徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

小鍛冶のはなし。

2023-01-04 20:04:52 | 伝統芸能
 元日の早朝、Eテレで「新春能狂言 能『小鍛冶 白頭』~喜多流~」が放送された。起きる自信がなかったので録画しておき今日になって見た。「小鍛冶」を全編通して見たのは初めて。前シテ童子、後シテ稲荷明神を香川靖嗣さん、ワキ宗近を演じるのが飯冨雅介さん。実は、僕が能を見始めて10数年になるが、その間、最も多く見ているのがワキ方高安流の飯冨雅介さんだ。この方が登場すると何だか安心感が湧く。物語は

 平安時代の刀匠として名高い三条宗近は帝の霊夢により新たな剣を作ることを命じられるが、しかるべき相槌を打つ者がいないことに困り、氏神の稲荷明神に祈願する。 現れた稲荷明神の化身である狐の力を借り名刀・小狐丸を作り上げる。稲荷明神の化身を白髪・白装束にし、「狐足」という独特の足運びを見せるという小書き(特殊演出)。

 非常にシンプルなお話で分かりやすかった。見た後ふと、夏目漱石の謡曲俳句の中に「小鍛冶」もあったことを思い出した。
 「蝙蝠(かわほり、こうもり)に近し小鍛冶が槌の音」
 「蝙蝠」は夏の季語なので、こうもりが飛んでくるような夏の夕暮れに、鍛冶屋の槌音が響き渡っているという夏の風情を詠んだのだろう。


後シテ稲荷明神の香川靖嗣さんとワキ宗近の飯冨雅介さん