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オリヴィア・ゴールドスミス『ザ・ベストセラー』

2006-10-21 17:55:22 | ノンジャンル
 山田詠美さん推奨のオリヴィア・ゴールドスミス「ザ・ベストセラー」を読みました。文庫本で上下巻、900ページに及ぶ大作です。
 ある大手出版社が舞台で、五冊の新作がどのように書かれ、どのように出版されていくかが、描かれて行きます。何としても起死回生のヒット作を飛ばしたい落ち目のロマンス美女作家、孤独を紛らわせるためイタリアでガイドのバイトをしながら初めての小説を書いた若いイギリス女性、人生を文学に捧げ、書いた処女作を26社の出版社から突き返され、絶望して自殺した女性、アイディアを出すだけで実際には妻に書かせ、名誉は一人占めしようと狙っている大学教授、そして社員を抱き込んでデータの改ざんをし、小説を書き続けようとするこの会社の社長。
 作家たち(うち1人は娘の遺稿を売り込む母親)と編集者との壮絶な戦いぶりに圧倒されます。今まで編集者というのは、作家が書いた原稿を会社に持ち帰り、誤字脱字を訂正して、作家本人に最終校正をしてもらう程度の仕事だと思っていましたが、現実はさにあらず。原稿によってはほとんど赤の修正ペンだらけにし、付箋だらけにし、何回でも編集者が納得するまで作家に書き直しを強要する仕事だとは知りませんでした。でも、山田詠美さんの本なんかを読んでいると、編集者と一緒に旅行してしまうほど仲がいいので、日本とアメリカ(特にニューヨーク)では事情が違うのかもしれません。
 物語は勧善懲悪で、良心的に仕事をした人たちが最終的に幸せになり、何かたくらんだり、悪らつなことを考えながら仕事をした人たちが不幸になる、という、読後感はいい小説でした。現実の作家の名前が次々に出てきて、その辺に詳しい人はより楽しく読めるでしょう。(ちなみに私はスティーヴン・キングしか分かりませんでした。)ちょっと分厚い本ですが、オススメです。

ピノチェット元大統領の裁判

2006-10-20 16:23:14 | ノンジャンル
 今朝の朝日新聞の朝刊に、チリで1990年までの17年間、軍事独裁を敷いたピノチェット元大統領の記事が掲載されていました。
 彼は未だに秘密収容所「ビジャ・グリマルディ」であった拷問や殺人への関与について、自宅における尋問で約1時間の間「記憶にない」との答えを繰り返し、「状況も被害者の名前も知らないし、自分に責任はない」と述べたと言います。
 ピノチェット政権下、チリでは約3千人が死亡または行方不明となり、約3万人が拷問を受けたとされています。現在のバチェレ大統領も医学生だった75年に拷問を受けています。グリマルディの収容所では数千人が拷問を受け、約300人が行方不明になりました。
 裁判は元大統領としての免責特権や健康上の理由から、多くが停止されてきましたが、再会の動きが徐々に進んでいるとのことでした。
 ピノチェット大統領は民主的な手続きを経て選ばれた大統領ではありません。アジェンデ氏が民主的な選挙で大統領に選ばれ、貧民救済、銅の採掘の国営化など、社会主義的な政策を実行していった時、アメリカの大企業AT&T(日本のNTTのような会社)とCIAの後押しを受けて、当時のピノチェット将軍が軍事クーデターを起こし、アジェンデ大統領を始めとする政府の幹部を皆殺しにして政権を奪取し、その後も、人権活動家、労働運動の指導者、社会主義者らを次々に監禁、拷問、処刑していったのです。
 そのピノチェットが未だに何の刑にも服さず、自宅で悠々と暮らしているというのは、どういうことのなでしょう? しかも現在90歳ともなると、終身刑になっても対した年数もたたずに刑は終了してしまいます。
 チリのことにこれほど私が興味を持つのは、過去にピノチェットのクーデターを描いた「サンチャゴの雨が降る」という映画を見ていて、そこでアジェンデ大統領自ら機関銃を手に持って戦った姿を見ているからです。
 南米は未だにアメリカ資本に政治を握られ、貧しい者は先日読んだ「ゆりかごで眠れ」のようにギャングになるしか、出世できないというような社会状況にあります。アメリカを憎んでいるのはイラク人だけではないのです。

倉田百三『出家とその弟子』

2006-10-19 16:57:39 | ノンジャンル
 山田詠美さんが対談で言及されていた倉田百三さんの「出家とその弟子」を読みました。というか、見ました。
 小説だと思って買ったのですが、中を見てみると、戯曲でした。先ず、念仏から始まって、戯曲の最初が「人間」と「顔おおいせる者」との会話から始まります。「顔おおいせる者」はどうも神らしいのですが、その哲学談義を眺めているうちに、読む気がだんだん失せてきました。
 そして第一幕。とにかく字が小さい。そしてびっしり書いてある。以前時代物は苦手だと書きましたが、まさに時代物の会話が延々と続きます。内容は面白いのかもしれませんが、一ページ目を見た段階で読むのを諦めました。あとはパラパラと最後まで同じ調子で続いて行く戯曲を眺め、この本に関する私の読書体験は終りました。
 親鸞が弟子と会話したりするので、こうした文章に抵抗感がない人は面白く読めると思います。倉田氏は、そのものずばり「親鸞」という作品も残されているので、彼に対する思い入れというのは相当のものだったのでしょう。ちなみに倉田百三氏は、1891年(明治24年)に生まれ、1943年(昭和18年)に52歳の若さで亡くなっています。大正から昭和初期にかけて活躍された方のようです。

永井龍男『秋その他』

2006-10-18 16:22:19 | ノンジャンル
 奥田英朗氏が推薦する永井龍男氏の「秋その他」を読みました。
 14の短編からなっていて、どれも平易な文章で、身の回りのちょっとしたことを捉えて書いてある文章でした。
 中でも「杉林そのほか」という短編は、私と妻と二人の娘が生活して行く様が淡々と綴られ、その生活する様が何ともいえずほのぼのとしていて、読んでいて暖かい気持ちになれました。
 他には「青梅雨」という心中する前の家族4人の様子を描いたものなども、ありましたが、これは例外で、日記を読んでいるような気持ちにさせる文章が多かったように思います。
 私はストーリーがはっきりしている小説が好きで、こうした半分エッセイのような文章は進んで読む方ではないのですが、たまにはこういう文章を読むのもいいなあ、と思いました。
 それにしても、このところ心の底から面白いと思える小説に出会っていません。金城一紀氏の新作が切に読みたい今日この頃です。

最近の『コンバット』

2006-10-17 16:46:06 | ノンジャンル
 月曜日の深夜0時から0時50分まで、NHKのBS2で「コンバット」が放映されている、という話題はここで何回かさせていただきました。若い方のために一応書いておくと、1960年代に日本で放映された戦争の帯びドラマで、第二次世界大戦のヨーロッパ西部戦線で、非情に作戦を部下に伝えながらも実は人情家のヘンリー少尉(リック・ジェイスン)と、その命令を実際に実行するタフなサンダース軍曹(ビッグ・モロー)率いる、個性あふれるメンバーからなる分隊の活躍を描いたもので、伝説的なテレビドラマとして、今でも多くのファンを持っているものです。
 第一回の内容がノルマンディー上陸作戦で、その後、延々とフランスでの戦いを続けているのですが、始めの頃は監督にロバート・アルトマンやバート・ケネディーという後に一流の映画監督になる人が演出を手掛けていましたが、このところは、まったく無名の演出家が続いています。
 また、内容も、少し前にニヒルで鳴らすヘンリー少尉が部隊から1人はぐれて、泥まみれになりながら、逃げ回る回があったと書きましたが、昨日も、今度はサンダース軍曹が足を撃たれ、坂を転がり落ち、水たまりに落ちるといった、普段の無敵な軍曹には考えられない展開で、最近どうもこうしたシビアな展開が増えているように思います。それだけ追い詰められたドイツ軍が、必死に反撃を行っているということでしょうか?
 最近たまに「コンバット」の全回のDVDボックスの宣伝が新聞の夕刊に載ることがありますが、全部で何話だったかなあ? ドイツ領にも進撃して、ベルリンに到達して終るんでしょうか? そう言えば、パリの解放はまだだし‥‥。小隊にはフランス語が話せる隊員はいますが、ドイツ語を話せる隊員はいるのでしょうか? これからの展開、まだまだ楽しめそうです。