ゴミ袋を持ってエレベーターで降りると、途中で女性がひとり乗ってきた。エレベーターが動き出すと、女性は「ア~ア」と大きなため息をついた。ビックリして、「どうされました?」と声をかけると、恐縮した素振りで首を横に振る。「ため息はダメですよ」と笑って言うと、笑って会釈してくれた。ゴミ捨て場からの帰りに、駐車場でまたその女性に会った。悪いことを言ってしまったかなと思って、「先ほどは失礼しました」と言うと、「いいえ、おかげで元気が出ました」と笑顔で応えてくれた。
今日の講演で、性同一障害に悩んできた結城愛さんは「人はひとりで生きているわけではない。一人ひとりみんな違う。完璧でなくてもいい、弱くてもいい」と話していた。生きていくことは辛いことでもあるが、生きていなければ楽しいこともない。愛さんは大学生の時、悩み苦しんで、もう死ぬしかないという結論に至った。どうせ死ぬのだからと、これまでに堪えてきたこと、人に話せなかった自分の悩みを打ち明け、それで笑われたって構わないと決意して友だちに告白した。友だちは「分かってあげられなくてごめん」と言った。
気が短くてすぐ怒る怖い父親に告白した時は、鉄拳が飛んでくるとばかり思ったが、「死ぬな。死んだつもりで生きろ」と励まされた。この話は会場中に涙を誘った。親は子の幸せを願うが、思いはすれ違い空回りすることの方が多い。生きていて欲しい、幸せになって欲しい、それだけでいい。結局そこにいきつく。誰かが聞いてくれれば助かるのに、忙しかったりすると真剣に伝えたいことを無視したり見逃したりしてしまう。
100人を超す人々が聞きに来てくれた。これまでの大和塾の市民講座に来てくれていた人とは違う人が多かった。マイノリティであることは生き辛い。けれども結城愛さんは一人ひとり、細かなことを比べればみんな違う。みんな違うことを認め合うことが出来れば、辛く感じることも無くなると話す。「今日はとても良い話がきけた」とたくさんの人から言っていただき、逆に励まされた。いよいよ、大和塾の市民講座も残り2回となった。