山口のむかし話/山口県小学校国語教育研究会国語部会/日本標準/1973年
豪快な話です。
長門の国は美弥の赤郷に住んでいる長兵衛どんが、この地でよくとれるごぼうを抜こうとしますが、ちっとやそっとじゃ抜けない。村の人三人がかりでようやく引き抜き、長兵衛どんがおおきなごぼう抜いた穴を感心して覗いたら、どういうひょうしにか穴の中に落っこちてしまった。
そこからずっと離れた船木の町にひとりの医者がいて、井戸から水を汲もうとすると、井戸の底から、「たすけてくれ!」という声。医者が障子に吸い取り膏薬を張回して、井戸の上におくと、長兵衛どんが、膏薬に吸い取られてあがってきた。それだけでなく、そのあとから大風が吹いてきて、長兵衛どんはぐんぐん天の方へ飛んでいく。長門から周防をこえて、安芸、備後、備前をこえて、大坂は天王寺の五重塔まで。
つぎの朝、天王寺の小僧さんが庭を掃いていると、五重塔のてっぺんから「たすけてくれ!」という声。四人がかりで布団を持ち、和尚さんが、布団の上に落ちるよう声をかけ、長兵衛どんは布団の上に飛び降りるが、布団の四すみを持っていた四人の小僧たちがおでこをぶっつけ、そのとたんに火花がちって、その火花が五重塔のそでにとびついて、めらめらもえだしてしまう。その火がどんどん四方へ燃え広がって、とうとう大阪の町もやけてしまったという。
たしかに たまげたもんじゃのう。