・天福地福
正月三日の朝、正直なお爺さんと欲張りなお爺さんが、見た夢を教え合います。
正直な爺さんは天から福を授かった夢、欲張りな爺さんは地から福を授かった夢でした。
それから何日かして正直な爺さんが畑を耕しているとでてきたのは瓶。中には大判小判がぎっしり。
これは地福にちがいないと欲張りな爺さんに早速しらせます。
欲張りな爺さんが、畑にでかけると、瓶からでてきたのは、ヘビ。
怒った欲張りな爺さんが、瓶を正直な爺さんの家に投げ込むと、瓶からでてきたのはヘビではなく大判小判。
天から福が降ってきたと正直なお爺さんは喜びます。
正直な爺さんと欲張りな爺さんの二人を対比した不思議な話ですが、見る人によって見えるものが違うことをいいたいのかもしれません。
・天福地福(岐阜のむかし話/岐阜児童文学研究会編/日本標準/1978年)
夢ではなく、白いひげのおじいさんがきて、「おまえはとても正直に働くので、天福をあたえよう」と、いいます。正直なおじいさんは、木の切り口に、小判が入ったかめを見つけます。
・金貨のつぼ(世界の民話10 ベトナム・タイ・インドネシア/小澤俊夫・訳/ぎょうせい/1999年新装版)
でてくるのは、貧しい百姓と泥棒です。
金貨がいっぱいつまった壺を発見した百姓が、おくさんと話をしているのを聞いた二人の泥棒が、田んぼのあぜ道においておいたという壺を見つけると、そこに入っていたのはヘビ。
怒った泥棒がこのつぼを百姓の家に担ぎ込みますが、百姓がみてみると金貨がつまっていました。
・泥棒と金の壺(ビルマのむかしばなし/中村祐子他訳/新読書社/1999年初版)
おじいさんとおばあさんが同じ夢を見て、夢のなかのタマリスクの木の精から、ある木の下を掘って金の壺を掘り出すようにお告げがあります。
この話を聞いていた泥棒の一味が、木の下を掘ってみると金の壺が見つかりますが、開けてみると大きなヘビが入っていました。泥棒たちはおじいさんたちをびっくりさせようと、壺を運びこみますが・・。
どこで入れ替わったかはわかりませんが、国が違っても類似の話があります。
多分真面目に働いている人にくれた神さまの贈り物でしょうか。
てんぷく ちふく/渋谷勲・文 松本修一・絵/ほるぷ出版/1984年初版
作者が福島で聞いた昔話です。
正月と限定せず、働き者のじさまとばさまが、大判小判が入っている瓶を見つけたのを、草むらでみていた せやみじっさまが 夜 瓶を掘り出すためにでかけます。
「今夜は よなべしごとだ」と たらふく めしをかきこみ、またまた昼寝をしてから いさんで でかけるせやみじっさまの存在感がなんともいえません。
おわりのことばも「これでいちごさけもうした。あまざけ わいたら おまられも。あおなが しょんだら おまられも」と、軽快です。
楽天的なじさまとばさまが、生き生きと描かれています。