くつやマルチン トルストイの民話より/バーナデット・ワッツ・絵 ささき たづこ・訳/西村書店/1989年
「くつやのまるちん」というタイトルで、至光社から1981年に発行された絵本もあるようですが、細かなところで大分異なっています。
半地下の部屋の窓から通りをながめているくつやのマルチン。
くつをみただけで、それがだれでもすぐにわかるマルチンでしたが、聖書を読んで、もし神さまが、うちにやってきたらわたしはどうするだろうかと考え、ベッドに入ります。
すると突然「マルチン」と呼ぶ声が耳のそばで聞こえます。
「マルチン、あした わたしは おまえのところにいくよ」。おきあがって、目をこすりますが、だれもいません。夢だったのでしょうか。
次の日、マルチンは、すりきれたおんぼおろぐつで、さむそうに道路掃除をしているステファンじいさんを、暖かい暖炉のある部屋にいれ、おついお茶をだしてあげます。
それから、赤ちゃんを抱いたお母さんが、薄い服で寒そうに震えている姿をみて、キャベツスープをごちそうし、古いオーバーと、すこしばかりのお金をあげます。
さらにリンゴをぬすんだ男の子をつかまえておこっているリンゴ売りのおばあさんに、男の子にあやまらせると、男の子は小さい声で「ごめんなさい」といい、おばあさんのリンゴのかごをもって、一緒に帰っていきます。
この三組は、じつは神さまでした。
クリスマスというのはどこにもでてきませんが、時期は冬ですからクリスマスを意識したものでしょうか。
宗教心というのは難しいですが、マルチンの人を思いやる心は、素直に伝わってきます。
気持ちがあたたかくなる絵です。
くつやのマルチン/渡 洋子・文 かすや 昌宏・絵/原作:トルストイ/至光社/1981年