NHK-BS2の「オードリー・ヘプバーン生誕80年特集」は、今夜、彼女の出演作品の中でも異色中の異色、唯一の西部劇「許されざる者」が放送される。僕にとってとても思い出深い作品の一つだ。公開されたのは1960年(昭和35年)、中学3年の時だった。製作中から話題になっていたので「スクリーン」誌などで逐一チェックしていた。オードリーが撮影中の落馬事故で大怪我をして製作続行が危ぶまれた時期もあった。待ちに待った公開が熊本の「新世界」館(今のパルコ)で始まると早速観に行った。映画評論家らの評判は散々なものだった。いわく、中途半端なアクション、中途半端なヒューマン・ドラマ、尻切れトンボ、オードリーの起用は間違い等々。何せまだ中学生だったから、そんなものかなぁと思った。たしかにその後、製作途中で監督のジョン・ヒューストンと主演のバート・ランカスターが主宰する制作会社ヘクトヒル・ランカスタープロが、コンセプトで衝突し、妥協の産物のような作品になってしまっただとか、そのジョン・ヒューストンが、自分の作品の中で最悪の一本と述懐したとかいう話が伝わってきた。その後、今日まで僕はこの映画をDVDなどで5、6回は観ているが、観るたびに、そんなに出来の悪い作品なのだろうかという疑問が段々強くなってくる。オードリーはチャーミングだし、名優たちの丁々発止のやりとりは作品の風格を感じさせる。同じアラン・ルメイ原作の「捜索者」(1956年、ジョン・フォード)がアメリカ映画オールタイム・ベスト100の12位(西部劇では1位)にランクされていることを考えると、いったいこの差はどこにあるのだろうと思わざるを得ない。
















