風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

追悼・西部邁さん

2018-01-22 23:36:13 | 日々の生活
 昨日、西部邁さんが亡くなった。享年78。
 どうやら自決されたらしい。以前から「自決する」と言われていたようだし、昨年12月に出版された、今となっては遺作となる「保守の真髄」(講談社現代新書)の帯にも、「大思想家ニシベ 最期の書!」とあり、本書の中で、「自然死と呼ばれているもののほとんどは、実は偽装」だとし、その実態は「病院死」だと指摘、自身は「生の最期を他人に命令されたり弄り回されたくない」とし「自裁死」を選択する可能性を示唆されていたという。そして、昨年10月22日に自決する予定だったが、総選挙と重なり、少し延期した旨が、サラッと書かれてあるともいう。実は、私は本書をまだ購入していなかったのだが・・・それにしても驚いた。
 西部さんのことを知ったのは学生時代のことで、今も捨てずに持っている「大衆への反逆」など、ますます捨てられなくなってしまった。私も若かりし頃は宵っ張りで(苦笑)、「朝まで生テレビ!」でよくお見かけしたものだ。難解で、骨があって、トリッキーで、しかも根底にニヒリズムを感じさせて、汗をかかずについだらけた頭に刺激を与えて頂いた。その後、私自身、海外を行ったり来たりしている内に、暫く離れ、その間、911あたりから?反米色が強くなって、やや違和感を覚えていた。ところがここ数年、まるで引き寄せられるかのように、講演会を見つけて二度ほど聴きに行き、奥様を亡くされてご苦労があったようだが、その頃にはもはや超然とされ(今、思うと、いつ死んでもいいといった覚悟が出来ておられたような感じだった)、なんとも勿体付けつつも気さくでべらんめー調の西部節を炸裂させて、年齢を全く感じさせなかったのを何とも嬉しく思ったものだ。エドマンド・バークの話をひとしきり聴いて、「フランス革命の省察」を読んだのはつい2年ほど前のことだ(私の精神もまだまだ若い!?)。まさに保守、しかも「保守するためには改革も必要」と述べたエドマンド・バークの思想そのままの方だったように思う。西部さんが主宰する雑誌「表現者」をぽつぽつ買い始めたのは、ここ一年のことだ。
 折しも今日、東京で4年振りに雪が降っている。午後10時現在、都心でも積雪20センチ超という。西部さんが降らせているのだろう。最後まで手厳しく日本のありようを問い、民主主義を疑う言説で警鐘を鳴らし、平和に慣れきった私たちの頭に冷や水を、最後は雪を、浴びせ続けた。遺志を継いで、私たちはそれに応えて行けるのだろうか。
 突然の死を悼みつつ・・・合掌。
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