monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 春 春の恋

2021年02月06日 | 日本古典文学-春

しからきの-みねたちこゆる-はるかすみ-はれすもものを-おもふころかな 
あさかやま-かすみのたにし-ふかけれは-わかものおもひは-はるるよもなし 
(古今和歌六帖~日文研HPより)

東宮と申けるとき、故内侍のかみのもとにはしめてつかはしける 後朱雀院御製 
ほのかにもしらせてしかな春霞かすみのうちにおもふ心を 
(後拾遺和歌集 ~国文学研究資料館HPより) 

(たいしらす) 前大納言為家 
しられしな霞にこめてかけろふの小野の若草したにもゆとも 
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより) 

(たいしらす) よみ人しらす 
我恋はまた雪消ぬ若草の色にそ出ぬ下にもえつゝ 
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)  

春顕恋
うつめとも下もえまさる思草雪まさたかに色やみゆらん
(草根集~日文研HPより)

はるさめの-ふるにおもひは-きえなくて-いととおもひの-めをもやすらむ 
あふことの-かたいとなれは-しらたまの-をやまぬはるの-なかめをそする 
(古今和歌六帖~日文研HPより)

題しらす 小野小町 
春雨の沢にふることをともなく人にしられてぬるゝ袖かな 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより) 

春くれは柳の糸もとけにけりむすほゝれたるわかこゝろ哉 
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

たいしらす 能因法師 
閨ちかき梅の匂ひに朝な朝なあやしくこひのまさる比かな 
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

わがやどに咲きたる梅(むめ)を月夜(よ)よみ夜な夜な見せん君(きみ)をこそ待て
(家持集~「和歌文学大系17」明治書院)

春夜恋
花の香もうつろふ月の手枕に覚めさらましの春のよの夢
(草根集~日文研HPより)

いささかなる隙に、文書きてつかはす。薄縹(うすはなだ)の唐の色紙(しきし)のえならぬに、
 花ゆゑに恋しき人の面影をさそふたよりの春風もがな
(石清水物語~「中世王朝物語全集5」笠間書院)

過かてによその梢をみてしより忘れもやらぬ花の面かけ
見てしよりわすれもやらぬ面影はよその梢の花にや有らん
散もそめす咲も残らぬ俤をいかてかよその花にまかへん
(鳥部山物語~バージニア大学HPより)

女みこにかよひそめて、あしたにつかはしける 大納言清蔭 
あくといへはしつ心なき春の夜の夢とや君をよるのみはみん 
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより) 

女のもとより帰りて、あしたに遣はしける み山隠れの宰相中将
見るほどもなくて明けぬる春の夜の夢路にまどふ我が心かな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

入道二品親王道助家五十首歌に、寄枕恋 前中納言定家 
おもひいつる契の程もみしか夜の春の枕に夢はさめにき 
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

(たいしらす) 伊勢 
春の夜の夢にありつとみえつれは思ひ絶にし人そまたるゝ 
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより) 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古典の季節表現 春 春風

2021年02月05日 | 日本古典文学-春

 初春松
万代のはしめの春としらせけり今朝初風の松にふくなり
(後鳥羽院御集~続群書類従15下)

けふといへは-まつわかみつを-むすへとや-つららふきとく-はるのはつかせ
(沙玉集~日文研HPより)

いはそそく-たるみのおとに-しるきかな-こほりとけゆく-はるのはつかせ
(正治初度百首_二条院讃岐~日文研HPより)

こほりとくはるのはつかぜたちぬらし霞にかへる志がのうら波 
(拾遺愚草~久保田淳「藤原定家全歌集」)

麗景殿女御の歌合の歌 平兼盛 
山川のみかさまされる春風に谷のこほりはとけにけらしも 
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館DBより)

はつ春の歌とて きのとものり 
水のおもにあや吹みたる春風やいけの氷をけふはとくらん 
(後撰和歌集~国文学研究資料館DBより)

長家卿家歌合によめる 源季遠 
いかなれは氷はとくる春風にむすほゝるらむ青柳の糸
(金葉和歌集(初度本)~続群書類従14上)

浅みとり染てみたれる青柳の糸をは春の風やよるらん 
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館DBより)

さほひめの-いとそめかくる-あをやきを-ふきなみたしそ-はるのはつかせ
(兼盛集~日文研HPより)

承久元年内裏百番歌合に、野径霞といふことを 順徳院御歌 
夕附日かすむ末野に行人のすけの小笠に春風そふく 
(風雅和歌集~国文学研究資料館DBより)

梅風
遠近の霞吹きとく春風にむすはほれたるむめかかそする
(草根集~日文研HPより)

 依梅知春
梅のはなさきにけらしも深山べの雪ま打ちいづる春の初風
 梅
春の花色の千くさの行へまでほのかに匂ふ梅のはつかぜ 
(春夢草~新編国歌大観8)

むめかえに吹はるかせをしるへにてはなのやとゝふうくひすのこゑ
(未詳私撰集~「古筆への誘い」国文学研究資料館編、平成17年、三弥井書店、30ページ)

榊ふくはつ春風にさそはれて千世をこめたるうくひすのこゑ
(後鳥羽院御集~続群書類従15下)

更けゆくままに、霞の迷ひなく澄み昇る月影に、物の音(ね)すごく聞きなされて、名にし負(お)ふ梅津の里の春風(はるかぜ)、香りなつかしう吹き迷(まよ)ふほど、艶(えん)なるにも、(略)
(恋路ゆかしき大将~「中世王朝物語全集8」笠間書院)

きさらぎのころそらの気色のどやかにかすみ渡りてゆるらかに。吹春風に軒の梅なつかしくかほり来て。鶯のこゑうらゝかなるもうれはしき御心ちには物うかるねにのみきこしめしなさる。
(増鏡~国文学研究資料館DBより)

比はきさらぎ十日餘の事なれば、梅津の里の春風に、餘所の匂もなつかしく、大井河の月影も、霞にこめて朧也。
(平家物語~バージニア大学HPより)

建仁二年三月、和歌所にて六首歌めしける時、春歌 従二位家隆 
桜花ちりかひかすむ久かたの雲ゐにかほるはるの山かせ 
(新千載和歌集~国文学研究資料館DBより)

夕べの雨も吹く春風もなほ見る人からに分きける心の色にや、ほかの梢よりはにほひことなる花の錦も、ただ遠方此方(をちこち)にかひなき御ながめにて、雲居に馴れし春の恋しさ、南殿の桜の盛りには、必ず上の御局にて見せさせ給ひしものを、など思(おも)ほし続くるに、(略)
(いはでしのぶ~「中世王朝物語全集4」笠間書院)

たちまがふ霞ばかりは払ふともはな吹きのこせ峰の春風
(光経集)

花の歌の中に 藤原為道朝臣 
桜はなよきてと思ふかひもなく此ひともとも春風そ吹 
(新後撰和歌集~国文学研究資料館DBより)

大空におほふはかりの袖もかな春さく花を風にまかせし 
(後撰和歌集~国文学研究資料館DBより)

(略)若宮、
  「まろが桜は咲きにけり。いかで久しく散らさじ。木のめぐりに帳を立てて、帷子を上げずは、風もえ吹き寄らじ」
  と、かしこう思ひ得たり、と思ひてのたまふ顔のいとうつくしきにも、うち笑まれたまひぬ。
(源氏物語・幻~バージニア大学HPより)

亭子院歌合に 延喜御製 
はる風のふかぬ世にたにあらませは心長閑に花はみてまし 
(続後撰和歌集~国文学研究資料館DBより)

(略)春の夕暮に、山々を見てあれば、折しも春風に、桜の花が散りかゝる、ちりちりはつと花の散りたるは、空に知られぬ雪かと見えて面白や、(略)
(岩波文庫「松の葉」より「春風」)

高砂の。 松の春風吹き暮れて。 尾上の鐘もひびくなり。
(謡曲「高砂」~バージニア大学HPより)

千鳥鴎の沖つ浪。ゆくか歸るか春風の。 空に吹くまでなつかしや。空に吹くまでなつかしや。
(謡曲「羽衣」~バージニア大学HPより)

怪しぶことなかれ紅巾(こうきん)の面(おもて)を遮(さしかさ)いて咲(わら)ふことを 春の風は吹き綻(ほころ)ぼす牡丹の花
(和漢朗詠集~岩波・日本古典文学大系)

(延喜六年正月)廿一日乙亥。内宴於仁寿殿。題云。春風散管絃。
(日本紀略~「新訂増補 国史大系11」)

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「春風の〔枕詞〕」用例

2021年02月04日 | 日本国語大辞典-は行

 「春風の」という枕詞には「春風が吹く意で、「吹く」と同音の「拭く」や、地名「吹上」にかかる。」という語釈があります。日本国語大辞典用例よりもさかのぼる和歌用例があります。

雲の上にちりそまかへる春風の吹あけの浜の梅の花かひ
(巻第二百六十四・出観集)
『群書類従・第十五輯(訂正三版)』1987年、347ページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「野面」用例

2021年02月03日 | 日本国語大辞典-な行

 「野面(のづら)」という単語の「野原の表面。野原。」という語釈の用例は、日本国語大辞典では1800年代ですが、もっとさかのぼる用例があります。

をしなへて野面ににほふ梅よりも宿のかきねを先はとはなん
(巻第百七十八・文治六年女御入内御屏風和歌、二月、梅)
『群書類従・第十一輯(訂正三版)』1993年、432ページ

旅衣けふは野づらに宿とひぬあすはいかなる山路くらさむ
(飛月集・216)
『新編国歌大観10』1992年、845ページ

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする