宮城のむかし話/「宮城のむかし話」刊行委員会編/日本標準/1978年
五ひきのキツネのせいぞろい。
橋本のおさんギツネは、夜になると台所の流しに走り出てきて、コツコツ洗い物の真似をしながら 食べ物をさがしにきます。洗い物の音が聞こえると、「あっ、また、おさんがが来た」と、いってたもんだと。
姉さんぶんのお玉ギツネは、たくさんの子持ちキツネ。雨っこが降って、カエルがケロケロと鳴くころになると、あっちにもぽかぽか、こっちにもぱかぱかとあかりがついて、それはそれはきれいなキツネ行列だったと。みんなは、「あっ、またお玉ギツネの娘っこがよめっこさいくどこだ」といって見ていたんだと。
男ギツネのえび三郎は、お姫様に化けるのがとくいだったんだと。
新山のにざえもんギツネは、旅の人が、近くまで来ると、大水の幻影をみせて、よろこんでいたと。
村いちばんの元気者のさかなやさんが、「おれはぜったいにキツネにだまされるもんか」と山王山にでかけ、山の坂のところで、石さつまづいてよろよろとなったと思ったら、片方の目玉がぺろっとでてきたんだと。あれやとおもってかたほうの手でおさえたら、こんどはもうかたほうの目玉がぺろっとでてきたんだと。しかたないから、両方の手で目をおさえていたら、その間にさかなはみんなさらわれて、きがついてみたときには、さかな入れはすっかりからっぽになってだったと。これは、山王山の山三郎ギツネのしわざだったと。