どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

「ネズミの嫁入り」に類似する昔話

2018年07月21日 | 昔話(日本・外国)

 絵本も30種類以上のものがあり、世界中にも分布しています。

 ねずみの夫婦がむすめに世界一のむこをさがすことになり、お日さまに頼むが、お日さまは、雲のほうがえらいといい、雲は風がつよいといい、風は蔵の壁が世界一えらいという。蔵はねずみがえらいといい、結局ねずみ同士が結婚することになるというおなじみの話。

・子どもに語る中国の昔話/松瀬七織訳 湯沢朱実再話/こぐま社/2009年初版

「ネズミ美人」(けものたちのないしょ話・中国民話選/君島久子訳編/岩波少年文庫/2001年初版)の中に、カザフ族の話が入っています。


・ウズベクの「ねずみ娘」(シルクロードの民話3 ウズベク/池田香代子訳 小澤俊夫編/ぎょうせい/1990年初版)も同じ話型。ストーリーはほぼ同様であるが、ねずみが女の子に変身したので、最後にねずみと結婚することになっても、ねずみの巣に入れず、母親が神様に頼んでねずみの巣穴に入れるようもとのねずみになるという結末が楽しい。

・「ミャンマー」では「ねずみの婚約者」(ビルマのむかしばなし/中村祐子ほか訳/新読書社/1999年初版)

 太陽、雲、風のつぎにくるのは山、そのあとに水牛がでてきます。

・ギリシャでは「ネズミのむすめご」(世界むかし話3 南欧 ネコのしっぽ/村 則子・訳/ほるぷ出版/1979年初版)               

・古代インダス文明発祥の地パンジャブの「行者とねずみ」(世界の民話19 パンジャブ/小澤俊夫・編 関楠生・訳/ぎょうせい/999年新装版)もねずみの嫁入りの話であるが、でだしがカラスからのがれたねずみが、行者にたすけられ、いったん人間の子どもにかわり、女の子が大きくなると、行者がその子を見つけたときの様子を語って聞かせ、夫を探しなさいというもの。

猫はやっぱり猫(ベトナムの昔話/加茂徳治・深見久美子・編訳/文芸社/2003年初版)

 「ネズミの嫁入り」のベトナム版ですが、猫の名前です。

 一匹の猫を飼っている人が猫に天という名前をつけていました。
 ある日友人が天は雲にかくされてしまうのではといわれて、そうしたら雲と呼んだほうがいいかと思いますが、友人が今度は風は雲を追い払うといいだします。
 猫を風と呼ぼうとすると、城壁は風にびくともしない、城壁は、ネズミに穴をあけられてしまう、猫はネズミを捕まえることができるといわれて、猫の飼い主は結局、猫と呼ぶことになります。

 あちこちめぐって、もとのさやにおさまります。ほかのものがよく見えることがあるのですが、そうでなくあしもとをよくみてみなさいという話です。


石工の高のぞみ(ものぐさ成功記 タイの民話/森幹雄・編訳/筑摩書房/1980年初版)

 額に汗して働く石工。
 とある金持ちの家によばれ、身の不運をなげくと神様が金持ちにしてくれる。
 金持ちもお役人には平身低頭。

 なるなら役人がいいというと今度は役人に。あたりかまわずいばりちらしてまわる。
 ところがにぎにぎしく村を練り歩いていると、太陽の直射日光にやられてしまう。
 頭がズキズキした男は、今度は太陽に。
 ところが太陽は黒雲におおわれてしまう。
 黒雲は風にとばされて、今度は風に。
 しかし、岩は風にもゆるぎもしない。
 岩になった石工は、やがて数人の石工に切り出されてしまう。
 最後は石工にもどる。


          
月の上の鍛冶屋(五分間で話せるお話/マーガレット・リード・マクドナルド 佐藤涼子・訳/編書房/2009年初版)

 ラオスの話には鍛冶屋がでてくるものがある。
 鍛冶屋が石になり、彫刻家、太陽、月と姿をかえるが最後にはもとの鍛冶屋に。      
 神様も人間のきりのない願い事をよくかなえてくれるのも、落ち着くところを見通しているのでしょう。

 タイ、ラオスの昔話は、ねずみではないが、話型が同じもの。

 

・中川李枝子さん作の「ねずみのおむこさん」(よみたいききたいむかしばなし2のまき/中川李枝子 文 山脇由利子 絵/のら書店/2008年初版)も楽しいお話。

 

・ネズミのよめ(佐賀のむかし話/佐賀県小学校教育研究会国語部会編/日本標準/1977年)

 お日さまは、「暑すぎていっしょにいられないだろう」と言い、お月さまのところへいくのは、「静かで、いつもりっぱに光っている」というもの。ほかの話では、こうした理由がでてこない。


 「ねずみの嫁入り」をたどると古代インドの寓話集パンチャタントラ(1~6世紀)に同様の話があるといいます。
 「シンデレラ」の内容も9世紀の唐の文献にみえ、ヨーロッパの古い記録が17世紀ということからすると800年前に原型があったということになる。

 こうした内容は現時点存在する文献で確認されていうことだけで、記録に残されなかったことも考えるともっとさかのぼることができそう。古代エジプトは紀元前何千年もの歴史があることから、昔話の源があっても不思議な話ではない。

 昔話がどのような道を通って広まっていったかに思いをはせることも楽しい。宗教の広がりと同時に、また大陸や海を行き来した商人がもたらしたことも。そしてローマ帝国、モンゴル帝国、そして中国の歴代王朝などの超大国が伝播を可能にしたこともありそうである。 


ライオンとねずみ・・古代エジプト、イソップ

2018年07月21日 | 絵本(昔話・外国)


    ライオンとねずみ/リーセ・マニケ:文・絵 大塚 勇三・訳/岩波書店/1984年

 小さな小さなネズミが、人間につかまった大きな大きな強いライオンを助ける物語。「ライオンとねずみ」というので、すぐにイソップを思い出しました。

 イソップの話として1981年に岩崎書店から、「ライオンとねずみ」(絵:エド・ヤング 訳:田中とき子)、おなじ岩崎書店から(作:蜂飼 耳 絵:西村 敏雄)2009年に発行されていて、そのほかの出版社でもイソップの寓話とされていますが、ルーツはもっと古く三千年以上前の古代エジプトにあるといいます。
 これからいうとイソップの寓話というのも、それ以前のものが集大成されているのかも知れません。

 作者はエジプト学者で、原文が「デモティック」という書体でパピルスの巻物にかきつけられたものから再話したとありました。(象形文字の草書体というのが、本の見返しにありました)

 この再話では、人間が動物にとっていかに危険なものかがつよく打ち出されています。

 絵の人間がいかにも壁画風です。



    イソップのライオンとねずみ/バーナデット・ワッツ・再話絵 ささきたづこ・訳/講談社/2001年初版

 「イソップのライオンとねずみ」というタイトルで、バーナデット・ワッツが再話した絵本がありました。

 暑さを避けるため木陰で眠っているこどもライオンの前足をうっかり踏んでしまったねずみ。

 こどもライオンは唸り声をあげますが、ちっぽけなねずみをみて、どこへでもおいきよと唸るのをやめます。
 すると、ねずみは「わたしのたすけがいるときは、いつでもよんでください」といいますが、ライオンは「お前がぼくを助けるなんてできるとおもうかい」ととりあいません。

 やがて、こどもライオンは、このあたりでいちばん大きくなって、王さまとよばれるようになります。

 ある日、王さまライオンは、網でできた罠にかかってしまいます。
 キリンもぞうも、さるもシマウマも集まってきますが、どうすることもできません。

 そこにねずみがやってきて、網をかじり、ライオンが抜け出せる穴をあけます。

 大きくて強いと自負するライオンが、小さなねずみに助けられますが、体の大きさや外見の判断で決めつけないでといっているようです。

 欠点よりそれぞれの長所を見つけていくことでしょうか。

 本当に可愛いこどもライオンです。