最後のひと葉/オー・ヘンリー・作 金原瑞人・訳/岩波少年文庫/2001年初版
夜の十時前、冷たい風がふいてほとんど人通りがない通り。パトロール中の警官が金物屋の店先で、壁によりかかっている男に声をかけると、男は問わずがたりに言い訳をはじめます。
男の名前はボブ。二十年前の同じ日の今夜、ジミー・ウェルズと再会の約束をしたというのです。
ジミーは根っからのニューヨークっ子。ボブはひと財産をつくろうと西部へ。二十年後のこの日のこの時間に、どんな暮らしをしていようが、どんなに離れたところにいようが、ここで再開をしようと約束していたという。どんな友情があったのかは一切ふれられず、ボブが十八、ジミーが二十歳のときの約束。
西部でうまくいったのかねと尋ねる警官に、ジミーが、おれの半分ぐらいでも成功してくれてればいいんだけど、と答えるボブ。
ボブが、霧雨のなか、葉巻をふかしながらまっていると、約束した時間からニ十分ほど遅れて、背の高い男があらわれます。
ボブは、ジミーが五、六センチほど背が高くなったようなきがします。二十年前に一緒に食事をしたレストランは、五年ほど前に取り壊されていて、別のところにいこうと、通りの角まで来ると、電灯の明るくともったドラッグストアがたっていました。その光のなかで、ふたりは同時に相手の顔をのぞきこみます。
西部からきた男がふいに立ち止まって腕をふりとどき、嚙みつくようにいいます。「おまえはジミ-ではない。いくら二十年たったからといって、鼻が二センチも低くなるはずがないだろう」
ここまでからどんな結末が予想できるでしょうか。ボブの西部での成功にふれられていますが、ジミーの正体は明らかにされていません。
作者のトリックに騙されながら、余韻を楽しむのが短編の楽しみです。