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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 二月上申日 春日祭

2013年02月14日 | 日本古典文学-春

二月のはつさるなれや春日山みねとよむまていたたきまつる
(永久百首~群書類従11)

 春日祭 歌林苑
すへらきの戴きまつる春日山けふはさる日と神も知らむ
(林葉和歌集~群書類従15)

元弘三年立后月次屏風に、春日祭の儀式ある所を 後醍醐院御製 
立よらはつかさつかさも心せよ藤の鳥ゐの花の下陰 
 等持院贈左大臣
諸人もけふふみ分て春日野や道ある御代に神まつるなり
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

けふまつる神の心やなひくらむしてに波たつさほの河かせ
けふまつるみかさの山のはふりこは天の下をそ祈りこひける
春の日も光ことにやてらすらん玉くしのはにかかるしらゆふ
(文治六年女御入内屏風~群書類従11)

けふまつるあともいく世かつたへくる春日の原の二月のそら
(「藤原定家全歌集」久保田淳校訂、ちくま学芸文庫)

神もけふなびくしるしもみかさ山たむくるしでに春風ぞふく
(名題和歌集)

弁にはへりけるとき、春日祭にくたりて、周防内侍につかはしける 中納言資仲
万代をいのりそかくるゆふたすき春日の山の嶺のあらしに
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

内侍に侍ける時、春日祭にたひたひむかひける事を思ひて 花園院兵衛督
神まつるその折をりに立馴て見し世恋しき春日のゝ原
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

弘安十一年二月五日、春日祭に立つ。上卿一條大納言、辨には兼仲なり。雨すこし降りて霞みたるに、木津(こづ)川の端を行けば、橋あり。柴を組みて渡したる橋と申す。
(中務内侍日記~有朋堂文庫「平安朝日記集」)

嘉禎元年二月九日壬申。春日祭。左中弁兼左少将実雄朝臣為上卿代被参行。如法辰刻新発。弁侍随身前駈諸大夫前行。直衣柏夾紫奴袴帯剣。去四日下禁色宣旨。見物之輩済々焉。
(百錬抄~「新訂増補 国史大系11」)

(寛弘元年二月)五日、己未。
(略)夜に入って、出立の儀が終わった。
祭使と陪従の饗は頭中将経房が奉仕した。公卿と殿上人の饗は左衛門督が奉仕した。諸大夫の饗は(高階)明順朝臣が奉仕した。
渡殿の饗は少将(源)済政が奉仕した。陪従の官人を饗の座に加えたのは十二人であった。参った者は数にしたがって加えた。左が十人であった。
皇太后宮(藤原遵子)から袴一腰が贈られた。中宮(藤原彰子)から袴二腰が贈られた。唐綾の青摺の文縫(あやぬい)のものである。(略)
六日、庚申。
暁方から雪が降った。深さ七、八寸ほどであった。左衛門督(藤原公任)の許(もと)に書状を送った。和歌を添えた。返り事が来た。道貞朝臣を遣わして、右大将に昨日の参列の感謝を伝え送った。
 六日。雪が深い。早朝、左衛門督の許へこのように云って送った。
  若菜摘む春日の原に雪降れば心遣(づか)ひを今日さへぞやる
 その返り事は、
  身をつみておぼつかなきは雪やまぬ春日の原の若菜なりけり
 花山院から仰せを賜った。女房を遣わして贈られた。
  我すらに思ひこそやれ春日野のをちの雪間をいかで分くらん
 私の返り事は、
  三笠山雪や積むらんと思ふ間に空に心の通ひけるかな
(御堂関白記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)

(建保元年二月)一日。春日の使、頗る結構の由を聞く。仍て二条大路に出でて見物す。前駆諸大夫六人の中(六位一人狩袴)、各々布衣。次で随身四年、移馬に騎す(紺の狩襖・貲袴・狩胡六を帯す、毛沓)。次で使、綾の薄色の指貫(色殊に薄し)。次で雑色八人歩行。蘇芳単の狩衣・袴青衣。次で侍七八人。遅参する者有るが若(ごと)くなり。(略)
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)

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古典の季節表現 二月上午日 初午

2013年02月13日 | 日本古典文学-春

いなり山そのきさらきの初むまに乗てそ神は人をみちひく
(纂題和歌集~明治書院)

 二月はつむまいなりのやしろにまうつる人に
稲荷山尾上にたてるすきすきにゆきかふ人のたえぬけふ哉
(源順集~群書類従14)

いなり山しるしの杉をたつねきてあまねく人のかさすけふ哉
(永久百首~群書類従11)

おそく疾く宿を出でつゝ稲荷坂のぼれば下る都人かな 源兼昌
いなり山杉の青葉をかざしつゝ帰るはしるき今日の緒人 正三位知家卿
(夫木和歌抄~校註国歌大系21)

越えぬよりまづさき立ちぬ稲荷山しるしの杉に懸(か)くる心は
稲荷山のぼるのぼるも祈るかなしるしの杉のもとを頼みて
(六条斎院禖子内親王歌合~平安朝歌合大成2)

いなり山けふとて越る春の空花もこころにおもひそめてき
いなり山の花は。かの青かりしより思ひそめけん。紅葉を花に折たかへたるにや。二月の初午には。おしなへて杉をこそかさすなるに。花に思ひそめけむ心の色。わりなくおほえ侍る(略)
(嘉吉三年二月十日前摂政家歌合~続群書類従)

 さて、この女、願ありて、如月の初午(はつむま)に稲荷に詣りけり。供に、人多くもあらで、おとな二人・童二人ぞ、ありける。おとなはいろいろの袿(うちぎ)、二人は同じ色をなん、着たりける。君は綾のかい練りの単がさね、唐のうすものの桜色の細長着て、花染めの綾の細長をりてぞ、着たりける。髪はうるはしくて、たけに一尺ばかりあまりて、頭(かしら)つきいと清げにて、顔もあやしく世人には似ず、めでたくなんありける。男(を)の童三四人、さてはこの兄(せうと)とぞありける。ませにはあらねど、先立ちをくれて来ける。(略)
(篁物語~岩波「日本古典文学大系77」)

きさらぎの三日はつむまといへど甲午最申日つねよりも世こぞりて。いなりまうでにのゝしりしかば。 (略)
(大鏡~国文学研究資料館HPより)

羨ましげなるもの。(略)
 稲荷に、念ひ起こして詣でたるに、中の御社のほどの、わりなう苦しきを念じ登るに、いささか苦しげもなく、後れて来と見る者どもの、ただいきに先に立ちて詣づる、いとめでたし。
 二月午の日の、暁に急ぎしかど、坂の半らばかりあゆみしかば、巳の時ばかりになりにけり。やうやう暑くさへなりて、まことにわびしくて、「など、かからでよき日もあらむものを、何しに詣でつらむ」とまで、涙も落ちて、休み困ずるに、四十余ばかりなる女の、壼装束などにはあらで、ただひきはこへたるが、
 「まろは、七度詣でしはべるぞ。三度は詣でぬ。いま四度は、事にもあらず。まだ未に、下向しぬべし」
と、みちに会ひたる人にうちいひて、下りいきしこそ、ただなるところには目にもとまるまじきに、「これが身に、ただ今ならばや」と、おぼえしか。
(枕草子~新潮日本古典集成)

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古典の季節表現 二月十一日 列見

2013年02月11日 | 日本古典文学-春

久安元年列見に朝所にて盃酌の後囲碁の事
久安元年列見、式日におこなはれけるに、宇治左府内大臣におはしましける、まゐり給て、事々おこし行はれけり。朝所(あいたんどころ)にて、盃酌の後、囲碁ありけり。権右中弁朝隆朝臣・左中弁師能、又少納言成隆・能忠等、二双つかうまつりける。昔は、公卿ぞうちける。弁・少納言つかうまつる事は例たしかならねども、時代によりて、さだめられけるとぞ。公卿は念人(ねんにん)にてぞありける。此事、絶てひさしく成てけるに、めづらしかりける事也。
(古今著聞集~岩波・古典文学大系)

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古典の季節表現 春 春雨

2013年02月08日 | 日本古典文学-春

家に歌合し侍し時、春雨を 前大納言為兼
梅の花くれなゐにほふ夕暮に柳なひきて春雨そふる
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

立ちぬるる花のしつくかしら玉のをやみたにせす春雨そふる
(宝治百首~日文研HPより)

春雨を 従三位親子
みるまゝに軒のしつくはまされとも音にはたてぬ庭の春雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

百首歌中に 後京極摂政前太政大臣
霞とも雲ともわかぬ夕暮にしられぬほとの春雨そふる
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

ももちとりなくやきさらきつくつくとこのめはるさめふりくらしつつ
(拾遺愚草~日文研HPより)

春雨を 土御門院御歌
浅みとり初しほそむる春雨に野なる草木そ色まさりける
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

春雨を 清原深養父
春雨やなへて染らん峰遠き山のみとりも色深くみゆ
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

おしなへてよもの山への草木まてめくみあまねき春雨そ降る
(宝治百首~日文研HPより)

雨のつれづれなる日
天照らす神も心ある物ならば物思ふ春は雨な降らせそ
(和泉式部続集~岩波文庫)

つくつくとなかむるやとにはるさめのこころほそくもふりくらすかな
(為忠家初度百首~日文研HPより)

春雨 源貞泰
さひしさは昔より猶まさりけり我身ふりぬる宿の春雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

縁檢察墾田地事宿礪波郡主帳多治比部北里之家 于時忽起風雨不得辞去作歌一首
薮波の里に宿借り春雨に隠りつつむと妹に告げつや
二月十八日守大伴宿祢家持作
(万葉集~バージニア大学HPより)

人を待ほとは心もはれやらてくらしそかぬる春雨のそら
(前摂政家歌合_藤原持和~続群書類従15上)

春雨の降る日
つれづれとふれば涙の雨なるを春のものとや人の見るらん
(和泉式部続集~岩波文庫)

題しらす 大江千里
ねになきてひちにしかとも春雨にぬれにし袖とゝはゝこたへん
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

春雨を 鷹司院帥 
音もせて袖ぬらせはや春雨のふるは涙と人のいひけん 
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

はるさめのふるにつけてそよのなかのうきもあはれとおもひしらるる
(和泉式部集~日文研HPより)

二月廿九日に鎌倉に着きて、三月四日より二位殿の御持仏堂を乞ひ受けて、別時の念仏するほどに、春雨のどかなる夕暮に、紐解き渡す花の顔、己れ一人と笑み広げて、思ふことなげなるにも、過ぎにし方(かた)思ひ出でられて、袖の雫も偏(ひとへ)になりぬ。
 春雨のすぎぬる世々を思ひをれば軒にこたふる玉水の音
(信生法師日記~小学館・新編日本古典文学全集48)

後深草院かくれ給て、又のとしの二月はかり、雨ふりけるに、覚助法親王のもとに給はせける 伏見院御歌
露けさは昨日のまゝの涙にて秋をかけたる袖の春雨
御返し 二品法親王覚助
かきくれし秋の涙のそのまゝに猶袖しほるけふの春雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

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古典の季節表現 春 柳

2013年02月07日 | 日本古典文学-春

浅緑染め懸けたりと見るまでに春の柳は萌えにけるかも
(万葉集~バージニア大学HPより)

柳を 藤原信実朝臣
春はまつなひきにけりなさほ姫のそむる手引の青柳の糸
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

延喜御時、御屏風に 凡河内躬恒
春雨の降そめしより青柳のいとのみとりそ色まさりける
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

春雨の色をはふかく染めはてて風のよるてふあをやきの糸
(建長八年九月十三日・百首歌合~日文研HPより)

女御徽子女王家歌合に、柳 壬生忠見
青柳の糸はみたれて春ことに露の玉まく(イ露の玉ぬく)をとや成らん
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

柳を 前中納言定家
浅みとり玉ぬきみたる青柳の枝もとをゝに春雨そふる
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

ももしきの大宮人のかづ らけるしだり柳は見れど飽かぬかも
(万葉集~バージニア大学HPより)

くりかへしすきにしはるもゆくすゑもかかるやなきのいとやなからむ
たまひかるいとかとみゆるあをやきになひかぬひとはあらしとそおもふ
(前斎院桜柳歌合~日文研HPより)

二月十九日於左大臣橘家宴見攀折柳條歌一首
青柳の上枝攀ぢ取りかづ らくは君が宿にし千年寿くとぞ
(万葉集~バージニア大学HPより)

春くればしだり柳のまよふ糸のいもが心になりにけるかな
(和漢朗詠集~岩波の日本古典文学大系)

さてきさらきはかりにやなきのしなひものよりもけになかきなん此家に有けるを折て
青柳の糸うちはへてのとかなる春日しも社思出けれ
(大和物語~バージニア大学HPより)

題しらす よみ人しらす 
花みにはむれてゆけとも青柳のいとのもとにはくる人もなし
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
花見侍けるに、斎院より、いみしくなかき柳の枝をおりて、「いとのもとには」といはせて侍けれは 堀川右大臣 
ちりぬへき花をのみこそ見にきつれ思ひもよらぬ青柳の糸
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

参議雅経はやう住侍ける家に、まりのかゝりの柳、二もと残りて侍けるを見て読侍ける 侍従雅有
故郷のくち木の柳いにしへの名残は我もあるかひそなき
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

堀川院かくれ給てのちよめる 権中納言国信
君なくてよるかたもなき青柳のいとゝうき世そ思ひみたるゝ
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

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