街どろぼう/junaida/福音館書店/2021年
”街どろぼう” ん 何?
タイトルは入り口。魅力的だとわくわく感があります。ですが最後は、もやもや感がのこりました。
大きな山のてっぺんにひとりの巨人がくらしていました。家族も友だちもなく寂しく暮らしていた巨人は、はなしあいてがいたらどんなにいいだろうと空想していました。
ある夜、巨人は、山のふもとの街におりていき、一軒の家をこっそり持ち帰ってきました。
朝になって、その家族に「これからは ここでいっしょにくらしましょう。ほしいものがあったら なんでもあげますから」という巨人に、その家のお父さんがいいました。「わたしたちだけではさびしいので しんせきの 家も ここへもってきてくれませんか」。
巨人はその夜、かぞくのしんせきの家を こっそり もちかえってきました。しんせきのおばあさんは「わたしたちだけではつまらないので 友だち家も ここへもってきてくれませんか」
その次は 「街のお店やさんも ここへもってきてくれませんか」
毎晩毎晩、あれもこれも持ち帰るうちに、山のふもとの街は そっくりそのまま 巨人の住む山のてっぺんにやってきました。水もきれいだし、おいしい果物の木もたくさんあって街の人たちは すっかり気にいって みんなよろこんでくらしはじめました。
ところが どういうわけか巨人は あいかわらず さびしいままでした。なぜか 気持ちは ひとりぼっちのまま。
ある夜明け前、巨人が 山をおりていくと 山のふもとには、一軒の小さな家が ぽつんと のこされていて 一人の少年が くらしていました・・・。
おおぜいの人がいれば孤独じゃないというのは 思い込みかもしれません。大事なのは何かを共有できることでしょうか。
たった一人残った少年は 街の人にとってどんな存在だったのでしょうか。