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金原由佳&小林淳一編『相米慎二という未来』その1

2022-12-06 04:48:36 | 日記
 金原由佳&小林淳一編の2021年作品『相米慎二という未来』を読みました。相米作品の関係者へのインタビュー集です。
 本文中から印象的な部分を転載させていただくと、
・━━「台風クラブ」の現場で驚かれたことは?
 三浦友和 (前略)やっぱり演出方法といいますか、現場での監督の立ち位置というか、我々俳優に伝える力みたいなものが違うかのかなと思いましたね。「あ、この監督は上手い芝居とか、それらしい芝居を全く望んでないな」と漠然とありました。

・三浦 時々ポツンと一言いうぐらいで。僕らはその一言をどうすればいいのかわからない。的確なアドバイスはひとつもないんですよ。ほっぽらかしで一日中、リハーサル。その中で芝居をやったことのない子供たちはそこの中に入り込んでいく作業があるし、少し経験を積んでいた我々は余計なものをそぎ落される。まあ、あおn人は放置プレイですよ。

・━━それは山口百恵さんに「光る女」に出ていただきたかったのか、何か歌を使いたかったのか?
三浦 「簡単でいいから感想を聞いてくれないか」というから、妻が脚本を読んで、中にいろいろ書き込んだものを渡したはずですよ。その後、何か動きがあった訳でもなく、狙いはよくわからない。まあ、何考えているのかさっぱりわからない人ではありましたね。

・板垣瑞生(俳優) 台本はある。セリフはある。でも、それより、目の前にあるもの。「そこ」にいる人を信じる。その人が「そこ」に生きてるということを、すごく近い距離感で描いてくれてるなって思います。

・榎戸耕史(助監督) 小島さんの助手をしていると凄い音の世界が作られて驚くことが多かったです。効果音でドキドキさせる。相米監督と小島さんのコンビは効果音を変えたんだと思う。効果音という世界が「ションベン・ライダー」から変わっていった様な気がします。

・河合美智子 相米さんは、テストを何回も何回もやりますけど、それによって余計なものが削ぎ落されていって、で、次が一番いいというのがわかる感覚がすごい!(後略)

・松居大悟(映画監督) カメラもそうだけれど、その時代の街の空気感や空も時間も全てそこで切り取っている感じがして、それは狙いで収めたときもあれば、どう見ても奇跡が起きてフィルムに偶然収め切ったときもあったように感じて、こんな風に映画を撮れたらな、って心から思います。(後略)

・松居 長回しに関していえば、海外でも日本でも長回しを使う監督は増えていると感じますが、それと比べて相米さんがスゴいと思うのは、映画を見ていて、ああこれは長回しだなと観客に思わせない。(後略)

・松居 (前略)監督作を全部見ている映画監督って、北野武さんとキム・ギドクさんと相米さんだけで。武さんうやキム・ギドクさんはこうなりたいというよりも驚きをくれるから見るし、ギドクの新作を見られないのは残念ですが、武さんは、この人、次は何を描くんだろうっていう楽しみがあったりする。相米さんも同時代に生きていたら、「この人、次は何を?」ってめちゃくちゃワクワクしたと思うんですけど、それ以上に、「なんでこの人の作品は俺の頭の中から離れないんだろう?」という思いのほうが大きいですね。

・松居 あと、相米さんってどの映画でも、主人公を走らせますよね。僕も走るシーンを撮るのが水鬼ですけど、走っていると、演者は呼吸を整えることに集中するから、生理的に芝居ができなくなってきますよね? ずっと走ってもらうと、役から本人そのものが現れ、生身の部分が出て来る感じだとか、スピード感とか、風とか、周りの状況とかが、全て作られたものじゃなくなっていく。それが相米さんの映画の面白さ。(後略)

・松居 相米さんの作品は次の瞬間どうなるかがわからなくて、目が離せないんですよね。(後略)

・斉藤由貴 (前略)美術部が天井から飾りでぶら下げた空中ブランコの都っ手にえいやら下がったんです。セリフを言いながらぶらぶらと揺れて、もう、ケガしげもいいやくらいの勢いで飛び降りました。スタッフは見ていてヒヤッとしたと思いますけど、「カット」の声がかかったとき、頭が極度の緊張地謡になっていて泣いちゃったわけです。そしたら相米監督が私を見て「お前、そういう事でいいんだよ」って。「芝居しようとか、カッコつけようとか、そういう事じゃなくって、そういうものを全部追い出すくらい集中してみろよ。だから今みたいな事でいいんだ」って言ったんです。もしかしたら、これは誉められたのかもしれないんですけど、そのときの私は心の中では「もう、ふざけんな。馬鹿野郎!」みたいな。

・━━一枚の画が、その映画を象徴する。シーンが、映画そのものになる。相米映画の特徴だと思います。
土井裕泰(映画監督) あと、相米さんの映画って「歌」が、不思議なくらい残りますよね。(後略)

(明日へ続きます……)


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