▼ 各地から桜の便りが聞こえてくる。
テレビで満開の様子が中継され、
つい見入ってしまう。
画面に映る綺麗な桜が、
あの時のあのことを呼び戻してくれる。
誰も、みな同じではなかろうか。
それは、魅了する華やかさもあるが、
やはり満開の桜は、春到来の象徴である。
そのインパクトが強いから、
桜は、私たちの心に留まり続けるのだと思う。
▼ まずは、私に刻まれていることから、2つを記す。
あの頃、都内の多くの小学校では、
毎週月曜日の朝に、校庭に全校児童を集めて朝会が行われていた。
校長になって、初めての全校朝会のことだ。
前の週に始業式・入学式は無事に終え、
いよいよ学校は、この週から本格始動となる。
新任校長としては、
この朝会でのいわゆる『講話』が、仕事はじめと言えるものだった。
どんな話をしようか、前日まで迷った。
そして、校庭で満開を迎えていた桜を取り上げることにした。
以前に、このブログに載せたが、その日の話を、再現する。
* * * * *
すっかり春になりました。
今年は、いつもより春の訪れが遅かったようですが、
それでも、ここにきて暖かい日が続いています。
見てごらん。校庭の横にある5本の桜の木も、
今が盛りとばかりに満開です。
この時季が、春の一番美しい時ではないでしょうか。
今日は、桜についてお話します。
どんな花も、空に向かって、つまり上を向いて花が咲きます。
ところが、桜の花だけは、その木の下にいる私たちの方、
つまり下を向いて咲きます。
だから、木の下から見ても、一段ときれいなんです。
この桜ですが、15、6の種類があるそうです。
校庭の桜をはじめ、今咲いているのは、
ソメイヨシノという種類です。
これは、江戸時代の終わり頃、
江戸の染井町の植木屋さんがその苗を売り出したので、
この名がついたと言われています。
枝々についた桜の花が、その木をおおい隠すほどすごく、
その上、満開の花が散るときは、
まさに花吹雪という言葉があるように、一気で、
その様がいさぎいいのです。
それが、江戸の人々の気質によく合っていて、大人気となり、
たちまちの内に、江戸中に植えられたということです。
桜は、水はけのよい場所を好みます。
水気の多い沼や川の畔では、堤の上に植えると、
よく育ち、花の色もよいのです。
桜の名所と言われる、千鳥ヶ淵や上野公園の桜の木が、
大きく、花も美しいのは、
水はけのよい丘の上にあるからなのです。
同じ桜の花でも、春、早く咲くのと遅く咲くのとがあります。
彼岸桜は寒い年でも、
関東では2月の終わりには咲く、早咲き桜です。
遅く咲くのは、八重桜で、4月中旬から下旬に咲きます。
八重桜の本当の名は、里桜と言います。
里桜は、伊豆半島に自然に生えていたもので、
それが全国に広められたものだそうです。
日本からアメリカのワシントンに贈られ、
今では、毎年桜祭りでアメリカ中の名物になっているのは、
この里桜だそうです。
今日は、桜のいろいろについて、お話しました。
* * * * *
5分間程度だったが、
時に校庭の横で咲き誇る5本の満開の桜を見ながら、
朝礼台から私は精一杯、子ども達へ話しかけた。
そして、程よい緊張感の中で、
私の話を興味津々の目で聞く子ども達がいた。
その姿は桜以上にまぶしく、
今も思い浮かべることができる。
▼ もう5年も前になるが、
当時92歳だった義母と一緒に、
3人で、弘前城公園の桜を見に行った。
「開通した北海道新幹線に乗りたい。」
義母のそんな願いもあり、
新青森駅からはレンタカーで足を伸ばした。
お花見の旅行なんて、初めての経験だった。
若干、タイミングを逸したが、
広い城内のいたるとこにあった垂れ桜だけは、
まだまだ見ごろだった。
1台きりの人力車を呼び止め、義母と家内を乗せ、
見て回った。
途中、お城の大きな堀に近づくと、
舞い降りた花びらがその水面一面を被っていた。
桜色の『花筏』に、
3人とも時間も言葉も忘れてしまった。
「一期一会」の美しさだった。
桜と一緒に、親孝行の真似事をしていることに、
満たされていた。
▼ それにしても、当地の桜はまだ1ヶ月も先のことだ。
気門別川沿いの並木も、歴史の杜公園の木々も、
開花が待ち遠しい。
だが、それ以上に、今年こそと思う桜がある。
伊達カントリー倶楽部の14番ミドルホールだ。
ここには、レギュラーティーから100ヤード位のど真ん中に、
大きな木が一本、枝を広げて立っている。
ドライバーでしっかり打つと、
ボールはその木の頭上を越えてフェアウエーに落ちる。
しかし、少しでも打ち損ねると、
細い幹や枝に当たり、真下にポトリと落下するのだ。
木を避けて、左右へ打つと、
ラフどころか、斜面やバンカーへ飛んでいくことになるのだ。
とにかく、やっかいな大木なのだ。
3年前になる。
ラウンドを始めると、コースのあちこちで、
満開の桜が目に入った。
なのに、いつもと同じく余裕なく、
一途にボールを追っていた。
ところが、後半の折り返し、
14番ホールのティーグランドに立った時だ。
ドライバーを握ったまま、呆然と前方を見続けた。
真ん中のあの大きな木が、
その枝を全部隠した桜色に被われていたのだ。
その上、両サイドを囲む高い木立も、
ずっと奥まで満開の桜が連なっていた。
ミドルホールの全景が桜さくらなのだ。
いっこうに上達しないが、ゴルフキャリアは長くなった。
様々なコースで、クラブを振った。
しかし、ラウンド中に、
こんなすごい桜は、初めてだった。
いくつのスコアーでカップインしたのかは忘れた。
長いことその場にいたのだから、
きっと「ダボ」か「トリ」だったに違いない。
昨年は、あいにくコロナで機を逸した。
今年は、大木がまるごと桜色の頭上を、
見事なドライバーショットで攻略したい。
そして、胸を張って、桜色のフェアーウエーを進みたい。
後1ヶ月、その日が待ち遠しい。
池のほとりに エゾノリュウキンカ
※次回のブログ更新は4月17日(土)の予定です。
テレビで満開の様子が中継され、
つい見入ってしまう。
画面に映る綺麗な桜が、
あの時のあのことを呼び戻してくれる。
誰も、みな同じではなかろうか。
それは、魅了する華やかさもあるが、
やはり満開の桜は、春到来の象徴である。
そのインパクトが強いから、
桜は、私たちの心に留まり続けるのだと思う。
▼ まずは、私に刻まれていることから、2つを記す。
あの頃、都内の多くの小学校では、
毎週月曜日の朝に、校庭に全校児童を集めて朝会が行われていた。
校長になって、初めての全校朝会のことだ。
前の週に始業式・入学式は無事に終え、
いよいよ学校は、この週から本格始動となる。
新任校長としては、
この朝会でのいわゆる『講話』が、仕事はじめと言えるものだった。
どんな話をしようか、前日まで迷った。
そして、校庭で満開を迎えていた桜を取り上げることにした。
以前に、このブログに載せたが、その日の話を、再現する。
* * * * *
すっかり春になりました。
今年は、いつもより春の訪れが遅かったようですが、
それでも、ここにきて暖かい日が続いています。
見てごらん。校庭の横にある5本の桜の木も、
今が盛りとばかりに満開です。
この時季が、春の一番美しい時ではないでしょうか。
今日は、桜についてお話します。
どんな花も、空に向かって、つまり上を向いて花が咲きます。
ところが、桜の花だけは、その木の下にいる私たちの方、
つまり下を向いて咲きます。
だから、木の下から見ても、一段ときれいなんです。
この桜ですが、15、6の種類があるそうです。
校庭の桜をはじめ、今咲いているのは、
ソメイヨシノという種類です。
これは、江戸時代の終わり頃、
江戸の染井町の植木屋さんがその苗を売り出したので、
この名がついたと言われています。
枝々についた桜の花が、その木をおおい隠すほどすごく、
その上、満開の花が散るときは、
まさに花吹雪という言葉があるように、一気で、
その様がいさぎいいのです。
それが、江戸の人々の気質によく合っていて、大人気となり、
たちまちの内に、江戸中に植えられたということです。
桜は、水はけのよい場所を好みます。
水気の多い沼や川の畔では、堤の上に植えると、
よく育ち、花の色もよいのです。
桜の名所と言われる、千鳥ヶ淵や上野公園の桜の木が、
大きく、花も美しいのは、
水はけのよい丘の上にあるからなのです。
同じ桜の花でも、春、早く咲くのと遅く咲くのとがあります。
彼岸桜は寒い年でも、
関東では2月の終わりには咲く、早咲き桜です。
遅く咲くのは、八重桜で、4月中旬から下旬に咲きます。
八重桜の本当の名は、里桜と言います。
里桜は、伊豆半島に自然に生えていたもので、
それが全国に広められたものだそうです。
日本からアメリカのワシントンに贈られ、
今では、毎年桜祭りでアメリカ中の名物になっているのは、
この里桜だそうです。
今日は、桜のいろいろについて、お話しました。
* * * * *
5分間程度だったが、
時に校庭の横で咲き誇る5本の満開の桜を見ながら、
朝礼台から私は精一杯、子ども達へ話しかけた。
そして、程よい緊張感の中で、
私の話を興味津々の目で聞く子ども達がいた。
その姿は桜以上にまぶしく、
今も思い浮かべることができる。
▼ もう5年も前になるが、
当時92歳だった義母と一緒に、
3人で、弘前城公園の桜を見に行った。
「開通した北海道新幹線に乗りたい。」
義母のそんな願いもあり、
新青森駅からはレンタカーで足を伸ばした。
お花見の旅行なんて、初めての経験だった。
若干、タイミングを逸したが、
広い城内のいたるとこにあった垂れ桜だけは、
まだまだ見ごろだった。
1台きりの人力車を呼び止め、義母と家内を乗せ、
見て回った。
途中、お城の大きな堀に近づくと、
舞い降りた花びらがその水面一面を被っていた。
桜色の『花筏』に、
3人とも時間も言葉も忘れてしまった。
「一期一会」の美しさだった。
桜と一緒に、親孝行の真似事をしていることに、
満たされていた。
▼ それにしても、当地の桜はまだ1ヶ月も先のことだ。
気門別川沿いの並木も、歴史の杜公園の木々も、
開花が待ち遠しい。
だが、それ以上に、今年こそと思う桜がある。
伊達カントリー倶楽部の14番ミドルホールだ。
ここには、レギュラーティーから100ヤード位のど真ん中に、
大きな木が一本、枝を広げて立っている。
ドライバーでしっかり打つと、
ボールはその木の頭上を越えてフェアウエーに落ちる。
しかし、少しでも打ち損ねると、
細い幹や枝に当たり、真下にポトリと落下するのだ。
木を避けて、左右へ打つと、
ラフどころか、斜面やバンカーへ飛んでいくことになるのだ。
とにかく、やっかいな大木なのだ。
3年前になる。
ラウンドを始めると、コースのあちこちで、
満開の桜が目に入った。
なのに、いつもと同じく余裕なく、
一途にボールを追っていた。
ところが、後半の折り返し、
14番ホールのティーグランドに立った時だ。
ドライバーを握ったまま、呆然と前方を見続けた。
真ん中のあの大きな木が、
その枝を全部隠した桜色に被われていたのだ。
その上、両サイドを囲む高い木立も、
ずっと奥まで満開の桜が連なっていた。
ミドルホールの全景が桜さくらなのだ。
いっこうに上達しないが、ゴルフキャリアは長くなった。
様々なコースで、クラブを振った。
しかし、ラウンド中に、
こんなすごい桜は、初めてだった。
いくつのスコアーでカップインしたのかは忘れた。
長いことその場にいたのだから、
きっと「ダボ」か「トリ」だったに違いない。
昨年は、あいにくコロナで機を逸した。
今年は、大木がまるごと桜色の頭上を、
見事なドライバーショットで攻略したい。
そして、胸を張って、桜色のフェアーウエーを進みたい。
後1ヶ月、その日が待ち遠しい。
池のほとりに エゾノリュウキンカ
※次回のブログ更新は4月17日(土)の予定です。