ききみみずきん/木下 順二・作 初山 滋・絵/岩波の子どもの本/1956年
岩波の子どもの本シリーズには出版年が古いものが多くありますが、それだけ読み継がれているということでしょうか。
この本には「ききみみずきん」と「うりこひめとあまんじゃく」の二話がはいっていますが、初版は1956年と、いまから60年以上前です。
・ききみみずきん
藤六は百姓ですが、百姓だけでは暮らしていけないので、荷物運びの仕事もしていました。
ある日、仕事に出かけようとすると、外が雨なので、病気の母親から父親の形見の頭巾をもっていくようにいわれます。
嫁入りダンスを背負って隣村の村境の大きな木のそばで休んでいると、突然、女の子の声がきこえてきます。長者の娘が病気で死にそうになっているが、長者の庭のくすの木を元気にしてやると娘はたすかる そしてくすの木を元気にするには、長者の庭のいろんな木にきいてみなけりゃわからないというのです。
うたぐりぶかそうな長者をなんとか説得して、裏山の木の石を取り除いて、娘を救うことができます。
ずきんをかぶると鳥や草木の言葉がわかるのですが、母親は、「おとうさんは きっとこんなこと しらなかったんだよ。おまえが ひとさまにしんせつで、よくはたらくから、このふるずきんが、きっと こんなふしぎなずきんに なったんだよ」といいます。
はじめから不思議な力があったというのではなく、よく働く息子への贈り物だったというのが印象に残る話です。
藤六が取り除いた石は、じつは長者が、自分の田んぼにだけ水がたくさんいくためのしかけだった というのも、よくばりと意地悪な長者に対する痛烈な批判になっています。
藤六とおっかさんが、ずきんをかぶって、二人で鳥の歌をきく最後も、ほっこりする終わり方です。
昔話は、直接的で、余分なものはあまりでてきませんが、木下さんのは、じっくり展開していて、読みごたえがありました。
鳥が着物を着て擬人化されている初山さんの絵も、この話によくあっています。
・うりこひめとあまんじゃく
機織りの音がずーっとつづきます。
きこばた とんとん
からんこ からんこ
きちんこたんの きんぎりや
くだこあなくて からりんこ
うりこひめのかわりに、機を織るあまんじゃく
どじばた どじばた
どだばたん どだばたん
どっちゃらい ばっちゃらい
とりたちの なきごえ
があ があ があ
びーろろろ
けけろう けえ
このリズムが繰り返し続きます。
あまんじゃくは、まるで宇宙人のようで、うりこひめは女性ですが大五郎カットです。