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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 夏 四月

2013年04月18日 | 日本古典文学-夏

はなちりしやまのこすゑのわかみとりはやくもしけるなつのかけかな
(文保百首~日文研HPより)

樹陰夏来
春くれし木の下やみを卯花の光も露もはらふ夏かな
(草根集~日文研HPより)

卯月ばかりの卯の花は、そこはかとなう心地よげに、一つ色なる四方の梢もをかしう見えわたるを、もの思ふ宿は、よろづのことにつけて静かに心細う、暮らしかねたまふに、例の渡りたまへり。庭もやうやう青み出づる若草見えわたり、ここかしこの砂子薄きものの隠れの方に、蓬も所得顔なり。前栽に心入れてつくろひたまひしも、心にまかせて茂りあひ、一村薄も頼もしげに広ごりて、虫の音添へむ秋思ひやらるるより、いとものあはれに露けくて、分け入りたまふ。
(源氏物語・柏木~バージニア大学HPより)

家に有りたき木は、(略)。 卯月ばかりの若楓、すべて萬の花紅葉にもまさりてめでたきものなり。
(徒然草~バージニア大学HPより)

ころは夏たつはしめなれは木々の梢もしけりあひ庭の千くさも色そへていとすゝしけなる宵のまの月もやかて草葉にかくれ武蔵野の名残おほへてむらさきのゆかりあれはあとの事なとなにくれといひこしらへぬるうちに短き夜半のうき枕むすふともなきうたゝねのゆめを残して明はなれむとするころあつまの空をたちて日数十日あまりに都になむつきぬ
(鳥部山物語~バージニア大学HPより)

応徳元年四月、三条内裏にて庭樹結葉といへる事をよませ給ける 院御製
をしなへて梢あをはになりぬれは松の翆もわかれさりけり
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

十六年四月五日獨居平城故宅作歌六首
橘のにほへる香かも霍公鳥鳴く夜の雨にうつろひぬらむ
霍公鳥夜声なつかし網ささば花は過ぐとも離れずか鳴かむ
橘のにほへる園に霍公鳥鳴くと人告ぐ網ささましを
あをによし奈良の都は古りぬれどもと霍公鳥鳴かずあらなくに
鶉鳴く古しと人は思へれど花橘のにほふこの宿
かきつばた衣に摺り付け大夫の着襲ひ猟する月は来にけり
 右六首歌者天平十六年四月五日獨居於平城故郷舊宅大伴宿祢家持作
(万葉集~バージニア大学HPより)

詠霍公鳥歌一首
木の暗の茂き峰の上を霍公鳥鳴きて越ゆなり今し来らしも
 右一首四月大伴宿祢家持作
(万葉集~バージニア大学HPより)

大伴家持橘花贈坂上大嬢歌一首[并短歌]
いかといかと ある我が宿に 百枝さし 生ふる橘 玉に貫く 五月を近み あえぬがに 花咲きにけり 朝に日に 出で見るごとに 息の緒に 我が思ふ妹に まそ鏡 清き月夜に ただ一目 見するまでには 散りこすな ゆめと言ひつつ ここだくも 我が守るものを うれたきや 醜霍公鳥 暁の うら悲しきに 追へど追へど なほし来鳴きて いたづらに 地に散らせば すべをなみ 攀ぢて手折りつ 見ませ我妹子
反歌
望ぐたち清き月夜に我妹子に見せむと思ひしやどの橘
妹が見て後も鳴かなむ霍公鳥花橘を地に散らしつ
(万葉集~バージニア大学HPより)

いかで逢はんと思ひつつ、年頃、からうじて、四月宵の程に来て、ほどなく明けぬれば
年月もありつるものを時鳥語(かた)らひあへぬ夏の夜にしも
(和泉式部続集~岩波文庫)

長和五年四月、雨のいとのとかにふるに、大納言公任につかはしける 権中納言定頼
八重葎しけれる宿につれつれと問人もなきなかめをそする
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

四月ばかりに、橘の咲きたるを
橘の花咲く里に住まへども昔を来(き)問ふ人のなきかな
(和泉式部集~岩波文庫)

れいならぬ人の大事なりけるが四月に梨の花の咲きたりけるを見て梨のほしきよしをねがひけるにもしやと人に尋ねければ枯れたるかしはに包みたるなしを唯一つ遣してこればかりなど申したる返事に
花の折柏に包むしなのなしはひとつなれどもありの實と見ゆ
(山家集~バージニア大学HPより)

 夏に改めたる御しつらひも、人よりことに涼しげなるに、藤襲の御衣(みぞ)に青朽葉の織物の小袿着給へる、身もなく御衣(みぞ)がちになよなよと、あてになまめかしく薫り、うつくしげなり。
(とりかへばや物語~講談社学術文庫)

東山に侍りし比、右京権大夫頼政朝臣、たづねまうで来て、昔の事ども忘れがたく、など申してのち、かき絶え音もせざりしかば、卯月の比、誰ともなくてさしおかせたりし
いかにして野中の清水思ひ出でてわするはかりに又なりぬらん
さて二三日ばかりありてまうで来て、畳紙の端に書きて落して帰りたりし
あかざりし野中の清水見てしかば又夏草を分くと知らなむ
(粟田口別当入道集)

(安貞元年四月)四日。天晴る。(略)巳の時許りに前殿に参ず。牛童・車副ひの装束、祭以前は衣一領・単衣か。帷を着すべきか。建久四年五六年の御賀茂詣、牛童着衣し、帷を重ぬる由、兼時之を申す。予、常儀祭の比の衣、単衣を着するかと申す。建久二年新制、舎人牛童単衣を止めらる。仍て帷を着して候すか。殊に新制なくば単衣宜しかるべきか。御斟酌又何に依りて単衣を用ひらるるか。居飼、襖を着すべし(布、冬襖、夏帷なり)。(略)
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

コメント (5)
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