わたしたちをつなぐたび/イリーナ・ブリエル・文 リチャード・ジョーンズ・絵 三辺律子・訳/WAVE出版/2023年
深い谷をこえ、森をぬけたそのさきに、母親とふたりで暮らす女の子がいました。お母さんが女の子を思う気持ちは、岩より強く、花より優しく、満月よりも満ち足りていたのです。
女の子は、森の生き物たちをよく知るようになると、どの動物にも、お母さんとお父さんがいることに気がつきます。
ある夜、お母さんがぬいものをしているのを見ると、はりから糸がするりとぬけるように 質問がとびだしました。「どうして わたしには お母さんしかいないの?」
「コウノトリがつれてきてくれたの」「お母さんの夢からまれたといえばいいかしら」。お母さんは女の子をハグしました。いつもなら、こうしていると、心配事はすべてふきとびます。
お母さんがいったことをずっと考えていた女の子は、草原に舞い降りたコウノトリをみつけ、どこからきたか知りたいと 尋ねます。コウノトリは、リスからあずかり、リスはサケから、サケはキツネと、おしえてくれました。キツネが案内してくれた建物の門のところにすわっている男の子がいました。男の子は「まっているんだ。ぼくをむかえにきてくれる人を、毎日、こうやってね」
女の子は、ぜったいに もどってくると約束し、「いっしょにお母さんをさがそう。このせかいのどこかに、あなたのことを考えて、あなたとであえるようにとねがって、あなたのゆめをみている人がいるから。わたしのおかあさんみたいに」と言って、お母さんのもとへ走りだしました。
男の子のいた場所は児童保護施設。自分の出自がわかっても、「これからのことはわかってる。お母さんがずっといっしょだって。お母さんが、わたしをみつけてくれたから。お母さんが、わたしのお母さんだもん。お母さん、大すき。」
自分を捨てた親のことはなにもいわず、そだての親と生き続けようとする女の子の強い決意がつたわってきました。
両親と幸せに暮らす子がいれば、子を虐待する親もいて、何らかの理由で、生まれた子を手放す親もいて、複雑な世の中になりました。