岩手のむかし話/岩手県小学校国語教育研究会編/日本標準/1976年
”がっくび”というのは?
昔、山おくにかっこどりの親子が、いだったど。
母鳥が、ヤマイモほってきて、子鳥にあげると、子鳥は「ああ、みぁなあ」「ああ、みぁあなあ」(うまいうまい?)って食ったど。
母鳥は、子に うまいところを 食べさせ 自分は いっつも イモに少しついている がっくびを食っていたと。
ところが、いつも一緒に食べない母鳥のことをふしぎにおもった子鳥が、もっといいものを一人でくっているにちがいないと思い悩みます。母鳥の腹さいで見れば いいものがはいっているにちがいないと、とうとう母鳥の腹ぁさいてしまったずに。そしたら、ヤマイモのがっくびばかり、はいっていたと。
「ああ、たいへんなことをしてしまった。どうすんべ」と、何日も何日も泣いた子鳥は、ここにいられないと、渡り鳥になってしまったんだす。それでも、年に一回お墓参りにきては またかえっていった子鳥。
はじめは、親鳥の腹のなかさ、がっくびばかりはいっていたので「ガックビ、ガックビ」とないていたが、年たちうちに、だんだん「ガックウ、ガックウ」となって、そすて「カックウ、カックウ」と変わり、今では「カッコウ、カッコウ」と、山でなくようになったのだす。
”がっくび”というのは、ヤマイモのつるでしょうか。親の思いが誤解されるのは、食い物だけにかぎったことではありません。