年を重ねた夫婦だから互いに理解しい労わり合えてくるかと思うが、案外にそうでもない。子どもが独立し、仕事も終え、ふたりだけの生活になったのだから、夫婦で旅行に出かけたり、音楽会や映画や芝居の鑑賞とか、近くを散歩することだって出来そうなのに、意外にそうでもない。働きバチだったダンナは相変わらず規則正しく図書館やトレーニングジムに通い、カミさんと一緒に何かをすることはない。そういう男性が多い。
中日新聞の家庭欄に『つれあいにモノ申す』というコーナーがあるが、これが結構面白い。どこの夫婦も同じなので安心し、思わず笑ってしまう。今日の記事を見ても、「私が上映時間を間違え、怒られるかと思ったら『まだ始まったばかりだね』と優しいひと言。前夜、酒に酔った夫に嫌味を言った自分に後悔」とあるのは40代の主婦。それが70代になると「薬と水を用意してあげても飲むのをすぐ忘れてしまう夫。『私が死んだら、すぐ後を追ってきそう』と言うと、夫から『逆に病気が治るかも』と言われ、まだまだ逝きません」とある。
互いに忘れ物が多くなることも事実で、駐車場に車を止め駐車券をカミさんに渡したのに、「あなたが持っているでしょう」と言い切られ、「いや、確かに渡したから、ちゃんと見てよ」と頼んでも、「あなたこそ調べたらいいよ」と頑固に拒否する。友だちのところへ出かけると言うので、車のキーを渡したのに、「ねえ、カギはどこよ」と言う。「渡したよ」と言っても、「あなたがどこかに仕舞ったんじゃないの」と聞く耳を持たない。
先輩夫婦も「家にいるとすぐケンカになってしまうので、穏やかな精神でいるために口は利かない」と言う。ダブルベッドで一緒に寝ていることと、口を利かないことが両立できるようになるには、互いに相当な我慢と努力が必要な気がする。「それはちょっと寂しいね」と言うと、「女房、元気で留守がいいって言うでしょう」と笑う。そうか、「亭主」の時代は終わったのか。完璧な夫婦などいない。互いの欠点が分かるなら、許し合うのが賢い生き方なのかも知れない。