山からきたふたご スマントリとスコスロノ/乾 千恵・再話 早川 純子・絵 松本亮・監修/福音館書店/2009年
インドネシア・ジャワ島に古くから伝わる影絵芝居ワヤン。
ワヤンは、結婚式や誕生日などのお祝いや儀礼の場で、「魔よけ」として一晩じゅう上演されるそうです。
ダランと呼ばれる人形使いが舞台に現れ、一人で午後9時から朝の5時ごろまで、何十体もの人形を操り、ガムランや歌の指揮もしながら、お話を語っていきます。
このなかでも人気の物語が「スマントリとスコスロノ」といいます。
双子の兄「スマントリ」は、幼いうちから学問に武芸をきわめ、ととのった顔立ちのすらりとしいた美しい若者。双子の弟「スコスロノ」は、顔や姿があまりにも醜く、生まれてすぐに森の奥に捨てられます。
しかしスコスラノは、たくましく生きのび、森の中で暮らしながら不思議な力を身につけていきます。森の中ならどこへでも、いきようようと、かるがると動き回るスコスラノは、草の葉のひとつひとつ、木の一本一本を知り尽くし、生きものたちの気配や気持ちを感じ取り、心をかよわせることができるようになります。
まったく異なる境遇にありながら、本当に仲の良い兄弟だった二人です。
長い展開を予想させる出だしです。
絵も木口版画という方法で表現され、これまで見たこともない絵です。
やがてスマントリは、家来として使えようと思ったハルジュノソスロ王から、隣の国の王女チトロワテイの兄のチトロセノと戦い、美しいチトロワテイをつれてくるように命令されます。
弟のスコスロノの協力もあって、チトロセノとの戦いに勝利したスマントリでしたが、王女から、王とどちらが強いか、戦いを挑むようにそそのかされます。王女は強いほうの妻となるというのです。
ハルジュノソスロ王や魔王ラウオノとの闘い、弟を殺してしまう兄、天界で再会する兄弟と息もつかせない展開。
戦いの場面も迫力満点です。
こんな展開なら、たしかに何時間もかかりそうです。聞き手をぐいぐい引き込むさまも想像できます。