。一方で子ども予算倍増の「道筋」は来年の「骨太の方針」まで先送りした。明らかに国民生活よりも軍事力増強を優先している。「先軍政治」と呼んでも間違いではない。反撃能力=先制攻撃能力を「抑止力」だと言って正当化すれば、際限のない軍拡競争が生まれる。本来目指すべきは軍縮ではないのか。
しかし各種の世論調査でも防衛費増額への支持は軒並み50%を超えている。ロシアのウクライナ侵攻、中国の覇権主義的姿勢、北朝鮮によるミサイル発射などが人々の不安を掻き立てているのだろうが、こうした国際情勢に乗じて一気に軍事国際化路線を突っ走ろうとする政権の「世論工作」も功を奏しているのだろう。
九日、共同通信は防衛相が世論工作の研究に着手したと報じた。そこには主権者である国民を洗脳しコントロールしようとするあからさまな意図が露呈している。しかし政権側はすでに静かに広範に国民を洗脳してきた。NHKをはじめとするメディアに介入し、学校の道徳教育や歴史・公民教育を支配し、DappiなどというアカウントでSNSを搔き回す。
国民よ、国に騙(だま)されるな。正気を保とう。自分の頭で考えよう。」
また、12月14日に掲載された「岸田ガブ政権」と題された斎藤さんのコラム。
「十二日に発表された今年の漢字は「戦」だった。物騒な一字だなあと思ったが、いやいや案外妥当かもしれない。今の政府は「戦」に向かってまっしぐらだからだ。
同じ十二日、自公両党は安保三文書の改定内容に合意した。最大の目玉は「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」。専守防衛の原則はもはや名ばかり。戦後の安全保障政策の大転換である。
安倍政権下で集団的自衛権の行使容認を含む安保関連法が強行採決されたのが2015年。この段階で「攻撃OK」な態勢を法的に整備して、今度はいよいよ装備面でも「攻撃OK」な状態にしたいらしい。そのため巨費を投じて米国製巡航ミサイル「トマホーク」などを買うそうだ。
すでに議論は財源論に移っているけど、ちょっと待て。そもそも敵基地攻撃能力を持てば相手がビビる、なんて抑止論が国防に有効なのか。先制攻撃と何が違うのか。そんなの真珠湾攻撃と一緒じゃんか、と批判されても文句はいえまい。
文楽人形にガブと呼ばれるかしらがある。おとなしげな娘の顔が一瞬にして凶悪な形相に変わる仕掛けの人形である。人形使いが糸を引くと、頭から角が飛び出し、目は金色に変わり、口が耳もとまで裂けるのだ。
目の錯覚だろうか。岸田首相の顔が最近、ガブに見えてきた。もしかして誰かが陰で糸を引いてる?」
そして、12月18日に掲載された「国民は猿か」と題された前川さんのコラム。
「宋の狙公は猿を飼っていた。その猿たちに栃(とち)の実を「朝に三つ暮れに四つ与える」と言ったら猿たちは怒ったが、「朝に四つ暮れに三つ与える」と言ったら喜んだ。きっとこの猿たちは、「朝に宇四つ暮れに三つ奪う」と言ったら怒るが、「朝に三つ暮れに四つ奪う」と言ったら仕方がないと納得するのだろう。大軍拡の財源をめぐって与党内で繰り広げられた騒動はこの猿たちを思い出させた。猿芝居をしているという意味では、与党政治家たちも猿のようなものたが、問題は彼らが納税者である国民を猿扱いしていることだ。
向こう五年間で軍事に費やすと岸田政権が決めた43兆円は、とどのつまりすべて国民の負担だ。与党内の議論の本質は、いつどのように負担させれば国民を納得させられるか、つまりどうすれば国民を納得させられるか、つまりどうすれば最もスムーズに国民を騙(だま)せるかにあった。1兆円を増税、残りを歳出改革などで生み出すという岸田氏の財源構想が朝三暮四だったとすれば、すべて国債で賄えという安倍元首相をコピーした萩生田政調会長や高市経済安保担当大臣の主張は「朝零暮七」だ。与党税制大綱では、法人税、所得税、たばこ税で1兆円増税する方針は示したが、その時期は「24年以降の適切な時期」に先送りされた。朝零暮七派に押し返された結果だ。猿扱いされた国民は怒らなければおかしい。」
どれも一読の価値がある文章だと思います。必読です。
まず12月11日に掲載された「国民を洗脳する国家」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「岸田政権は五年間で43兆円をつぎ込むという大軍拡に乗り出した。そのためには大増税も厭(いと)わない。一方で子ども予算倍増の「道筋」は来年の「骨太の方針」まで先送りした。明らかに国民生活よりも軍事力増強を優先している。「先軍政治」と呼んでも間違いではない。反撃能力=先制攻撃能力を「抑止力」だと言って正当化すれば、際限のない軍拡競争が生まれる。本来目指すべきは軍縮ではないのか。
しかし各種の世論調査でも防衛費増額への支持は軒並み50%を超えている。ロシアのウクライナ侵攻、中国の覇権主義的姿勢、北朝鮮によるミサイル発射などが人々の不安を掻き立てているのだろうが、こうした国際情勢に乗じて一気に軍事国際化路線を突っ走ろうとする政権の「世論工作」も功を奏しているのだろう。
九日、共同通信は防衛相が世論工作の研究に着手したと報じた。そこには主権者である国民を洗脳しコントロールしようとするあからさまな意図が露呈している。しかし政権側はすでに静かに広範に国民を洗脳してきた。NHKをはじめとするメディアに介入し、学校の道徳教育や歴史・公民教育を支配し、DappiなどというアカウントでSNSを搔き回す。
国民よ、国に騙(だま)されるな。正気を保とう。自分の頭で考えよう。」
また、12月14日に掲載された「岸田ガブ政権」と題された斎藤さんのコラム。
「十二日に発表された今年の漢字は「戦」だった。物騒な一字だなあと思ったが、いやいや案外妥当かもしれない。今の政府は「戦」に向かってまっしぐらだからだ。
同じ十二日、自公両党は安保三文書の改定内容に合意した。最大の目玉は「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」。専守防衛の原則はもはや名ばかり。戦後の安全保障政策の大転換である。
安倍政権下で集団的自衛権の行使容認を含む安保関連法が強行採決されたのが2015年。この段階で「攻撃OK」な態勢を法的に整備して、今度はいよいよ装備面でも「攻撃OK」な状態にしたいらしい。そのため巨費を投じて米国製巡航ミサイル「トマホーク」などを買うそうだ。
すでに議論は財源論に移っているけど、ちょっと待て。そもそも敵基地攻撃能力を持てば相手がビビる、なんて抑止論が国防に有効なのか。先制攻撃と何が違うのか。そんなの真珠湾攻撃と一緒じゃんか、と批判されても文句はいえまい。
文楽人形にガブと呼ばれるかしらがある。おとなしげな娘の顔が一瞬にして凶悪な形相に変わる仕掛けの人形である。人形使いが糸を引くと、頭から角が飛び出し、目は金色に変わり、口が耳もとまで裂けるのだ。
目の錯覚だろうか。岸田首相の顔が最近、ガブに見えてきた。もしかして誰かが陰で糸を引いてる?」
そして、12月18日に掲載された「国民は猿か」と題された前川さんのコラム。
「宋の狙公は猿を飼っていた。その猿たちに栃(とち)の実を「朝に三つ暮れに四つ与える」と言ったら猿たちは怒ったが、「朝に四つ暮れに三つ与える」と言ったら喜んだ。きっとこの猿たちは、「朝に宇四つ暮れに三つ奪う」と言ったら怒るが、「朝に三つ暮れに四つ奪う」と言ったら仕方がないと納得するのだろう。大軍拡の財源をめぐって与党内で繰り広げられた騒動はこの猿たちを思い出させた。猿芝居をしているという意味では、与党政治家たちも猿のようなものたが、問題は彼らが納税者である国民を猿扱いしていることだ。
向こう五年間で軍事に費やすと岸田政権が決めた43兆円は、とどのつまりすべて国民の負担だ。与党内の議論の本質は、いつどのように負担させれば国民を納得させられるか、つまりどうすれば国民を納得させられるか、つまりどうすれば最もスムーズに国民を騙(だま)せるかにあった。1兆円を増税、残りを歳出改革などで生み出すという岸田氏の財源構想が朝三暮四だったとすれば、すべて国債で賄えという安倍元首相をコピーした萩生田政調会長や高市経済安保担当大臣の主張は「朝零暮七」だ。与党税制大綱では、法人税、所得税、たばこ税で1兆円増税する方針は示したが、その時期は「24年以降の適切な時期」に先送りされた。朝零暮七派に押し返された結果だ。猿扱いされた国民は怒らなければおかしい。」
どれも一読の価値がある文章だと思います。必読です。
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