昨日、熊本市民会館で行われた「第20回くまもと全国邦楽コンクール」。熊本市鍛冶屋町に生まれ、九州系地歌を全国に普及させた長谷幸輝(ながたにゆきてる)を記念して平成5年から始まったものだ。しかし、このコンクール本選を見るのも3回目となるといろんなことが見えてくる。当初、僕が想像していたものとはだいぶ違う世界があった。「地歌三弦の名手」だった長谷幸輝ゆかりの大会と聞くと、僕の理解としては、盲人たちを中心に受け継がれてきた情念の歌「地歌」の大会というイメージだった。ところが実際には、極めて現代的、あるいは前衛的とも言えるような音楽の世界が繰り広げられていた。確かに気鋭の若手邦楽家たちが次々と披露するテクニックはそれはそれで素晴らしいものがある。そういう大会なのだと思ってしまえば別に違和感は感じないのだろうけれど、年に数回、小峰墓地の長谷幸輝の墓に手を合わせている僕としては、やっぱりどこか引っかかるものを感じるのである。
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