金のリンゴと九羽のクジャク/東欧の昔ばなし2/直野敦・訳 赤坂三好・絵/小峰書店/1987年
ある貧しいお百姓が、居酒屋から帰ってきて自分の妻に言いました。「商人たちはなんであんなにひまがあって、しかも楽な暮らしをしているんだろうね。おれたちは、汗水たらして働いているのに、いつも貧乏なんだがなあ」。妻は答えて言いました。「商人たちはお金があるから、穀物を安く買って、その値段が高くなるまで、それを取っておいて、高い値段で売るんですよ」
夫は、雌牛が一頭いるから、商売するといいだし、雌牛をつれて歩いていきます。ところで、夫の商売はびっくりするほど。ヤギをつれているおばあさんにあうと、ヤギと雌牛をとりかえ、つぎにそのヤギをオンドリに、オンドリをこじきが帽子の下にあるものとかえようとして、こじきの帽子の下には、なんにもなく手ぶらで家に帰っていき、居酒屋にたちよると、三人の商人に子細を語りました。
お百姓が「妻はこうなったことに心から満足しているというでしょうね」というと、商人は、「あなたのおかみさんが、きっといやな顔をするにちがいない、というほうに金貨四百枚をかけましょう。だって、もし、それでもにこにこ顔をして満足していたら、それは世界にふたりといない女の人でしょうからね」
賭けによばれた妻がなにひとつ夫を非難しないのは、お話の流れ。お百姓は四百枚の金貨を手に入れることに・・・。
もうひと工夫したタイトルが欲しい話。
同じように、妻が夫のしたことに文句をいわない例もありますが、ほかの昔話とちがって、商品経済が発展しはじめた状況を反映しています。
それにしても、東欧という言葉も聞くことが少なくなりました。チェコスロバキアの話と紹介されていますが、この本の出版が1987年と、旧ソビエト解体前の発行。1993年、チェコスロバキアも連邦制を解消し、チェコとスロバキアに分かれています。
どの国の昔話というのは便宜的なものであって、本来 昔話は、国境とは無縁なのかもしれません。