火をぬすんだウサギ/宇野和美・再話 パブロ・ピシック・絵/玉川大学出版部/2022年
アルゼンチンの先住民ウィチーのおはなしとありました。
むかしむかし、ジャガーが大切な火を独り占めしていました。
としよりのサルが火をわけてくれるよう頼みにいきますが、ジャガーに、一喝されてあわてて逃げ帰りました。
ちからずくで奪い取ろうとしても、盗もうとしても、ジャガーにはかないません。
モグラのツコツコが、長い長いトンネルを掘って、火のそばにいきますが、あと少しのところで、音を聞きつけたジャガーに、顔を殴られてしまいます。
つぎになのりでたのはウサギ。ウサギが、釣りが得意なサギに 魚を何匹かとってもらい、それをおみやげにジャガーのところへでかけます。「火であぶったら ほっぺたが おちるほど おいしくなる」といって、魚を火であぶりはじめます。うさぎはゆっくり じっくり やいていきます。そしてジャガーが うとうとしはじめると、そのすきに、赤くもえている火を 魚の尾に移し、火をつつみこむように 魚を たたんで あごのしたに はさみ、だっと かけだしました。
その気配で、ねむりかけていたジャガーが、目をさますと、焚火の上で 魚がおいしそうにジュージューやけています。けれどもよくみると、かけていくウサギのあごのしたから 煙がでていました。騙されたとおもったジャガーがウサギを追いかけていくと、ふるえあがったウサギは、火のついた魚をぽーんと草むらに放り投げました。すると、かわいた草が燃えあがり、風にあおられ、火はもえひろがります。ジャガーが火を踏み消そうとしましたが、木から木に 燃えうつります。それをみた動物たちは、木の枝に火をうつして、もちかえります。
むかしから、ほかの人をかえりみず、富や力を独り占めしようとした人のなんと多いこと。力を過信すると とんでもないことに!。