宮城のむかし話/「宮城のむかし話」刊行委員会編/日本標準/1978年
「むかしむかし、あんたみたいな、かしこいむすこと、とうちゃんと」とはじまります。目の前の子が、「かしこい」と話しかけられると、それだけで昔話の世界に入っていけそう。
昔話は口承されてきたもので、その場に応じて 長くなったり 短くなったりするのは自然です。夜眠る前に、聞いていて そのまま眠ってしまったら、語りつづける意味はなくなります。いまのお話し会というのは、それなりの場所で、テキストどおり話すのが普通で、出典が重視されますが、個人的にはこだわりがありません。
この話は、すぐに、鬼とむすこの知恵比べがはじまります。一つ目は「タケノコくい競争」、二つ目は、「縄ない競争」。
さらに鬼に食われてはたいへんと、とうちゃんとむすこは、便所へ行きたいという。鬼は腰に縄をつけて便所へいかせるが、二人は、縄を便所の柱にゆわえつけてにげだします。ここから逃走がはじまりますが、二人はヨモギとショウブが一面にのびた谷地に にげこみます。ショウブのにおいがうんとつよいので、人間のにおいを消してくれたので、危機からのがれます。
五月の節句あたりに話されたのでしょうか。タケノコの性質、縄ないについても参考になります。
便所は、むかし閑所(かんじょ)と、よばれていたといいます。