ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

梅 ! 桜!・・・ あ れ こ れ 

2023-03-11 12:25:13 | あの頃
 当地にも春の足音が聞こえ始めた。
根雪がとけた地面からは、福寿草の黄色、
蕗のとうの緑色が顔を出した。
 もうすぐ、色とりどりのクロッカスも、
現れるだろう。
 
 さて、本格的に春を告げる花は、梅と桜だろう。
東京近郊では2月下旬から梅、
桜は3月下旬から4月上旬に咲く。
 この2つの開花前線は、北上の早さに違いがある。
なので、北海道へはゴールデンウィークの頃、
同時に上陸し、一緒に満開する。
  
 2つの花見にまつわる思い出を綴る。

 ① 8年前の2月下旬だ。
当地は、雪に覆われていた。
 初孫誕生の知らせを受けたのは、
洞爺湖の温泉街にある小ホールの出入口でだった。
 農閑期だけ演奏活動をする
農業関係者のオーケストラを聴いた直後、その電話があった。

 帰宅してすぐ、翌日のフライトとホテルの手配をした。
早朝、家内は赤飯を炊いた。
 それを重箱に詰め、息子らが暮らす船橋市内の産院へ向かった。

 昼過ぎ、駅から徒歩10分程度と聞いた道を急いだ。
その途中に海老川橋があった。
 橋のたもとで、1本の紅梅が満開を迎えていた。

 一面真っ白な雪景色ばかりの私に、
梅の紅色は華やかで素敵だった。
 思わず急ぐ足を緩めた。
立ち止まって、もう一度見た。
 「これから初めて会う孫は、きっと幸運に恵まれる」。
そう信じた。

 横にいた家内に、
「この梅の花は誕生の贈り物のようだ。記念の景色にしょう」
と提案した。
 再度、しっかりと脳裏に焼き付けた。

 当地にも、ほうぼうに梅の木がある。
開花の時期を迎えると、花見に足が向く。
 なかなか会えない孫だが、
幸運を信じたことを思い出すことができるのだ。
 
  
 ② 教職について15年が過ぎた時、
1年間学校を離れて研修する機会に恵まれた。

 研修期間が終わる頃、都立A病院を視察した。
この病院は、10年程前に閉鎖になったが、
主に児童精神科診療を行う精神科病院だった。
 当時としては珍しかったが、
その病院内に都立S養護学校の分教室があった。
 入院していても、子ども達には学習する場が
整っていた病院だった。

 その分教室での指導の様子を見せてもらった。
様々な子どもが学んでいた。
 15年間、通常学級での指導しか経験のない私には、
あまりにも難題の多い指導場面ばかりだった。
 次第に気持ちが沈んだ。
そのまま病院を後にした。

 最寄り駅までの通りに、
「梅まつり」と書いた赤いのぼりが、
何本もあることに気づいた。
 きっと気分転換がしたかったのだろう。
のぼりに導かれるように、
梅林のある公園の坂道を登った。

 「梅まつり」のわりには、人出はまばらだった。
公園のいたる所、小道の両脇で紅梅も白梅も開花し、
咲き誇っていた。
 私の背丈ほどの満開の木からは、
いい匂いがそっと漂ってきた。
 
 近くで、春色のコートの女性が、
ちょうと背伸びをして手を伸ばし、
小枝を顔に近づけ香りを楽しんでいた。
 映画のワンカットみたいで、印象的だった。

 右へ行っても、左でも、
前も後ろも、赤と白の梅だった。
 次第に足どりも気持ちも軽くなった。

 駅までにどれだけの時間、寄り道したのか忘れてしまった。
でも、その駅名が『梅ヶ丘』なことだけは、ずっと覚えている。

 
 ③ 移住した翌春、北上する桜前線が、
北海道へ上陸したニュースが流れた。
 以前から「桜は松前」と聞いていた。
勇んで向かった。

 函館からは予想以上に時間がかかった。
左手に津軽海峡を見ながらの長距離ドライブだったが、
松前城公園に着いた。

 桜の種類が豊富とかで、開花の時期が微妙に違っていた。
なので、満開の木もあれば、すでに散った木も、
まだ蕾のままも。
 
 一面の桜が一斉に咲き誇るのを期待していたので、
消沈した。
 「致し方ないこと!」。

 前年に見物した千鳥ヶ淵のソメイヨシノを思い浮かべながら、
長い長い帰路のハンドルを握った。

 翌年、また期待外れでもいいと覚悟して、
今度は、函館の五稜郭公園の桜を見に、愛車を走らせた。
 ソメイヨシノ1500本が、星形のお堀の内側と外側で、
一斉に咲いていた。

 五稜郭タワーに上り、見下ろすのもいい。
お堀にそって間近で、同じ背丈の桜を見上げながらの、
散策もいい。
 春の青い空と桜色の美しさを、十分に堪能できた。

 帰り際、その一角で花見の宴席を準備しているところを見た。
ガスコンロの上にのっていたジンギスカン鍋だった。
 北海道らしさに、つい微笑んでしまった。

 
 ④ 車通勤をしていた先輩の先生から、こんな誘いがあった。
「私の団地を出てしばらく行くと、道の両側が桜並木なんだ。
 今は、桜のトンネルがずっと続いて、
運転しながらでも見ごたえがあるんだ。
 どう桜見物に行かない!」。

 長男が1才になる前だった。
なれない育児に追われていたが、
「ずっと続く桜のトンネル」に惹かれた。

 日曜日に待ち合わせ場所まで、
家内と息子を乗せて1時間ほど車を走らせた。 
 同じ学校の同僚家族4組が集まった。

 『桜まつり』の最中だった。
桜のトンネル道では、地元小学生が鼓笛パレードをしていた。
 その沿道で、私は長男を抱きかかえながら、
パレードと満開の桜を交互に指さした。

 息子が、私の誘いに気づき、
指さす方を見たかどうかは忘れた。
 でも、開花した桜並木の人混みの中で、
小さな我が子に語りかけながら、
抱きかかていた新米パパを思い出すことは、今もできる。

 千葉県松戸市常盤平駅付近の3キロも続く「さくら通り」では、
あれから50年が過ぎる今年も『桜まつり』があるらしい。

  


      春  春  春だっ!
                 ※ 次回のブログ更新予定は 3月25日(土)です。
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