亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ポピュリズム(大衆迎合主義)としてのBrexit

2019年04月03日 23時27分24秒 | 国際情勢
4月12日のBrexitの期限までカウントダウンが始まる中で、日本時間の本日早朝にメイ英首相は離脱期限のさらなる延長をEU側に求める意向を表明した。先行してEUは4月10日にEU首脳臨時会合を開く予定を示していたので、このスケジュールに沿った動きだろう。メイ首相の意向は、秩序立った離脱を確実にすることが目的の延長ゆえに、短期の延長としている。いずれにしても既にEUと英国間では、離脱合意案が出来ているわけで、それが承認されれば足元の騒動は直ぐに収まり、移行期間に突入ということになる。ポンドは急騰し、モヤモヤが晴れることで、米国株式は主要指数はそろって過去最高値を更新ということなんだろう。

ただし現実は、「合意なき離脱」は避けたいものの国内の合意形成ができず長期の延期という可能性が高い。この長期の延長が曲者で、EU側は不安定な時期が続くことになり欧州経済に悪影響を及ぼすとして反対論が台頭している。当然だろう。「合意なき離脱」となった場合でも、EU側は英国に対し未払いの分担金の清算を求めるとしている。そもそも今ある合意案に沿って合意するとしても、2020年末までの移行期間があるわけで、それまでの分を含め分担金は総額390億ポンド(約5兆7000億円)と見積もられている。合意なしで出て行く場合も、支払えと。このいわゆる「手切れ金」問題も、控えている。再投票に反対しているメイ首相にしてみれば、再選挙の結果、残留意向が多ければ1回目の投票で示された民意を無視することになる。

そもそもこのBrexitだが、随分変わって来たとはいえ階層社会の英国にあって、労働者階級とされる人々は選挙に際して、自分たちの意見などどうせ通らないとばかりに、投票率は低かったらしい。オックスフォード大学のエバンズ教授のインタビュー記事を読んだが、英労働党が旧来型の労働者階級に依存しなくなった90年代にその傾向が高まったとのこと。ところが2016年のBrexitの賛否を問う国民投票は、疎外された人たちが声を上げる絶好の機会になったとされる。議会選挙と違い自分の1票は必ず反映されるという点が動機になり投票率が高かったとのこと。その結果決まった離脱に対しイエスという判断は、重みがある。むしろ決定をいつまでも実行に移せない政府に対する不満や懸念が溜まってきている。彼らの感覚からは、再投票などおかしいということになる。民意を実行に移すのが、民主主義の正しいあり方ということに。

ところでトランプ大統領によるFRBパウエル議長攻撃が激しさを増している。ここまであからさまではないにしても、以前は政権のFRBへの介入といったことは、あったのだろう。この30年ほどはなかった、あるいは目立たなかったことから、当然のことのように受け止められていた中銀の独立性が揺らぐ危機。


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