どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ぐん太

2023年03月10日 | 絵本(日本)

    ぐん太/夢枕 獏・文 飯野 和好・絵/小学館/2021年

 

 「荒れ地で、草も木も なんも生えねえ 花もさかねえ けものもいねえ。」のは、石の下に こええもんが すんどるからと いわれていた夜泣き石。

 父っさまも、そのまた父っさまも もちあげようとして、石の下敷きに。誰一人持ち上げられなかった夜泣き石。

 「ああ もちあげてえなあ あの石を 千年 万年 一億年も うごかねえ あの石をよ」 ぐん太は石を持ち上げようと決意します。

 毎日 毎日 稽古して 村一番の力持ちになって、天をささえている巨人にも、山を 三つも四つも ひっぱる男にも 負けなかった ぐん太。それでも 石は 持ち上がらなった。

 あるとき 死んだ父っさまが夢にでて いいます。

 「なあ ぐん太よ あの石は 力だけじゃあ もちあがらねえ
  泣いたことのねえやつにゃ もちあがらねえ
  ときには負けたりもしてよ ほろほろ涙も ながしてよ
  そのくやしさや 
どうにもならねえ 心の心を かかえてよ
  人を好きになる力で もちあげるんじゃ 
人を許す力で もちあげるんじゃ」

 

 それから 何年もたって じっさまも おっかさんも 死んでしまってよ 妻も 子どもも 死んでしまってよ かみも 白うなったな

 それでも ぐん太は 生きていて

 なみだが こぼれて こぼれて どうしようもなかったとき

 ぐん太は はじめて 石を持ち上げられるような 気がして

 おおおおりゃあああ

 どおおりゃあああ

 ど どうだあああ

 あがった

 あがったあ!

 もちあがったあ!!

 恐竜 とかげ 鳥のむれ

 かぞえきれない 生きものや

 木だの 草だの 花だの 虫だのや

・・・

・・・

 すべてのものが 石の下から ふきでて 天まで届き 壮大な 世界の誕生です。

 

 石は、なんで 泣いていたのか?

 すべてを解放するためには、力ではないというのが ストレートに つたわってきました。