富山のむかし話/富山児童文学研究会/日本標準/1978年
これぞ昔話という話。
下伏のじいさんが亡くなってみんなで葬式をしていると、棺のふたが内からあいて、じいさんが「なんしとんがよ」といったから、みんなびっくり。
じいさんの話によると、赤鬼、青鬼に閻魔様のところにつれていかれたが、まだ一年早いといわれ、せっかくきたのなら地獄見物をしていけといわれたという。
じいさんのみた針の山は、針の先を歩くのでなく、かきわけて罪人がのぼるしかけ。血の池地獄は、ええ湯加減にわいていて、罪人どもが弱ってくると養生するという。ただ地獄は泣いてもわめいても音のしないおそろしいところという。
帰り際、閻魔様がいうには、来年の同じ日に死ぬことになっているが、極楽にいくことになっているという。
おじいさんは、次の年の同じ日に、「おら、きょう死ぬがだ」といって、親戚を集めて酒を飲ませます。死にそうに見えないおじいさんでしたが、とにかく酒飲めるのならええかと、みんなでごちそう作って、踊るやら歌うやら大騒ぎ。
ところが、その夕方、片手枕で寝ていたじいさまは、そのまましんでしまっていたという。
いきな閻魔様。じいさんは地獄はどんなところか伝えたかったのかも。