猫とねずみのともぐらし/作:町田 康 絵:寺門孝之/フェリシモ出版/2010年
猫はねずみをなぜ追うようになったのか?
むかし、いっしょに暮らしていた猫とねずみは、厳しい冬に備えて、おいしい油の入った壷を教会の祭壇の下おいておきました。
ところが、冬にならないうちに、猫はこっそりおいしい油をひとりでなめてしまったのです。
それを知ってねずみは「冬になって私たちの食べるものがなくなってしまったではないか」ときびしくせまります。
猫がなんとか言い訳を考えていると、やってきたのは白馬に乗った王子さま。
猫は王子さまに食べ物を恵んでくれるようお願いしますが、王子は「魔法使いにひどい目にあわされているかもしれない王女を探すにいく」と、森の方へ走りさります。
次にやってきたのは王女さま。王女さまも「結婚相手の王子が魔法使いにカエルにされているかもしれない王子を探すにいく」と、いってしまいます。
次は、まずしそうな兄と妹。猫は声をかけるのを諦めます。
次はとびっきりの救い主。なにしろ聖母マリアさまです。でも「いま忙しい」というと、もの凄い早さで、森の中へ。
お腹がすきすぎて、その場から動けなくなった猫とねずみの前にあらわれたは魔法使い。
「そんなに怖がらなくてもいい。私はいい魔法使いです。よござんす。私が魔法で解決してあげましょう。あなた方を王子様とお姫様にしてあげましょう。結婚してお城で一生、楽しく暮らすことができますよ」
ねずみが油をなめてしまったのなら、猫に狙われるのはわかりますが、逆に猫が油をなめているので、ねずみを狙う理由がないはずとおもっていると、最後は大どんでん返し。
なにしろ、魔法使いがまだ新米で、王子とお姫さまではなく、猫とねずみが入れ替わったのでした。
「赤ずきん」や「ヘンゼルとグレーテル」らしい人物がなにげなく登場します。
油をなめている猫の場面で、困った顔をしている神さまが描かれているのですが、まるで横たわる涅槃像のよう。