ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

北の大地の紅葉 あれこれ

2024-11-23 12:42:08 | 北の大地
 1週間程上京し、先週末に帰ってきた。
新千歳空港に着陸する時、
眼下には、山すその広大な唐松林が、
太陽光を受けて橙色に染まっていた。

 どうやら、その美しさに見とれていたのは、
私だけではなかったようだ。
 「ねぇ、見た。唐松の紅葉。
やっぱり北海道よね。すごいね!」
 そんな声を、航空機からの出口付近で聞いた。
 
 北海道民になって、12年だが、
その声に、自然と嬉しくなってしまった。

 さて、随分と冷え込むようになった。
1週間ぶりの我が家のジューンベリーも、多くの葉を落としていた。
 周りの山々も紅葉を終え、稜線の木々も落葉した。
すっかりと稜線が透けて見えるまでになっていた。

 まもなく本格的な冬将軍の到来だ。
その前に、少々北の大地の紅葉に想いを馳せてみたい。


 ① リアウインドウに舞い上がった橙色 

  落葉キノコは唐松林にしかない
  その唐松は針葉樹なのに
  橙色に染まり落葉する
  道は細い橙色におおわれ
  風までがその色に舞う
  そこまで来ている白い季節の前で
  私が見た
  北国の深秋の一色

 上記は、当地に居を構えた翌年・2013年の
年賀状に載せた詩『微笑』の一節である。
 
 ゴルフ場を出てすぐの道は、
両側とも背の高い唐松林が続いていた。
 その舗装道路が、橙色になった唐松の葉で覆われていた。
西陽を背に、ハンドルを握りながらそこを通った。

 ふとバックミラーで、リアウインドウを見た。
すると、車が通過した勢いで唐松の落ち葉が舞い上がり、
時にはミラーの一面が橙色に変わった。

 随分と長いことその舞は続いた。
初めての光景に、何度も何度もバックミラーに目がいった。
 私一人が、得をした気分になった紅葉のワンカットであった。

 
 ② 思いがけない眼下の紅葉

 いつかは登ってみようと思いつつ、数年が過ぎた。
秋を迎えてすぐ、
「この時期を逃したら、また1年持ち越しになる」
と思い、紋別岳登山を決めた。

 登山靴に昼食の入ったリックを背に、
家内と自宅を出発した。
 近所のご主人がたまたま雑草刈りをしていた。

 私たちのスタイルを見て、不思議そうな顔をした。
「どこへ行くんですか?」
 「紋別岳登山に挑戦してきます。
登ったことありますか?」
 「ないです。山は見るだけ。気をつけて」

 息子くらいの年齢の方だ。
なのに見るだけとは、勿体ない。
 そんな思いを笑顔で隠して別れた。

 地元では『東山』と呼ぶ方が多いが、
その峰の連なる姿は穏やかで、いつ見てもほっとする。

 だから、さほど苦労なく登れると思っていた。
ところが意外だった。
 急傾斜の登山道が続いた。
「山は見るだけ」が合っていたかもと少し悔いた。

 しかし、山頂付近の縦走路まで登り着くと思いは一変した。
そこはもうすっかり秋で、紅葉の真っ盛りだった。

 着いた先にあったのは、簡単には踏み込めない奥深い峰峰だった。
眼下のその1つ1つの山が、すでに赤や黄色に色づき、
壮大な秋色に染まっていたのだ。
 それを見るための、登山ではなかった。
予期しない景観だけに、インパクトは強かった。
 「見るだけ」の人では、この素晴らしさは味わえないと
息を弾ませながら微笑んだ。


  ③ 「だけど 秋だもの」 
 市内の大きな通りの両側は、どこも街路樹がある。
それが、通りによって樹木の種類が違うのだ。
 従って、木の形状、大きさが違い、通りの趣を変えている。
当然、紅葉も違う。

 今年、特に目に止まったのは、山法師の並木だ。
濃い赤の紅葉が、通りの両サイドに並び、
例年以上の鮮やかさだった。

 そして、毎年のように私の足を止めるのが、
伊達インター通りと青柳通り交差点だ。
 ここに立ち、インター通りを見ると、
両側には、黄色くなった銀杏が立ち並び、
歩道も車道も黄色で染まる。

 そして、同じ所で向きを変え,青柳通りを見るとそこは楓の街路樹で、
赤を基調としてグラデーションで飾られる。
 まさに,天然のイルミネーションなのだ。

 両方の樹木とも年々成長し、ボリュームを増していく。
それを思うと、来年がまた楽しみになるのだ。

 さて、数年前になる。
秋を迎え、1年1年変化し、
そして1日1日進む当地の紅葉の素晴らしさを
挨拶替わりに話題にしたことがあった。

 すると、地元生まれで地元育ちのその方は、
やや不思議そうな表情を浮かべ、
 「そうですか。そう言われると確かに綺麗かも。
だけど、秋だもの、毎年のことでしょ!」

 私は、返す言葉がなかった。
以来、紅葉の時期になると、その衝撃を思い出す。
 そして、いつまでも心豊かでいようと自分に誓うのだ。




     やっと『庭じまい』完了  
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新聞のコラム欄から

2024-11-02 11:03:29 | 思い
 新聞の購読者が少なくなっていると言われて久しい。
今は、情報の入手はスマホで十分である。
 なのに、朝日新聞、北海道新聞、室蘭民報の3紙が、
毎朝、郵便受けに届く。
 スマホの情報を信用していない訳ではない。

 私は、朝日新聞の『天声人語』と『折々のことば』のコラムを、
毎日楽しみにしている。
 家内は、もっぱら北海道新聞の愛読者である。
そして、室蘭民報は土曜日の文化欄に、
私が所属している『楽書きの会』同人のエッセイが掲載される。

 3紙の購読にはそれぞれの動機があるが、
時々、どれか1紙を止めようと話題になるが、
いつも2人の合意ができず、保留になる。
 無駄遣いをしているようで、どうも始末が悪い。

 さて、私が楽しみにしているコラム欄だが、
この半年の間で、強く心に残った記事を紹介する。


  ◎8月3日『天声人語』

  パリ五輪の3日目、柔道女子
 52㌔級の1回戦。開始から45秒
 後、モザンピークの選手を相手
 にきれいな投げ技が決まった。
 その瞬間、マリアム・マハラニ
 選手(24)は拳を握り、泣きそう
 な顔で喜びをかみしめた。インドネシア
 代表の柔道選手が五輪で勝利したのは、
 初めてだった▼ラニの愛称で呼ばれるマ
 ハラニ選手を支えてきたのは、実は日本
 人の指導者たちだ。その一人、安斎俊哉
 さん(64)は10年前、ジャカルタの柔道場
 で「速さと根性」が際立つラニに、ピン
 ときた。鍛えれば、いけるかもしれない
 ▼安斎さんは1988年、国際協力機構
 (JICA)が初めてインドネシアへ派
 遣した青年海外協力隊の一員だ。以来、
 立場が変わっても同国で柔道指導を続け
 ている。これまで7人の代表を五輪へ送
 り込んだが、一度も勝てなかった▼「五
 輪で1勝」は、インドネシア柔道連盟に
 とっても悲願だった。ラニの可能性に賭
 け、安斎さんらの協力で何度も日本の大
 学などへ「出稽古」に送り込んだ。この
 2年は五輪出場に必要なポイントを得る
 ため、国際大会にも派遣。大陸枠に滑り
 込んだ▼ラニは2回戦で、準優勝したコ
 ソボの選手に一本負けした。「すごく速
 くて防御できなかった」。次の五輪を目
 指し、稽古のために翌日の便で帰国した
 ▼パリにいるのは、メダル獲得の大きな
 期待を背負う「スポーツ大国」の選手ば
 かりではない。大舞台で控えめな目標
 に挑む選手らを、国籍が異なる指導者
 が地道に支えていることもあるのだ。

 * インドネシアのラニ選手に限らず、
各国五輪選手の一人一人に、
きっとかけ替えのないドラマがある気がする。
 テレビ映像とは異なり、
このような文面を読むと、心への刻まれ方が違う。
 特に、国籍が異なる地道な指導者・安斎俊哉さんの、
インパクトが凄い!
  

  ◎6月11日『折々のことば』  
 
 僕がもたもたしていると、パッとやって
 くれるでしょう。あれは、やめてもらえ
 ないかな。
                堀田力 
  脳梗塞で倒れ、視力や記憶の一部を
 失った元検事の福祉事業家は、機能回
 復に取り組む中、至れり尽くせりの世
 話をしてくれる妻に一つだけ、注文す
 る。相手が起きようとした時、すかさ
 ず手を添えるのが看護、起ききれず後
 ろに倒れる寸前に手で支えるのか介護
 だと聞いたことがある。婦人公論」4
 月号での妻・明子さんとの対談から。

 * 私の地域にグループホームがある。
自治会長として、そこの運営推進会議に隔月で出席している。
 利用者さんの様子の報告があり、
それを受けて職員への要望や助言などをするのが主な目的である。
 私は、地域とのパイプ役としての参加であり、
介護については全く門外漢である。
 だか、この一文で介護の難しさを知った。
ご苦労に頭が上がらない。


  ◎9月 1日『折々のことば』

 がんがどの段階で発見されるかも運なら
 ば、ベストフィットの専門家にかかるこ
 とができるかどうかも運かもしれません
                仲野徹
  自分のたちを知る人であれば、微か
 な異変にも気づいてもらえそう。診察
 室でも、仕事や家族のことを楽しそう
 に聞いてくれる医師がいい。昔、私が
 早期発見で命拾いしたのも、あんな医
 者嫌いがこの程度のことでわしとこに
 来るのはおかしいと、老医師が訝しん
 だから。ついてたのか。医学者の『こ
 わいもの知らずの病理学講座』から。

  * どんな時にどんな医師に出会うかは運だと言う。
筆者も経験から「ついていたのか」とまで。
 私も、同様の経験をしている。
幸運に恵まれた。
 特に2人の名医との出会いが、今の健康に繋がっている。
詳しくは、本ブログ・16年4月29日『医療 悲喜こもごも』に記した。


  ◎9月14日『折々のことば』

 なんだかうまくいったなとおもうことは、
 全部、つらい思いをしたあとだった
               小田和正
  だから「つらいことは信用できる」
 とシンガー・ソングライターは言う。
 でも無理はしていない。無理しないと
 いうのは楽をすることではない。これ
 までずっと自分に負荷をかけてきた。
 70歳を迎える今もステージではキーを
 下げずに歌い、走る。そのつど駆け抜
 け、後で繕ったりしない。「楽したもの
 は信用できない」からと。2017年
 の発言。『時はまってくれない』から。

  * あの素敵な高音の歌声を生で聴いてみたかった。
実現していない。
 おそらく叶わないと思う。
でも、彼の心情に触れ、
ますますコンサートへ行きたくなった。
 「辛い思いの先に,成功体験がある!」
彼のCDを聴くたびに、これからの私の励みになると思う。




      ジューンベリーの秋色
                 ※次回のブログ更新予定は、11月23日(土)です。
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秋 は 食 欲 !!

2024-10-26 10:55:02 | 北の湘南・伊達
 休日のお昼時、久しぶりに伊達観光物産館へ行った。
駐車場は空きスペースが少なかった。
 札幌や苫小牧それに旭川ナンバーの車まであり、
当地の特産品が人気なようで、嬉しくなった。

 物産館では、10月になると、
伊達産ジャガイモ、玉ねぎ、カボチャの3点セットの
地方発送が始まる。

 この日は、その申し込みが目的だった。
首都圏の友人と息子の計5軒へ発注した。
 当地の秋の味覚だ。
「きっと美味しいに違いない!」。
 喜んでもらえたらいいなぁと願った。

 さて、1週間後にそれぞれから、
お礼のメールが届いた。
 中には、肉じゃがの写真までそえて・・・。
「みんな、大歓迎!」

 私たちも早々、ジャガイモを茹でた。
家内はバターをのせ、
私はと言えば、「そんな食べ方する人いないよ」と言われても、
砂糖で甘みを加え、朝食のテーブルへ・・・。
 期待通り、「うまい!」。
黙々と食べる。
 やっぱり、秋は食欲を誘う。
今秋の味覚から、3つ記す。

  ① 秋刀魚
 2、3年前から、秋の鮮魚売り場に秋刀魚を見ることが少なかった。
あっても、庶民の味ではなく高値がついていた。
 「こんな高いんじゃ・・!」
秋刀魚を手にしなかった。

 ところが、今年は秋口から秋刀魚を鮮魚売り場で見た。
価格も、昨年までとは違った。
 庶民の値だった。

 どれも、小ぶりで細かったが、
はたして味はどうなのだろう。
 姿かたちから、若干不安があった。

 でも、大きそうなのを4匹袋につめた。
「まずは、煮て食べてみよう」。
 私の提案に、家内も同意した。

 1匹を2つに切って、
8切れの秋刀魚の煮付けが、夕食に並んだ。
 
 実に久しぶり、秋の味だった。
秋刀魚の美味しさを思い出した。
 「やっぱり、秋は秋刀魚だね」
そう言いながら、箸が進んだ。
 そして、「今度は塩焼きに大根おろしをそえて」
と決めた。

 しばらく日をおいて、秋刀魚の塩焼きが、
食卓にのった。
 皿の横には、大根おろしも。
骨をとった秋刀魚の身にそれをのせて食べた。

 これぞ、まさに秋刀魚だった。
もう少し大ぶりであってほしいが、
美味しさに大差はなかった。

 懐かしさとともに、
「やはり秋刀魚は、塩焼きがいい!」
 楽しみが増えた。

  ② りんご
 秋は次々と美味しい果物が店先に登場する。
桃、ぶどう、梨、りんご、柿・・・。
 すぐに手が伸びそうだが、
どうもりんごだけは、子供の頃からさほど好まなかった。

 ただし、アップルパイは別だ。
どんな洋菓子よりも好きで、
当地のK菓子補のその美味しさは最高。

 そのりんごについてだが、
今年の秋は、我が家の常温庫にいつも数個がある。

 嬉しいことに、秋になると、
数日おきに玄関のチャイムがなった。
 急いで玄関ドアを開けると、
レジ袋に入った野菜や果物を掲げ、
「少しだけど、食べて・・・!」
ご近所さんが笑顔で立っている。

 どうしたことか、
今年はりんごを頂くことが多い。
 
 「ちょっと、余市まで行ったので・・」
「親戚から頂いたリンゴだけど・・・」
 「友だちと旅行で寄った道の駅で買ったから・・」
頂いた袋には、3,4個の真っ赤なりんごが入っている。

 それを毎朝、食べやすく切って食卓の真ん中に置く。
2人分のデザートである。
 私の先入観は、なかなかそれに手が伸びない。
ようやく一切れを食べると、
次に手が伸びないのがいつものこと・・。

 ところが、その朝のりんごは違った。
しぶしぶ食べた筈なのに、自然と次の一切れに手が伸びた。
 特別美味しいと感じた訳じゃなかったが、
もう一切れが欲しかった。
 そんな欲求が、その次も続いた。

 家内は黙って、りんごに手を伸ばす私を見ていた。
そして、皿に一切れも無くなってから、
「私の分まで全部食べて、どうしたの!?」
と、笑った。

 確か、その日のリンゴは七飯町産のものと聞いた。
当地からは、やや遠いところである。
 来年の秋、また機会があるといい。
「ええ!・・・」
 お裾分けに期待するなんて・・。
「まったく!」と私に呆れた。

  ③ 新そば
 市内には、美味しいおそば屋さんが何軒もある。
近隣市町村から、わざわざ出向いてくる人気店も・・。

 ここ数年、私はいつも同じ店で食べている。
それも、『鴨せいろ』以外を注文することはない。
 大好きな味である。

 新そばの季節を迎えた。
その店のご主人は、全国的に有名なそば店で修行し、
当地で店を持った。
 そばに、正面から向き合っているように思えた。
この時期になると、いち早く新そばにする。

 混雑を避け11時の開店にあわせ、
店の駐車場に入った。
 のれんが掛かっていない。
家内が、店に入り確認をした。
 営業しているとのことだった。
珍しく、開店時にやや混乱しているようだった。
 
 店は、4人掛けのテーブル席が4つと、
奥に10数人用の小上がり席1つあるだけ。
 
 店に入ると、先客がその小上がり席にいた。
小さな子ども連れで、大きな声の中国語が飛び交っていた。

 そこから一番遠い席に座ったが、
話し声から小上がりは満席のようだった。
 こんな小さなおそば屋もインバウンドかと驚いた。

 店員さんが、注文を受けにきた。
いつもと同じにした。
 「団体さんが入ったので時間がかかります。
お許しください」
 店員さんは、忙しく戻っていった。

 その後、次々と席は埋まったが、
奥の小上がりからは、大声の中国語が続いていた。
 でも、その席に注文したおそばが運ばれると、
店内は、いつもの落ち着きを取り戻した。

 注文から30分が過ぎた頃、
私たちのそばが、やっと届いた。

 新そばの香りがした。
しかも、いつもより太切りで、より美味しく感じられた。
 店主のそばへの気遣いが伝わってきた。

 私たちが食べ終わるころに、
小上がり席も再び賑やかになった。
 
 観光立国に日本中が移行している。
さて、彼らはこの店のそばの美味しさが分かっただろうか。
 新そばの味は、どうだったのだろう。 

 私には見当も付かない問答に、困り果てながら、
秋色に染まり始めた帰路を進んだ。




      街路樹の柿 たわわに
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給食でしか・・無性に食べたく

2024-10-19 10:37:08 | あの頃
 就寝前のひと時、テレビのチャネルを回していたら、
バラエティー番組で学校給食が話題になっていた。

 「某居酒屋のメニューにある『チリコンカン』は、
学校給食で食べた懐かしい味だ」と言う。
 急に興味がわいた。

 「チリコンカン・・・?」
私の記憶にはない献立名だった。
 どうやら豆料理のようで、
牛肉、大豆、玉ねぎなどをトマトと一緒に煮込んだものらしかった。
 
 番組では、それを美味しそうに食べる居酒屋の場面が
紹介されていた。
 少しお酒がまわったお客さんが、
チリコンカンを前に言う。

 「これ、給食でしか出たことがなかったけど、
昔、よく学校で食べました。
 人気がありましたよ。
あの頃も美味しかったし、今も時々食べたくなります!」。

 さて、私の給食体験だが、小学校4年から始まった。
当時は、いつもコッペパンと牛乳(脱脂粉乳だったかも)、
それにおかずが1品ついた。
 給食が美味しかったイメージはない。
でも、いつもみんなと同じ物を食べることができた。
 それがすごく嬉しかった。

 教職についてからは、ずっと給食のお世話になってきた。
ふと、テレビ番組のあの彼のように、
「給食でしか食べたことがなかったものってあっただろうか?
今も食べたくなる給食ってあるだろうか?」
 現職の頃に想いを巡らせてみた。

 
  ① 給食でしか食べたことがなかったもの

 まず上げたいのは、『ミネストローネ』だ。
最初に食べたのは、ベテラン教員になってからだ。

 「ミネストローネ」と献立表にあっても、
どんな物か想像できなかった。
 気さくな栄養士さんだったので、前の日に訊いてみた。 
 
 すると、イタリア料理で綺麗な色のスープだと言った。
その日の朝、同じ説明を子ども達にし、
「楽しみだね」と言った。
 本当は、私が一番楽しみにしていた。

 トマトの色だとも知らずに、
具だくさんの赤いスープの美味しさに驚いた。

 今は、たまたま入ったレストランで、
本日のスープが「ミネストローネ」だったりすると、
宝くじにでも当たったような気分になる。

 次は、デザートとして出てきた果物、『ビワ』である。
長野県や千葉県が主な生産地らしいが、
それまで見たことのないフルーツだった。

 きっと知識として、名前は知っていたと思うが、
ビワとの初対面は、担任をしていた教室でだった。
 どうやって食べるのか、知らなかった。

 子ども達が、手で器用に皮をむくのを見て、
真似してむいた。
 その後も盗み見て、食べ方を知った。

 食べ慣れずに、果汁がこぼれ落ちそうになり、
子ども達に気づかれないようにと緊張して食べた。

 真ん中に予想外に大きな種があった。
慌てて、私のだけだろうかと子ども達の種を見回した。
 そんなことがあったけど、上品な甘さが一度で好きになった。

 今は、当地でも春にスーパーのフルーツコーナーに、
箱入りのものが並ぶ。
 高価な値が付いている。

 「これじゃ、この辺りの学校では、
給食に出ることはないだろう」
と思いつつ、私も素通りしている。

 最後は、冷凍みかんだ。
冬を迎える頃から春まで、よく普通のみかんが出た。
 時季的には珍しいことではなかった。

 しかし、いつからだろうか。
みかんの前に、冷凍みかんの日が時々あった。

 給食の配膳をしている間に、冷凍が徐々に解けだした。
給食のお盆が濡れ、パンにその水が浸みることがあり厄介だった。
 
 皮は柔らかくてむきやすい。
一房一房も食べやすかった。
 でも、どうして冷凍みかんが出るのか不思議だった。
 
 時折、思い出してスーパーで探してみたが、
冷凍みかんが人気商品だとは思えなかった。
 今も、やっぱり不思議なまま冷凍食品のケースを覗くことがある。


  ② 今も食べたくなる給食

 ネットに、こんな触れ込みのアンケート調査があった。
『ときどきふと思い出して、無性に食べたくなる給食ってありますよね。
なかでも特に好きだったメニューが人それぞれあるかと思うので、
みんなの “推し” をアンケートで調査してみました』。

 そのベスト3は、1位『揚げパン』、2位『わかめごはん』、
3位『カレーライス』であった。
 どれも、十分に納得できた。
その1つ1つは、私にとっても『今も無性に食べたくなる給食』である。

 他にも食べたくなる給食がある。
その中から、2つを記す

 1つ目は、『煮込みうどん』である。
特に低学年の場合だが、
給食の配膳を子どもだけに任せることができないメニューであった。
 煮込みうどんは、担任が給仕しても大変だった。

 苦労してやっと全員に取り分けて、食べ始めるのだが、
いつ食べても、このうどんは本当に美味しかった。

 学校によって、またその時々によって、
煮込みの具材も味付けも違った。
 それでも、具だくさんでその味がよくうどんにしみ込んでいた。
給食でしか食べられないうどんだった。

 ある時、あまりにも美味しかったので、
栄養士さんに、どこの製麺所のものか尋ねた。
 返ってきた答えは、
「普通の業務用冷凍うどんです」。
 これには、ビックリした。

 2つ目は、『おでん』だ。
 これも、配膳が難しかった。
何種類もの具を均等に取り分けるのだが、うまくいかない。
 だから、「だいたい同じにするけど、全部は同じにならないよ」
と、納得させてから給仕した。

 高学年になると、みんなが何度も当番を経験していたので、
その苦労がわかっていた。
 不満を言う子などいなくなった。

 このおでんだが、煮込みうどんと同様で、
色々な具の旨みがしみて、実に美味しいのだ。

 特に、大根は思い出すだけで、唾液がでてしまう。
どこのおでん屋にも負けない美味しさだった。

 もう一品、忘れられないのが昆布だ。
固く結んだ昆布だがすごく柔らかく、
普段は好まない具材だが、喜んで食べた。
 ご飯まで、いつも以上に美味しかった。




     牧草ロール 着々と冬支度 
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D I A R Y 24年9月

2024-10-12 10:50:53 | つぶやき
 どうしても優先したいことがあり、
先週は予告もなくブログをお休みした。

 この2週間で、めっきり秋が深まった。
それを象徴するかのように、日の入りの早いこと。
 5時をすぎると暗くなり、街路灯が点灯する。
その早さはどんどんと加速していく。
 毎年のことだが、
この時季になると寂しさを覚えるのは私だけだろうか。

 さて、9月から2つを記す。
残暑で、まだエアコンの恩恵を受けていた時だった。
 今では、それ自体が懐かしく思える。


  9月 某日 ①
 近隣14自治会で『中央区』という連合組織を作っている。
その連合を基にした社会福祉協議会(中央社協)がある。

 前自治会長がその副会長であったため、
私が引き継ぐことになり、昨年度からその役を務めている。
 多くの企画運営は、
手慣れた会長と事務局長の2人で進めてくれる。
 大助かりである。

 ところが、今年度は突然困りごとが発生した。
臨時三役会が招集になった。

 毎年、『お楽しみ昼食会』を実施していた。
これは、75歳以上の単身者を対象に希望をつのり、
昼食をとりながら、楽しい時間を過ごそうと言うイベントである。

 コロナ禍での中止はあったが、昨年度までは、
当地では唯一ディナーが楽しめるRホテルで行っていた。
 ところが、7月にそのRホテルが突然倒産した。

 例年50人以上の参加者がある。
その人数に飲食を提供する会場が市内からなくなったのだ。
 イベントの中止もテーマになったが、
ともかく今年は何とかして、実施しようと決めた。

 よく会議などで利用する『市民活動センター』の多目的室で、
お弁当とアルコール以外の飲み物で行うことにした。

 今回実施してみて、あまりにも参加者が少なかった場合は
来年度からの実施は見送ろう。
 そんなことも考えた。

 ところが、参加募集をすると例年より参加が多かった。
会場は決して広くない。
 ホテルに比べ、食事もイマイチ。
ところが、それが高齢者にはよかったらしい。

 取り寄せたお弁当が、口にあった。
「美味しい」の声が、聞こえてきた。

 そして、こんな声も、
「ホテルなら着ていく服に困るけど、
ここなら気楽にこれて、いいよね!」

 それを裏付けるように、
会場には、和気あいあいとした雰囲気があった。

 「これも、またいいもんだ!」
私もそう思ってしまった。


  9月 某日 ②
 今年度2回目の学校運営協議会があった。
最初に、午後の授業を見せてもらった。
 低学年はすでに下校していたので、
3年生以上の教室を回った。

 学校は、今年度から新校舎になった。
4階建てで、中央に広い廊下があり両側に教室がある造りだった。
 エアコンも設置したと聞いた。

 最初の驚きは、廊下の天井にエアコンがあったことだ。
廊下の冷気を教室に送るシステムらしいのだ。
 教室の窓側の席は、さほど涼しくないように思えた。

 設置方法に違和感があった。
各教室に設置すればいいのに、「どうして?」。

 さて、授業だが学年が進むにつれ、
タブレットを使った学習展開が目についた。
 子供らは、学習ソフトからの情報を基に、
タブレットと向き合い、それぞれのペースで学習を進めていた。

 先生は、タブレットの載った机間を巡視しながら、
専ら明るく励ましの声をかけていた。
 学習につまづいている子を見つけ、
その子への個別指導をする姿を、
私が見ることはなかった。
 そもそもタブレットの情報で、
つまづきに気づくのは困難だと思った。

 それよりも、
「一人一人の子どもの理解には差があります。
 だから、一斉に同じように学習を進めること自体に無理があるのです。
一人一人の個別の学習を援助することが重要なんです」と、
学習塾などで聞きそうな理念が、学校に持ち込まれているように思えた。

 私は、腑に落ちなかった。
「きっと私が時代遅れなのだろう!?」
 必死に考えてみたが・・・「無理!」。

 さて、大きな戸惑いがもう1つあった。
学校は、新校舎の完成と共に旧校舎を解体した。
 それによってできた更地を、駐車場にする工事が進んでいた。

 その駐車場予定地の片隅に、
学校の歴史を感じさせる『二宮金次郎像』と『校訓を刻んだ石碑』があった。
 それを撤去し、別の場所に設置するか、廃棄するか。
どちらかにしなければならないとのことだった。

 校長・教頭の2人は、工事業者から「どうすのか」と迫られていた。
撤去し廃棄するのは、簡単だった。
 移動し設置するには、それなりの工事費用が必要だった。

 いずれにしても、像と石碑をどうするかの計画がないまま、
工事は進んできたようであった。
 
 学校における歴史的な施設設備をどう扱うかは、
設置者にとって重要な問題である。
 それは工事計画を立案する上で欠かせない事項であるはずだ。

 それをせずに、工事途中でその措置を校長と教頭の2人に託すとは・・・。 
奇妙なことである。
 なんとも2人には「気の毒!」としか言えなかった。

 


         秋 深まる
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