▼ ずいぶんと日の出が早くなった。
その明るさに誘われて、久しぶりに早朝の散歩を楽しんだ。
伊達で、10回目の冬を越える日が近づいてきたが、
こんな大雪の冬は初めてだ。
この時季、いつもなら畑から地面が顔を出しているが、
まだ一面を雪が覆っている。
でも、散歩する歩道は、大方雪が解けた。
そろそろランニングも、
体育館のランニングコースとサヨウナラ。
沿道の草花や畑の作付けを見たり、
小鳥の鳴き声を聴いたりしながら、
わずかだが風を切る時間が始まる。
今年も元気で走れそう。
ワクワクしてきた。
なのに、春とは真逆なことで心が重い。
▼ コロナ禍で、職種によってはテレワークが定着してきたようだ。
次男の仕事ももっぱらテレワークで、出社は週1,2回でいいらしい。
想像もつかない私は、
「そんな仕事の仕方で大丈夫なの?」と、
不安げに尋ねた。
「やってみると、ずっとずっと効率がいいし、
毎日、電車に乗って出勤する必然は、元々なかったことに気づいたよ。
どうしても、会って打ち合わせが必要な場合は、
相手が出社する日が分かってるから、その日にこっちも行けば済むんだ」。
「でも、仕事って、みんなでワイワイガヤガヤとやるところがなくちゃ、
楽しくないだろう」。
「当然そんな時も必要だけど、それは時々あれはいいんだよ。
その他は全て、テレワークでできるんだ」。
理解できそうだが、なかなかイメージできない。
しかし、次男は週1の出勤を念頭に、
自宅を都心から離れた郊外の一戸建てに住み替える計画を練っていたようだ。
そこで、電話がきた。
その計画を報告しながら、一番気になっているが、
一番聞きにくい本題を、さり気なく切り出した。
「あのさ、まだまだ先とは思うけど、
この先、2人はどうするつもりでいるの。」
「最後まで、伊達にいるつもりだよ。」
「だけど、いつになるかわからないけど、
僕らがそっちへ行くわけには・・・。」
「ああ、その心配なら、要らないよ。
大丈夫、なんとかするから・・・。
だから、あなたたちは貴方たちのプランで、
転居を考えれはいいんだよ・・」。
その後、次男は「じゃ、そうするけど、いいんだね」と、
念を押し電話を切った。
私の返答に一片の迷いもなかった。
いつ訊かれても変わりはない。
しかし、我が子から初めて問われた内容が、
いつまでも心に残った。
「足下に、ヒタヒタと迫っている時間がある!」。
季節はもうすぐ春・・だが、沈みそう。
▼ 私の朝は、いつも朝日新聞「折々のことば」に、
目を通すことから始まる。
18日、執筆者・鷲田清一さんのこの小欄は、
ウクライナ侵攻の惨状を、思い起こさせるものだった。
『誰が誰の敵かと言っている場合か』の一文が、
心に刺さった。
転記する。
* * * *
誰が誰の敵なのですか
私たちはみな不死ではないのに
生きていてほしいんです
谷川俊太郎
誰が誰の敵かと言っている場合か。命は
露のように儚い。だから生きていて、兵士
も「兵士の靴が知らずに踏みつけた蟻」
も。その痛切な願いにさえも塩を擦りつけ
る戦争。詩「願い 一少女のプラカード」
から。テレビには今日も、とっさに横の老
人をおぶって駆ける人たち、幼児や犬を抱
きかかえて逃げまどう人びとの像が映る。
* * * *
同じ朝、テレビは、軍事侵攻が間近と言われる首都キエフで、
今もなお幼子3人と暮らす若い母親の現状を伝えていた。
恐怖の中、集合住宅の一角でインタビューに応じたその女性は淡々と。
「私は、ここに居ます。
どんな時だって、悪い人からここを守るのは私です」。
それを聞いたニュースキャスターは、
複雑な表情で、
「もし私なら・・、どうだろう・・・。
日本が大好きですから・・、
同じように守りたいと思う・・・」と。
その後も、テレビは途切れなくウクライナの悲惨な現状を、
映し出していた。
私はコーヒーカップ片手に、
眉を寄せながらそれを見続けた。
もう、それが日常に!
登場した専門家は、私の願いとは裏腹に、
「停戦に向けて打つ手はありません。
それよりもますます拡大することになると考えます」
と言う。
でも、あのキャスターに伝えたい。
「性急に何かを導き出すのは止そう・・」と。
それよりも、もうすぐ春・・だが、浮かれない。
無力な私。
でも、目を背けずに、今起きている現実を、
まっすぐに精一杯見続ける勇気を持ちたい。
春野菜入りのペペロンチーニを食べながらでもいい。
辛く切ない、悲惨な現実の1つ1つを、
胸にしっかりと刻みたい。
理不尽への膨らむ怒りを忘れずに過ごしたい。
そして、「ウクライナとの連帯として、
今日は、ネクタイを黄色と青のものにした。」
と言う長男のように・・。
それを知り、「私も」と、
早速、黄色と空色のTシャツを重ね着する家内のように・・。
募金箱があったら、何度でもワンコインを取り出し、
協力は惜しまない私でいたい。
そうした連帯が、いつか必ず実を結ぶ時が来ると、
固く信じる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/e8/0a60c48f582b10b092ebaa0515677d8a.jpg)
早春の 空もよう
その明るさに誘われて、久しぶりに早朝の散歩を楽しんだ。
伊達で、10回目の冬を越える日が近づいてきたが、
こんな大雪の冬は初めてだ。
この時季、いつもなら畑から地面が顔を出しているが、
まだ一面を雪が覆っている。
でも、散歩する歩道は、大方雪が解けた。
そろそろランニングも、
体育館のランニングコースとサヨウナラ。
沿道の草花や畑の作付けを見たり、
小鳥の鳴き声を聴いたりしながら、
わずかだが風を切る時間が始まる。
今年も元気で走れそう。
ワクワクしてきた。
なのに、春とは真逆なことで心が重い。
▼ コロナ禍で、職種によってはテレワークが定着してきたようだ。
次男の仕事ももっぱらテレワークで、出社は週1,2回でいいらしい。
想像もつかない私は、
「そんな仕事の仕方で大丈夫なの?」と、
不安げに尋ねた。
「やってみると、ずっとずっと効率がいいし、
毎日、電車に乗って出勤する必然は、元々なかったことに気づいたよ。
どうしても、会って打ち合わせが必要な場合は、
相手が出社する日が分かってるから、その日にこっちも行けば済むんだ」。
「でも、仕事って、みんなでワイワイガヤガヤとやるところがなくちゃ、
楽しくないだろう」。
「当然そんな時も必要だけど、それは時々あれはいいんだよ。
その他は全て、テレワークでできるんだ」。
理解できそうだが、なかなかイメージできない。
しかし、次男は週1の出勤を念頭に、
自宅を都心から離れた郊外の一戸建てに住み替える計画を練っていたようだ。
そこで、電話がきた。
その計画を報告しながら、一番気になっているが、
一番聞きにくい本題を、さり気なく切り出した。
「あのさ、まだまだ先とは思うけど、
この先、2人はどうするつもりでいるの。」
「最後まで、伊達にいるつもりだよ。」
「だけど、いつになるかわからないけど、
僕らがそっちへ行くわけには・・・。」
「ああ、その心配なら、要らないよ。
大丈夫、なんとかするから・・・。
だから、あなたたちは貴方たちのプランで、
転居を考えれはいいんだよ・・」。
その後、次男は「じゃ、そうするけど、いいんだね」と、
念を押し電話を切った。
私の返答に一片の迷いもなかった。
いつ訊かれても変わりはない。
しかし、我が子から初めて問われた内容が、
いつまでも心に残った。
「足下に、ヒタヒタと迫っている時間がある!」。
季節はもうすぐ春・・だが、沈みそう。
▼ 私の朝は、いつも朝日新聞「折々のことば」に、
目を通すことから始まる。
18日、執筆者・鷲田清一さんのこの小欄は、
ウクライナ侵攻の惨状を、思い起こさせるものだった。
『誰が誰の敵かと言っている場合か』の一文が、
心に刺さった。
転記する。
* * * *
誰が誰の敵なのですか
私たちはみな不死ではないのに
生きていてほしいんです
谷川俊太郎
誰が誰の敵かと言っている場合か。命は
露のように儚い。だから生きていて、兵士
も「兵士の靴が知らずに踏みつけた蟻」
も。その痛切な願いにさえも塩を擦りつけ
る戦争。詩「願い 一少女のプラカード」
から。テレビには今日も、とっさに横の老
人をおぶって駆ける人たち、幼児や犬を抱
きかかえて逃げまどう人びとの像が映る。
* * * *
同じ朝、テレビは、軍事侵攻が間近と言われる首都キエフで、
今もなお幼子3人と暮らす若い母親の現状を伝えていた。
恐怖の中、集合住宅の一角でインタビューに応じたその女性は淡々と。
「私は、ここに居ます。
どんな時だって、悪い人からここを守るのは私です」。
それを聞いたニュースキャスターは、
複雑な表情で、
「もし私なら・・、どうだろう・・・。
日本が大好きですから・・、
同じように守りたいと思う・・・」と。
その後も、テレビは途切れなくウクライナの悲惨な現状を、
映し出していた。
私はコーヒーカップ片手に、
眉を寄せながらそれを見続けた。
もう、それが日常に!
登場した専門家は、私の願いとは裏腹に、
「停戦に向けて打つ手はありません。
それよりもますます拡大することになると考えます」
と言う。
でも、あのキャスターに伝えたい。
「性急に何かを導き出すのは止そう・・」と。
それよりも、もうすぐ春・・だが、浮かれない。
無力な私。
でも、目を背けずに、今起きている現実を、
まっすぐに精一杯見続ける勇気を持ちたい。
春野菜入りのペペロンチーニを食べながらでもいい。
辛く切ない、悲惨な現実の1つ1つを、
胸にしっかりと刻みたい。
理不尽への膨らむ怒りを忘れずに過ごしたい。
そして、「ウクライナとの連帯として、
今日は、ネクタイを黄色と青のものにした。」
と言う長男のように・・。
それを知り、「私も」と、
早速、黄色と空色のTシャツを重ね着する家内のように・・。
募金箱があったら、何度でもワンコインを取り出し、
協力は惜しまない私でいたい。
そうした連帯が、いつか必ず実を結ぶ時が来ると、
固く信じる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/e8/0a60c48f582b10b092ebaa0515677d8a.jpg)
早春の 空もよう