和歌山のむかし話/和歌山県小学校国語部会編/日本標準/1977年
柿の皮をむくのに、柿を一つほりあげといて、それが落ちてこん間に別の柿をむいたうえ、落ちてくる柿を受け止めたという器用な男。ついたあだながサル手の嘉右衛門。
あるとき嘉右衛門の家の藁ぶきをふきかえることになって、近所の男たちが手伝いに集まってきた。ところがふきかえにつかう縄がどこにもない。すると嘉右衛門は「これからなうから」といって、どんどん縄をないはじめます。手伝いの人が、小半日もかかって屋根の古藁をはぎ終わって、屋根からおりてくると、嘉右衛門はふきかえようの縄をないおわっていて、みんなあきれてしまいます。
あるとき、おかゆをたこうとおもったが米がない。嘉右衛門は湯をわかしておいてから、裏山でしゅろの皮を百枚ほどはいで、それを一枚一枚ひろげてたばね、市場にもっていって売って、その金で米を買い込んで帰ってくると、さっきしかけた湯が、ちょうどよい加減に煮えていたという。
そんなことが?と思う間もなく話が続いていくというのが、昔話の面白いところです。