風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

栃ノ心が初優勝

2018-01-30 00:27:33 | スポーツ・芸能好き
 大相撲初場所は、平幕(前頭3枚目)の栃ノ心が初優勝を飾った。日馬富士暴行事件は貴乃花とモンゴル勢(あるいは白鵬?)のガチンコ勝負になりかねない雲行きで今なお燻る中、渦中の白鵬は6日目から、日本人期待の稀勢の里は7日目から、続けて二枚看板の二横綱が途中休場して、どうなることかと危ぶまれたが、全くのノーマークだった栃ノ心の爽やかな笑顔に救われた。
 なにしろTBS系「サンデーモーニング」で辛口の張本勲さんが「大あっぱれ!」に加えて「久しぶりにもらい泣きした」と打ち明けるほどの大盤振る舞いで、おまけに「関脇まで行ったけど幕下まで落ちている。そこからはい上がって、まじめに一生懸命練習した結果。うれしいねえ」と目尻を下げたとデイリースポーツが報じるほどで、私も番組を見ていたが、張本さんのべた褒めは尋常ではなかった。そこまで言われる栃ノ心の存在を不覚にも知らなかったので、調べてみた。
 1987年10月13日生まれの30歳。ジョージアで歯科技工士の資格を取得している変わり種である。192センチ、177キロ、筋骨隆々で、握力は実に90キロを超える怪力らしい。柔道の欧州ジュニア・チャンピオンと、サンボの欧州チャンピオンを経験し、2006年春に初土俵、2008年夏に新入幕と順調に出世したが、2013年名古屋場所で右膝前十字及び内側側副靱帯を断裂し、4場所連続休場して幕下55枚目まで落ち、引退も覚悟したという。厳しいリハビリの後、関取に復帰した場所から2場所連続十両優勝で再入幕、それから3年かけて念願の初優勝へ辿り着いた。ジョージア出身力士として初、欧州勢では3人目(ブルガリア出身の琴欧洲と、エストニア出身の把瑠都に続く)、平幕優勝は6年ぶり(2012年夏場所の旭天鵬以来)、新入幕から58場所での初制覇は貴闘力と並び4番目の遅さだという。缶コーヒー「ジョージア」を愛飲するとは、なんとなく気持ちがよく分かる(笑)。
 その栃ノ心が入門直後、師匠の春日野親方から“世話役”に指名された兄弟子で、今は故郷の青森で飲食業を営む棟方弘光氏は、「プロ競技で、なぜ選手(力士)が掃除や皿洗いをしないと駄目なのか。外国人に伝えるのは難しい。栃ノ心は分かってくれた。日本人より前向きでした」と語っている(スポーツニッポン)。14日目に松鳳山を破って優勝した瞬間にどう感じたかと聞かれた栃ノ心は、「やったあとは思ったけど相手もいることだからね。気持ちは抑えた」と答えている(スポーツ報知)。比較しても詮無いことだが、最近どうも勘違いしているように見える、一見、日本人っぽい外国人より、いかにも外人サンなのに余程お相撲さんらしいミスマッチが、なんとも微笑ましい。
 名門・春日野部屋が優勝力士を輩出したのは、1972年初場所の初代・栃東以来、実に46年ぶりだそうだ。モンゴルだあ、日本人だあ、ばかりでなく、ゴタゴタの続く角界だからこそ、同部屋にとって52年ぶりとなる大関誕生に期待したくなる。
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