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アル・ゴア『不都合な真実』

2007-02-23 16:40:42 | ノンジャンル
 映画も公開され、今話題の(?)本、アメリカ元副大統領アル・ゴア氏の「不都合な真実」です。かなり大判な本で、定価は税別2800円です。
 まず、地球が星であること、その大気は非常に薄い層であること、それの温度が、人間の出す二酸化炭素を代表とする温室ガスによって急速に上がりつつあることが説明されます。その結果、氷河が溶け始め、各地で今までに無い高い気温を記録し、大型のハリケーンや竜巻きや洪水や干ばつが多発し、砂漠化が進行し、シベリアの永久凍土が溶け、季節のリズムも変調をきたし、生物が次々と絶滅し、感染病が増え、北極・南極の氷が溶け出し、海水面が上昇し、人口爆発によって森林が減少しているのです。そして、こうした現象に一番影響力を与えているのが、アメリカであり、ヨーロッパであり、地球温暖化など存在しないというグループに対し、様々な研究結果で反論し、ブッシュ=チェイニー現アメリカ政権を批判しています。しかし、絶望することはなく、我々は様々な新エネルギー源を開発しつつあり、アメリカとオーストラリア以外は京都議定書にサインしており、アメリカでも町単位で京都議定書を批准していています。そして、さあ今こそ皆立ち上がろう、と呼び掛けて、具体的に身の回りで温暖化を阻止するためにすぐできることを紹介しています。
 この本は、ゴア氏が行っているスライドを使った講演を本にしたもので、大きな写真と大きな字のメッセージからなるページが多数あります。本を読んで、スライドショーを見た気になれるという仕掛けになっています。
 講演と本との最大の違いは、ゴア氏の生涯を紹介するページが本には多く含まれているということです。恩師の紹介から、息子の交通事故が環境問題への取り組みのきっかけになったこと、政治信条の吐露、最後はファミリーの写真が載っていて、明らかにゴア氏の宣伝と思われるページがあることです。ただ、この本が地球の温暖化に警鐘を鳴らす優れた本であることには変わりありません。

 今日の朝日新聞の朝刊に「CO2削減、21業種達成」という記事が載っていました。地球温暖化防止のために各業界が進めている二酸化炭素排出削減に向けた自主行動計画について、環境庁と経済産業省が05年度の実地状況を点検したところ、33業種中21業種がすでに目標を達成し、いと8業種は当初の目標を引き上げるなど対策が進んでいることがわかったそうです。
 私達もすぐに具体的な行動を起こしましょう! そのためには、今日紹介した「不都合な真実」という本が役に立つはずです。

本谷有希子『生きてるだけで、愛』

2007-02-22 16:34:17 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「2006年 この一冊」の中で、青山ブックセンターHMV渋谷店の店員さんが純文学系として推薦していた本谷有希子さんの「生きてるだけで、愛」を読みました。ただし、単行本ではなく、月刊新潮に書き下ろしたものを読んだので、単行本の内容とは少し違う部分もあるかもしれません。
 女子高生の時に、学校がかったるいという理由で体毛をすべて剃った経験を持つ25歳の寧子。バイト先の同僚に気安くデートに誘われてから、安く見られてる自分が嫌になり、人生何度目かの鬱になります。バイトは続けていたのですが、その男のことが好きな女の嫌がらせを受けるようになり、その女に啖呵を切ってバイトはクビに。部屋に閉じこもる寧子を、同棲相手の津奈木は心配していません。寧子も成りゆきで彼の家に居着いただけで、彼には何の思い入れもありません。
 寧子と津奈木の出会いや、現在の生活ぶり、寧子の家族の話などが語られた後、津奈木の元カノ・安堂が出現し、寧子に津奈木を別れろ、と迫ります。喫茶店での恫喝まがいの脅しの後、夜に玄関のチャイムを連打するようになります。すると今度は、安堂は寧子に自立するためにバイトを始めろと言い出します。
 そこで紹介されたのは、元ヤンキー夫婦が営むイタリアンレストランでした。名字が新垣なので「ガッキー」と呼ばれるようになった寧子はアットホームなこの職場にすぐなじみ、鬱も終ったのですが、月に一回の酒を飲みながらのミーティングで、つい飲み過ぎ、駐車場の車の上を飛び歩いて、トイレを破壊してしまいます。そして雪が降る寧子の住むマンションの屋上で寧子は全裸になり、津奈木と語り合うのでした。
 というものなのですが、寧子の躁鬱によると思われる行動の突飛さについていけません。また、没個性的な津奈木にもなじめません。ましてや嫉妬の鬼となってる安堂は問題外です。
 推薦者の店員さんは、「どこか病んでいる主人公の思考とともに進むストーリーはまさにライブであり、読んでいるうちにそのグルーブにのみ込まれます。」と書いていますが、確かにその通り。しかし、そこには読書の快感は存在していませんでした。少なくとも、私はお勧めできない本なのでした。

自立支援法の功罪

2007-02-21 18:29:57 | ノンジャンル
 今日の朝日新聞の夕刊に、米国の一般向け有力科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」が、映画「不都合な真実」などを通じた気候変動問題の啓発活動により、アル・ゴア元副大統領を「06年にもっとも影響力のあった政策指導者」に選んだ旨、載っていました。地球温暖化の阻止に消極的なブッシュ=チェイニー政権を攻撃してる同氏だけに、朗報です。次期大統領には、地球の温暖化の阻止に積極的に取り組む人になってほしいものです。

 さて、ちょっと古いですが、2月6日の朝日新聞の1面に「福祉サービス 障害者1600人、利用中止 自立支援法、負担増響く」という記事が出ていました。昨年の4月に施行された障害者自立支援法は福祉サービスを受けた障害者はその費用の1割の負担を義務づけられていますが、その費用が払えず、自分が受ける福祉サービスを減らしている人が多いというのです。障害者にとって、減らせるサービスと減らせないサービスがあります。減らせるサービスを削っていって、それが減らせないサービスにまで及ぶようになると、その人の生活は成り立たなくなる危険性があります。極端な場合には、その人の命に危険が及ぶこともあるでしょう。
 私は精神障害者です。週に一回、通所サービスとしてデイケアに行っていますが、周囲のメンバーの人にも無駄なサービスを受けている人は一人もいません。他の障害者施設でも同じようなことが言えるような気がします。
 障害者は弱い存在です。こういうところにこそセイフティネットをしっかりと張ってほしいと思います。彼らを生産的で無いから、という理由で切り捨てるのだけはやめてほしい。彼ら、僕らは人間なのですから。

太田光『トリックスターから、空へ』

2007-02-20 16:58:34 | ノンジャンル
 本人曰く「色物」の太田光のエッセイ集「トリックスターから、空へ」です。「色物」の書いた本にしては、本の題名カッコよすぎですが‥‥。
 超まじめな、おふざけ一切なしの、率直な3~4ページのエッセイが68編。率直さが強く現れているのは、例えば『従順』。イラク人質事件のバッシングに対し、「自衛隊の撤退が人質解放の条件であるならば、それを国家に要求することは(人質の)家族として当然のことではないのか。」「国家がその国民を守るのは当然の義務である。」あるいは、『覚悟』。同じくイラク人質事件の自己責任論に対し「政府は自衛隊を派遣するにあたって、サマワが安全でだということをどれだけ強調してきたか。その同じ政府が今度は『あれだけ危険だと言っただろう』と言うのである。」と政府のダブルスタンダートを切り、人質だった高遠さんの「いろんなことがあったけど、イラク人を嫌いになれない」という言葉と政府の対テロの闘いの「覚悟」の違いを鋭くついています。ここでは、すべてが正論で、正面きって論じられています。
 また、真面目に論じる、という点では、例えば「伝える」。栃木リンチ殺人事件で、殺された青年は最後に「生きたまま埋めるのかなぁ、残酷だなぁ」と言ったそうです。この時、彼は両親が彼を探していることを知っていて、両親が彼を救おうとしている、という事実だけが両親から彼に伝わっていたことになります。逆にそれ以外、両親から警察へ(両親の度重なる全身の命乞いを警察は遮断し続けた)、青年から犯人へ、という関係では何も伝わりませんでした。この事実から、著者は何かを伝えようとしている人に耳を傾ける態度の大切さを説きます。また『併せ持つ』では、本「国家の品格」を評価しつつ、あの本が取りこぼした部分(これを著者は「理想」を「野暮」と笑う客観性だとしている)を意識し、それらを「併せ持つ」ことが大切だと言っています。
 もちろん、こうしたエッセイ以外に、太田夫婦の変わった生活を描いた「ある夜の話」とか、著者が大学生の頃、いかにおかしな人間だったか、が分かる「二十歳の頃」など、笑えるものもありますが、あくまでそれは少数派であって、割に政治的発言が多いのが特徴だと思います。
 「世の中、間違ってんじゃないの?」「このまま進んでいっていいの?」とお思いのまじめに世の中のことを考えている方には、ぜひ読んでいただきたい本です。

石坂洋次郎『陽のあたる坂道』

2007-02-19 16:17:26 | ノンジャンル
 山田詠美さん推薦の石坂洋次郎氏の代表作「陽のあたる坂道」を読みました。
 1章「田代家の人々」では、主人公の大学国文科3年・倉本たか子が、田代家の長女の高校生で足が不自由なくみ子の家庭教師として紹介されます。田代家は父の玉吉、母のみどり、優等生で性格もいい長男の雄吉、いたずら好きな次男の信次にくみ子の5人で構成されています。
 2章「新しい隣人」では、アパートの隣人の中年女性トミ子が田代家の住所のメモを持っているのをたか子が見つけ、たか子の近辺を探る男が出現します。そして、家庭教師を紹介してくれた山川氏はたか子に、信次はトミ子の子であり、田代夫婦と自分とが以前三角関係だったことを語ります。
 3章「父と子」では、玉吉は信次から自分の母の安否を聞かれ、くみ子にも母に自分の出生の事実をつきつける、と言います。雄吉はたか子の部屋で、トミ子のもう一人の異父息子の民夫に会い、信次に似ている事に気付きます。
 4章「『オクラホマ』」では、たか子はくみ子に誘われて行ったジャズバーのボーカルが民夫なのに驚きます。3人は食事をし、民夫とくみ子は意気投合します。玉吉と山川は民夫のことを相談し、銀座で民夫とたか子とみく子の三人組を目撃します。
 5章「犬小屋と野球場」では、犬小屋の中で、たか子は信次から母のことを打ち明けられ、トミ子のことをしゃべらされます。そして信次の部屋で、田代負債と山川の関係を聞きます。雄吉は、民夫とくみ子を会わせないでほしいと言いますが、たか子は反対します。
 6章「正月風景」では、正月にトミ子が出かけた後、信次が訪ねてきて、民夫を彼をつけます。信次はトミ子の宴会に参加します。たか子はくみ子の足のケガは信次のせいではなく、実は雄吉のせいだということを知ります。
 7章「約束」では、雄吉がたか子にプロポーズを受け入れてもらえますが、キスは拒否されます。
 8章「そよぐ風」では、たか子は民夫に信次が兄さんであることを教え、玉吉は家族の前で信次の母がみどりでないことを発表します。雄吉はたか子に強引にキスします。
 9章「たたかい」では、山川とみどりの密会を玉吉は目撃します。玉吉はバーのマダム雪子に50万貸す代わりに、クリスチャンの山川を誘惑してくれるように頼みます。
 10章「あいよる魂」では、トミ子、民夫、たか子が住むアパートに信次が来て、自分がトミ子の子であることを認めさせます。
 11章「取引き」では、雄吉と間違われた信次は、雄吉に2度も子供を堕ろされ、今は玉吉の愛人のゆり子の家に連れてこられます。ゆり子のいとこ上島は雪子のバーのバーテンです。信次は雄吉にゆり子の件の身代わりになる代わりに、たか子との交際を認めさせます。
 12章「波紋」では、雄吉と信次はみどりに100万円出させることに成功しますが、ウソはすぐにばれます。
 13章「ダブル・プレイ」では、病気の山川を民夫と雪子が訪れ、雪子の店にはゆり子が入ります。雪子の企みで、玉吉とゆり子と雄吉がラブホテルではち合わせします。
 14章「曇後晴れ」では、くみ子とたか子が引き合わせた民夫と信次は、けんかの末、和解します。その夜、信次はたか子にキスします。
 15章「わが道を」では、たか子は信次を憎めないと民夫に言います。そして雄吉と信次の前で、信次を愛してると言います。くみ子は手術でびっこが治ることを民夫に知らせ、喜ばせます。

 という小説なのですが、昭和30~40年代の山の手の男たちが、表面は道徳的な家庭の一員という顔をしながら、裏ではいかに性的に汚れていたか、が分かります。その汚れた世界を若い人たちがすがすがしく乗り越えて行くというある種の青春ドラマになっている訳です。
 ただ、会話が古い!「おじさま、私はそう言う事は決して許せません」などと平気で言う。これは当時の映画にも言える訳で、本当にこういう会話を当時の若者はしていたのか、それとも小説や映画の世界の中だけの話なのか、よく分かりませんでした。
 純真な若さを信じることのできる人には楽しく読めるでしょうし、そうでない人には唾棄すべきものかもしれない、そんな小説でした。