常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

米太平山

2020年03月14日 | 登山
鮭川村米地区。蛇行する鮭川、残された湿原。ここは古くからの米作りの里である。いくつもの橋を渡って奥深い自然のなかに辿り着くが、小さな集落の先に、米太平山がある。昨夜降った小雪が、山道に化粧するようにうっすらと消え残っている。あくまでも静かな自然である。
新庄から酒田へ向かう国道47号線、5㌔ほど進むと升形がある。ここから国道458号線で鮭川村に向かう。鮭の遡上する川が、蛇行しながら流れているのを目にする。更に県道328号線で米集落に向かう。この辺り、一昨年の洪水で河川が氾濫した跡を橋の架け替えや、堤防の修復など、ブルドーザーの作業がまだ終了していない。道路も川も田に沿って大きく蛇行している。いくつもの橋を渡り、米の集落に着く。
YouTubeに鮭川村の㏚動画がアップされている。タレントの大久保佳代子さんが出演しているもので、この村の田の稲が育っている景色は、この時期の村からは想像できないほど美しい。この時期にこの山を登ることを計画したのは、残雪を上をカンジキを履いて、雪道トレッキングの練習するのが目的であった。暖冬ですでに雪はかけらすらなく、夏道をあるく羽目になった。

集落で登山道を保全している方から、駐車場の場所を聞いて、すぐに登山道へと向かう。分かれ道の標識で、湿原ではなく米太平山をさして歩き始める。ほどなくして水を満々と湛えた米堤が見えてきた。遠くにカモの群れが、人の足音を聞いて大きく羽ばたいて水面を離れた。ざっと見ただけで50羽を越える群れだ。田の水はこの堤から供給されたのであろう。豊かな水が、この地区の米づくりを支えている。
登り始めてから40分ほどで、最初のピーク米山に着く。ここから米集落周辺の田や鮭川の蛇行の様子が見える。もっと晴れていれば、鳥海山もその姿を見せるはずだが、今日は雲が多くて見えない。ここには三吉権現の石碑も建っている。大平山はそもそも秋田の大平山をご神体する信仰で、役小角が創建した霊山である。東夷の征討の出向いた坂上田村麻呂が、武運を祈った山であり、三吉とは大力の持ち主として崇められていた。
 
この米大平山にも村の六之丞という大力の大男が、秋田の三吉山の鬼神と相撲を取り、敗けてこの山に逃げ帰ったので、ここに三吉様の社を立てて祀ったために太平山と呼ぶようになったとの言い伝えがある。上山の三吉山や、大平山にもこの信仰の流れを汲んでおり、戦時に出征兵士の武運長久を祈ったののも三吉山であった。秋田ではミヨシと言い、上山でサンキチと呼ばれているのも興味のあるところである。

米太平山の標高は206m、急な坂道や痩せ尾根のような山道もあるが、2時間足らずで一周コースをあるくことができた。途中、左道から来る林道に降り着くが、ここは木を伐り出すための道路づくりで、500m以上の泥道で難渋した。やがて展望台への入り口に着き、再び米集落の田園風景を堪能した。

そこから、湿原へと下る。ザゼンソウがひとつだけ咲いているのを見つける。かって田であった細長い木道を歩き、米湿原のなかを散策する。今少し春めいてくれば、ミズバショウ、ミツガシワ、ヒメシャガ、キンコウカなどの花々のさくお花畑が出現する。もうすぐ、天然記念物に指定されているギフチョウの飛ぶ姿も見られる。季節をあらためて再訪したい場所である。

帰路、羽根沢温泉加登屋旅館で汗を流す。ヌルっとしたアルカリ泉は美人の湯としても知られる。400円で気持ちのよい温泉であった。隣の食堂でラーメンを食べてこの日の楽しみも締めとなった。

コメント
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