どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

べごをつれた雪女・・岩手

2024年12月07日 | 昔話(北海道・東北)

     岩手のむかし話/岩手県小学校国語教育研究会編/日本標準/1976年

 きかんぼうで手にあまる太一というわらしが、みんなと夢中になって遊んでいるうちに、いつかひとりなっていた。そりをひっぱって家のほうにむかったとき、けむりのような、ぼやっとした女が、片手に白いべご(牛)をつれて、太一の前に立っていた。

 おっかなくなった太一が、いそいでそこから離れようとすると、離れようとするとすればするほど、体が前にすすんで、女の前にいってしまった。太一の手をにぎった女の手はまるで冷たい。

 女は、あたりの木の上につもった雪をとってきて、べごさ食べさせはじめた。べごは、干し草のように、さもうまそうに、もぐりもぐり食べた。なんどもなんども雪を食べさせると、女は、こしをかがめて 乳しぼりをはじめた。そして、乳をてのひらさすくって、太一のところへもってきた。そして、「さ、飲め、飲め」と、太一の口へおっつけた。

 太一が真正面から女の顔を見ると、ちっちゃな口が、なにかしゃべっているように、ぱくぱく動いていた。太一が、ありったけの力ふりしぼって、そこから逃げ出そうとしたが、べごのつなが、はなれない。そのとき、女が両手ですくった乳を、太一の顔めがけて、あびせかけてよこした。太一は、「あっ」といったきり、なにもかもわからなくなり、その場へたおれてしまった。しばらくして、太一が目をさますと、さっきまで晴れていた空が、またくもって、雪が、もっさり、もっさりとふってきた。太一は、そりのひももって、雪の上にたおれていた。

 

 しんしんと雪が降りしきる夜の話でしょうか。眠るまえには遠慮したほうがよさそうです。


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