常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

アジサイ

2023年06月14日 | 
梅雨に入って、アジサイが咲き始めた。2日前にコロナワクチンを接種したが、以前心配したような副反応はほとんどなく、接種翌日からほぼ平常の生活だ。近くで感染者も出ているので、ワクチンは打った方が安心できる。アジサイには牧野富太郎博士の解説がある。

「この花はかざり花で実をむすびません。花びらのように見えるのはがく、4ー5枚あります。がくの色は、花が咲きはじめたころは白く、のちしだいに青くなり、やがて青むらさき色に変わります。このように花の色が変わるので『七変化』ともよばれます。」

紫陽花や白よりいでし朝みどり 渡辺水巴

梅雨の雨に誘われて、怖い短編小説を読んだ。円地文子の『鬼』。30歳になろうとする女性編集者の心に住む鬼の話だ。熊野の旧家に生まれた華子は、学生時代から付き合う男性がいた。もう少しで結婚という段階にきて、夜夢をみるようになる。得体の知れない爬虫類のような気味の悪い怪物が出てくる。夢から覚めると、その正体が付き合っている彼氏のように思えてくる。こんな夢を見続けて、二人は次第に離れてしまった。

旧家を女手ひとつで守っていた母は、相手とも会い、華子の部屋で食事を作ってもてなしもした。その後も、華子は娘盛りであったので、結婚を前提にして付き合った男性が3人もいた。だが、どの場合も話が進展すると、最初の時と同じ夢にうなされて話がとん挫する。母の死後明らかになるが、この状況を作り出していたのは、母になかに住む鬼であった。母の死後、鬼は華子の心に移り住む。その鬼は、華子がやっと結婚した相手が、心をほかの女に移したときその女を死に追いやる。

小説は鬼を旧家に住みついたものとして描くが、実は人間そのものが鬼であるという怖い事実を暗示する。アジサイの七変化を見ながら、美しいものなかに存在する怖さに気付かされる。
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