この季節、山登りの楽しみは、高山に咲く花を見ることだ。マンサクに始まって、春が深まると咲く花もどんどん種類を変え、懐かしい花たちに対面できる。カタクリが終り、今はニリン草が最盛期である。近年注目されているのがミドリニリン草だ。白い可憐なニリン草のなかに、突然変異のような緑の花のニリン草。クローバーの四つ葉のように、変異して、見つけた人に幸運をもたらすという話が広まっている。この花を求めて、ニリン草の咲く山地を訪れる人が増えているらしい。
上高地徳沢で、「幸せのミドリニリン草」と名付けて、客を呼ぶ花として宣伝された。その後、高尾山、北海道旭川、佐渡など日本全域でこの花の報告が集まっている。宮城県白石の青麻山でもこの花がさくことが知られ、この季節、多くの人が入山している。我が山友会でも19日、この花を求めて、下別当登山口から入山した。30分ほど登山道を歩くと、ニリン草の群落に行きつく。山道のわきはには、白いニリン草が、入山を歓迎するように咲きほこっている。この群落にのなかに、ミドリニリン草を探す。やがて「あった!」という声があちこちで聞こえてくる。
ヤマップの記録にも「見つかりませんでした」という報告も目につく。すれ違う人に聞いても、見ていません、という答えがくるなかで、次々に目にするミドリニリン草。幸運であると同時に、この先なにかほかの幸運にも恵まれるかも知れない。山道はだんだん急傾斜になる。ニリン草の群落が絶えると、ツツジが目についてくる。本日の山行も、花の人気が高く14名の団体になった。白ヤシオ、ムラサキヤシオなど、ツツジの女王とも言える。
山は日に日に、緑が濃くなっていく。青空のもとの春の花々は、生きるよろこびを思いおこさせてくれる。急な山道を1時間と少しで山頂に。目を転じると、蔵王の山々は、白い残雪が美しい。頂上では、強い風が吹きつける。少し下ると、風のない山道。長い列となって弁当。頂上からは、電波塔へ下り、周回コースをやはり1時間。無事に出発の駐車場に着く。