みはらしの丘、はらっぱ館の近くにオキナグサが咲いている。斎藤茂吉がこよなく愛したオキナグサを、地元の皆に見てもらおうと栽培された。今年は花期が早く、もう終わりに近づいている。
かなしきいろの紅や春ふけて
白頭翁さける野べを来にけり 茂吉
茂吉の解説では、『おきなぐさ』は即ち白頭翁で、表面に白き繊毛密生し、内面黒きまで深紅の花である。花が過ぎると僧が持つ払子に似た形態になるのを作者はひどく愛している、とある。
牧野富太郎博士にオキナグサの解説がある。「わが国の学者はこの草を漢名の白頭翁としていたが、それはもとより誤りであった。この白頭翁はオキナグサに酷似した別の草で、それは中国、朝鮮に産し、まったくわが日本には見ない」と白頭翁説を否定している。
またオキナグサは、地方によって方言があることを書いている。曰く、シャグマグサ、オチゴバナ、ネコグサ、ダンジョウドノ、ハグマ等など。そのうちにネコグサが万葉集に詠まれていることを紹介している。
芝付の美宇良崎なるねつこ草
相見ずあらば我れ恋ひめやも(巻14・3508)
写真で見る花は、万葉人が女性を想像することも頷ける。妖艶でたおやか。別名ネコグサが、オキナグサと解する根拠とされている。それほど古い時代から、日本人に愛されたきたオキナグサである。牧野博士は朝ドラ「らんまん」主人公のモデルである。風の強いなかで撮った最新のオキナグサ。払子のような綿毛が花の上に多く見られた。