群馬のむかし話/群馬昔ばなし研究会・編/日本標準/1977年
旅商いをするカキ売りとトウガラシ売りが都で商いをしたが、正月も近いのに、いっこうに売れない。
山道の途中で夜になり、寒さがひとしお身にしみる。焚火でほっとした気持ちになると、ふたりは急にはらがひっていることに気がつく。べんとうをたべようと腰に手をやると、べんとうはなくなっていた。
カキ売りは荷のなかからカキをだして、ひとりでもぐもぐ食べはじめます。これをみたトウガラシ売りが、カキをわけてくれるよう頼んでも、今日は売れなかったが、あしたになればまた売れるからと、お金を出せといいます。トウガラシ売りが、自分があんまりみじめになるからと、くやしまぎれにトウガラシを食べたが、これがからくてからくてしかたがない。ところがひとつ、またひとつと口にすると、からだから、ぽっぽ、ぽっぽと汗がふきだして、いーいのでしょうか気持ちに。
カキ売りがねぼけ声でもっと火を焚いてくれと頼んでも、トウガラシ売りの方は、からだじゅうが、ぽっぽ、ぽっぽと燃えているようにあったかい。そのうちうとうと眠ってしまう。
ところが、まっくろな空から雪が降ってきて、あたりは一面銀世界。
よく朝、村の人が二人を見つけます。一人の男は凍って死んでおり、もう一人は雪の中で汗をかいてねており、まわりの雪がとけていたという。
何が分かれ道になるかわかりません。困ったときはお互いさまです。