古くギリシャ神話にでてくるという話ですが、ミダス王の伝説では、ロバです。
・王様の耳は馬の耳(世界の花と草木の民話/日本民話の会 外国民話研究会・編訳/三弥井書店/2006年初版)
フランスの話ですが、馬の耳として出てきます。
・やぎの耳(ラング世界童話全集2 ばらいろの童話集/川端康成 野上彰:編・訳/偕成社文庫/1977年初版)
ラングがセルビアの話として再話したものですが、ヤギの耳として出てきます。
・おうさまは豚のえさをたべたぞ!(アジアの笑いばなし/松岡享子・監訳/東京書籍/1987年初版)
ミャンマーの話ですが、王さまが豚のえさを食べます。
あらゆるごちそうを食べていた王さまが、豚や牛の餌となるもみがらをおいしそうに食べます。おともの男は王さまから秘密を守るようにいいつけられますが、この秘密をだれかにしゃべりたくてたまりません。だまっているとお腹はふくれ、眠ることもたべることもできなくなってしまいます。
そこで深い森に出かけ、幹に大きな洞のある木をみつけ「王さまは豚のえさをたべたぞ!」「王さまは豚のえさをたべたぞ!」とささやく。これでおともの男は気分がよくなって以前のように普通の生活ができるようになります。
ところがお祭りに使用する太鼓がふるくなって、あたらしい太鼓をつくることになって、それに使われたのが、王さまのおともが大事な秘密をうちあけた例の木。お祭りの日、太鼓が打ち鳴らされると・・・・
権力者を笑い飛ばすのは、どこの国にもあるようです。
このミャンマーの話は、「藁を食べた王様」(ビルマのむかしばなし/中村裕子他訳/新読書社/1999年)というタイトルで訳されていますが、東京書籍版のほうがわかりやすいタイトルのようです。
・王子さまの耳はろばの耳(世界の民話7/三原幸久/家の光協会/1978年初版)
ポルトガルの話ですが、前段が他の国のものとはことなります
子どものいない王さまが三人の仙女をよんで、子どもがさずかるようにお祈りをしてほしいと頼むと、やがて王子が生まれます。
この王子のお祝いをしようと、仙女をよぶが、一人の仙女を呼び忘れてしまいます(いばら姫もそうでした)。怒った仙女が「王子にロバのような耳がはえますように」と呪文をかけてしまうというもの。
仙女が「妖精」と訳されているのが(王さまの耳は、ロバの耳/子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎・編/実業之日本社/1964年)ですが、王さまが妖精を呼び忘れることはなく、三番目の妖精が、はじめの二人に、思っていたことを言われ「王子に、ロバの耳が、はえますように。そうすれば、けっして、威張ることのない、王子になるでしょう。」と、いってしまうというもの。
・王さまの秘密(象のふろおけ/世界むかし話11 東南アジア/光吉夏弥・訳/ほるぷ出版/1979年)
タイの昔話で、王さまの秘密というのは、頭にあざがあるというもの。
床屋が病気になって、代わりに王さまの床屋になった男が秘密をまもるため、森の木の穴の中に、王さまの秘密をぶちまけます。その2,3か月後、何十年も都の人に時を知らせてきた太鼓の胴にひびが入って、代わりのたいこをつくることになります。その材料に選ばれたのは、床屋が秘密をぶちまけた木でした。
太鼓の打ち初めの式のとき、太鼓が打ち鳴らされると・・・・
同じシュチュエーションといっても、さまざまです。
象のふろおけ/世界むかし話11 東南アジア/光吉夏弥・訳/ほるぷ出版/1979年
「象のふろおけ」? 象を入れる風呂桶というのは相当大きく頑丈なものが必要でしょう。
象の風呂桶をつくることになったのはつぼ作り。
つぼ作りの隣には洗濯屋がいて、つぼ作りは洗濯屋の家が立派なのがしゃくで、ひとあわふかせてやろうとおもっていました。
王さまには、たくさんの象がいましたが、宝物として珍重されている白象は、どうしても手に入りませんでした。
つぼ作りは、王さまの灰色の象を洗わせてごらんになってはいかがでしょうと、進言します。というのは洗濯屋が、どんなうすよごれた布でも夏の雲のように真っ白に洗い上げることができる名人だからというのです。
王さまから象を洗い上げて白象にしてくれといわれて驚いた洗濯屋でしたが、つぼ作りの入れぢえと見抜いた洗濯屋が、それでは象が入れる風呂桶で石鹸をとかしたお湯の中で、洗う必要があるといいだします。
すると、王さまは、つぼ作りに象の風呂桶をつくるように命じます。
何とか作っても、足を入れさせると風呂桶が壊れます。次にうんと分厚い風呂桶をつくりますが、今度は熱すぎてお湯がよくわきません。
何度も何度も作り直しますが、象が入っても大丈夫で、お湯がよくわくようなそんなちょうどいい厚さの風呂桶はできません。
そのうち・・・・。
人をねたむといいことはありません。
結局つぼ作りと洗濯屋は仲良くなるのですが、たぶんそうなったのでしょうと突き放しています。