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マイケル・ムーア監督『華氏119』その1

2020-01-21 08:58:00 | ノンジャンル
 マイケル・ムーア監督・製作・脚本の2018年作品『華氏119』をWOWOWシネマで観ました。

「ヒラリー! ヒラリー」の大合唱。“フィラデルフィア 2016年11月7日 大統領選 投票日の前夜”の字幕。ナレーション「これはただの夢だったのか?」。踊る支持者。「2016年、投票日の前夜、何もかも順調に見えた。素人も専門家も何カ月も前に結果を断定していた」。(中略)
「皆に紹介しよう。次期アメリカ大統領、ヒタリー・クリントン!」「ありがとう、J・コール、ビヨンセ、チャンス・ザ・ラッパー、J・コール、ビッグ・ショーン」。ナレーション「彼女は誰一人知らないが関係なかった」。
 テレビのキャスター「ついにやって来ました。投票日です。当日朝のNYタイムズ紙ですら、トランプが勝つ確率はわずか15%」。
「夢でしかなかった。女性の大統領が実現する」(中略)
 ヒラリーの支持者、歌い踊る。「投票が締め切られると、未開票のうちにヒラリーの祝賀パーティでシャンパンの栓が抜かれた」。(中略)
「その頃、17ブロック先では」。
テレビ「祝賀会場としてはまれに見る狭さです」。
「もう一人の候補者は劣勢で、支持者は沈鬱だった」
 テレビ「共和党幹部は恐れています。もし大敗なら議会の議席も大幅に失うと」
「FOXニュースは今後4年間彼を支持せずに済むと安堵していた」
テレビ「ヒラリーは各州で勝利。ニュージャージーでも選挙人14を獲得。東海岸のマサチューセッツ、メリーランドでも優勢。選挙人20のイリノイでもヒラリーが勝利。想定内です」
「この時、異変が起き始めた」。
 テレビ「大統領選初のビッグニュースです。オハイオ州でトランプが勝利! ノースカロライナでも勝利です。フロリダでも、ウィスコンシンでも勝利。ペンシルバニアでトランプがリード。ミシガンでは開票率56%で接戦。互角ですが今はトランプがリード。白人労働者層の映画を撮ったマイケル・ムーアは命がけでトランプを阻止しろと言っています」。
「僕は故郷ミシガンの人々をよく知ってる」。
 タイトル。
 トランプの蝋人形が作られていく。
 グウェイ・ハネイ・ステファニー「偽物(フェイク)の大統領選への出馬表明だった。サクラを一人50ドルで雇い、NBCと決裂したところで、「悪いアイディアじゃないかも」とひらめいた。国内のメディアに電話し、会見には大幅に遅刻し、セックススキャンダルを起こした。(中略)娘のイヴァンカとの性的関係も漂わせ、人種差別と女性蔑視発言を繰り返した。プーチンと会ったことは国家反逆罪にあたるだろう。彼は独裁者になることを求め、共和党のスナイダーがミシガン州の知事になり州を企業のように運営するのを手本とする。ミシガン州のフリントでは、それまで湖からきれいな水を引いて飲んでいたのだが、スナイダーは金を稼ぐため、フリント川から新たなパイプを引く公共事業をし、その結果フリント川に流れ込んでいる工場廃液中の鉛の中毒者が続出するようになる。(中略)」
 学校で銃の乱射事件が起こり、生徒たちは銃規制を政府や自治体に求める。彼らがパークランドに構える秘密の本部に案内してもらうムーア。「彼らは国際NGOを結成し、SNSを使い、22人のメンバ―を集めていた。(中略)彼らはタラハシーの州会議事堂に押しかけ、用意周到に理論武装し、共和党の上院議員に挑むが、NRA(全米ライフル協会)で最高ランクの政治家には何を頼んでもムダだと知る。ならば直接対決だ。あるいは落選させればいい。ヘイトスピーチをした共和党のホッグの選挙区にE・ギルクリスという28歳の対抗馬を出馬させ、無風だった57区でホッグを選挙から撤退させることに成功する。「今日は記念すべき日だ」。
「彼らは革命への行進を行なった。自力で準備し、大人にはしゃべらせず、全米では約400箇所、世界規模でも100箇所、史上最大の抗議運動だった」。
「またオバマ大統領との対話集会にも招待された。オバマらならすぐに対策を取ってくれるはずだと彼らは思った」。(中略)
「演壇に立ったオバマは演説の途中でグラスに一杯の水を求め、それを飲む芝居をした。それは“ここの水は飲んでも大丈夫だ”というメッセージだった。今でも鉛汚染の問題は存在していた。フリントでは前回オバマに投票した8000人の黒人が今回の投票には行かなかった」。
「オバマはトランプへの道を開いた。オバマ政権下で内部告発者が多く逮捕された。歴代政権下を合計したより多かった。オバマは無人機によって一般市民を爆撃し、記録的人数の不法移民や難民を国外退去させた。フリントが彼に望んだのは鉛害のパイプラインの交換だったが、オバマは軍の工兵部隊を送る代わりに、軍隊を送った」。
 夜の銃撃戦。“鉛汚染から15カ月目”の字幕。「こんなこと異常だ。低空飛行だぞ」。

(明日へ続きます……)

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

宮田珠己『無脊椎水族館』その2

2020-01-20 09:24:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

・このウメボシイソギンチャクがまたすごいのだ。(中略)イソギンチャクの口から小さな口から小さな同じイソギンチャクがわさわさ出てくるのだから、異星生物的なスペクタクルにちがいない。

・われわれにとって貝といえば、おおむね食べるものであり、食物連鎖でいえばだいぶ下のほうに位置する生きものと考えがちだが、実際には一部の貝は獰猛な捕食者であり、魚のようにすばやくはないけれども今見たような着実に前進する力強い動きには、捕食者っぽい威圧感がある。

・エイはいい。
 居酒屋に行くと、とりあえずビール、と言ったりするが、水族館ではとりあえずエイ、である。

・硫化鉄の鱗を持つ巻貝で、ミリタリー感あふれるその姿は、まるでSFに登場する空想の生きもののように見える。人体にも鉄分は含まれているとはいえ、鉄の鱗で防御するいきものはこいつぐらいだろう。鉄だから磁石に反応するらしく、逃げようとして磁石に吸い寄せられる姿を想像すると面白い。
 驚いたことに、通常の海水で飼育すると、錆びて死んでしまうそうだ。酸素濃度の関係らしい。深海ではないと生きられないのである。

・そういうわたし自身も、単独で水族館に行くことが多いから、この《おじさんひとり水族館》現象はひそかに全国的な広がりを見せていると言っても過言ではなさそうだ。

・説明書きによると、シタザクラサビライシといってサンゴの仲間らしい。
 まあ、そんなようなものだろうと思ったが、後に調べるとサンゴのくせに移動するというので感心した。

・最初からあまり極端な無脊椎動物、たとえばオオイカリナマコやウコンハネガイなどを見せても、人はノレないものだ。そんなよく知らないものではなくて、誰もが知っていて、それなりに愛嬌がある、それでいて変なカタチの、そういう中間的な生きものからの導入が重要なのだ。

・チョウチンアンコウはオスがメスの体に寄生し、しまいには合体してメスの一部になって生きることで知られているが、ここにもそれが強調してあり、モレイ氏によると、理想的な生き方だとのことであった。
「そうかなあ。ずっとメスの一部なんてイヤですよ。自由に好きなところに行けないじゃないですか」
 そう反論すると、
「ヒモみたいなもんでしょう。最高じゃないですか」

・一番見てホッとする海の生きものが何かといえば、コウイカやコブシメの一族のような気がする。

・イソギンチャクを食べる?
 そんな生きものはあまり聞いたことがない。
 隣のモニターにまさにその捕食映像が流れていてたまげた。本当にイソギンチャクを丸飲みしている。サンゴノフトヒモが口を大きく開けて、イソギンチャクのあのビラビラした触手も何も気にせず、まるごとガモッとくわえ、そのままずいずいと飲み込んでいた。
 すごいものを見た。
 こんな生きものがいたとは。
 サンゴノフトヒモがイソギンチャクを食べる映像が撮影されたのは世界でも初めてらしく、この映像はここアクアワールドでしか見られない貴重なものだった。

・その先にはミドリフサアンコウがいた。最近わたしが気になっている生きものである。魚だから脊椎動物であるけれども、こういう変なカタチは観察し甲斐があるのでしみじみ眺めた。
 非の打ちどころのないカタチだ。
 かわいい。
 カタチもいいし色もいい。なぜこんなチャーミングな柄なのか。あんなにたくさんヒゲが生えているのは何か意味があるのか。
 家に帰って「ミドリフサアンコウ」で画像検索したところ、かわいい画像がどっさり出てきて悶死しそうになった。
 カエルアンコウといい、アカグツといい、チョウチンアンコウといい、フウリュウウオなんかもそうだけど、アンコウの仲間は奥が深い。

 引用しておきたい楽しい文章はまだ山のようにあって、それを書いていると、本をまるまる写すことになりそうでした。宮田さん独特のユーモラスな絵と、そして何よりも様々な無脊椎動物の写真が多く掲載されていて、それらを見ているだけでも楽しめる本でした。

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

宮田珠己『無脊椎水族館』その1

2020-01-19 22:52:00 | ノンジャンル
 宮田珠己さんの2018年作品『無脊椎水族館』を読みました。
 冒頭の「無脊椎水族館のすすめ」の文章を引用しますと、

「水族館に行くとほっとする。
 なぜほっとするのか。何か理由があるにちがいない。

 つらいときや疲れたとき、そのほかとくに問題ないときも、水族館に行って、じっと水槽を眺める。すると、あっという間に夢中になる。
 どの水槽もいいが、なかでもおすすめは無脊椎動物の水槽である。クラゲや、イカ、イソギンチャクやウミウシなどの無脊椎動物は、よくよく考えると理解に苦しむ姿で暮らしている。なぜそんな変なカタチなのか。どうしてそんな奇妙な動きなのか。
 思わずじっと見入ってしまい、いつまでも水槽の前から離れられない。
 わたしの見る限り、水族館で何か画期的な事件が起きているとすれば、それは無脊椎動物の水槽においてである。
 あの、館内順路の終わりのほうにある、薄暗い廊下に小さな水槽が並んだ驚異のゾーン。世界の秘密はそこにある。
 クラゲのたゆまぬ無心な動きや、イカの突然の色の変化、ヒトデのどこか思索的な姿に、ウミウシの美しい色合い、そしてイソギンチャクの不気味なゆらめき。そういった得体の知れない生きものたちの真の生きざまこそが、水族館でもっとも見るべきものだ。
 彼らに関して詳しいことは知らない。その生態を深く知ろうとも思わない。それよりただじっと見ていたい。ただ見て、その変なカタチと動きに呆れ、驚き、そしてときどき、こうつぶやくのである。
 わけがわからん。
 現実とはわけがわからないもの。それで当然なのだ。わけのわかる現実など、なにほどの魅力があろうか。
 水族館へ行って、無脊椎動物を見る。
 そしてふーっと肩の力を抜く。
 理由なんてどうでもいい。何であれ、ほっとすることが大切である。
 いろんなことは、そのうちなんとかなるだろう。」

 ここで取り上げられている水族館は、葛西臨海水族園、新江ノ島水族館、マリンピア日本海、寺泊水族博物館、アクアマリンふくしま、横浜・八景島シーパラダイス、鳥羽水族館、海響館、うみたまご、須磨海浜水族園、越前松島水族館、名古屋港水族館、加茂水族館、アクアワールド大洗、海遊館、京都大学白浜水族館、エビとカニの水族館、串本海中公園、いおワールドかごしま水族館です。

 最後に、本文からいくつか引用させていただくと、

・フジツボという生きものは、フジツボ一択かと思っていたら、世界に四百種類以上いるという。無駄に多様化している気がしてならない。
 まだある。フジツボは、貝ではなく、エビやカニの仲間なのだという。もはやさっぱり得体が知れない。もっといえば、フジツボのペニスは、自分体長の八倍もの長さがあり、八倍は動物界で最大なのだそうだ。
 全方位的に意味不明であるが、そもそもフジツボにペニスがあること自体想定外である。サンゴみたいに水中に精子を放出し、それがメスが放出した卵子と混ざって、適宜受精するわけじゃないのだ。あの穴の中から八倍のペニスを伸ばし、近くにいる別のフジツボに突っ込むのである。
 なんという無頼派な生きものであろう。北方健三の小説に出てきそうだ。
 そもそもエビ、カニの仲間なら、八倍も伸ばしてないで歩いたらどうなのか。

(明日へ続きます……)

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